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はるかな旅へ -Dreamland-  作者: KAKU
はるかな旅へ -Dreamland-
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S.08 始まりの夜~S.09 村の住人たち

   S.08 始まりの夜


 San Francisco ― フィッシャーマンズ・ワーフ。


 July. Early July――.(7月。まだ早い7月。)

 空はもうとっくに夏の気配を感じさせていた、しかし、このベイ・エリアはときたま太平洋に流れる寒流の影響で気温がまるで冬のように低くなるときがある。今日はまさにそんな日だった。


 昨夜は旅の仲間とともにダウンタウンにある、その日泊まることにした格安のモーテル近くのスポーツ・バーに繰り出した。それにしても、その店内に入ったときは、平日の夜なのにテーブルもカウンターも満席だった。そして入り口を入ってすぐの左側の壁には大きな液晶画面があり、アメフトの試合が行われていた。ハセとクルミとリョウそして俺の4人は空いている席をダメもとで、探してみた。すると、まもなく、

「ヒロシ、リョウが席を見つけたみたいだぜ。ほら、向こうだよ」

とハセが言った。満席だと思っていた一番奥の部屋にちょうど4人が座れるテーブルが1つ空いていた。本来は一番奥というのは常連客のテーブルなので、新参者としては少し気が引けたが、とりあえず座ってみることにした。


 ここでちょっと旅の仲間を紹介しよう。今俺に声をかけたのがハセ。彼は仲間の中では、一番長い旅の仲間だ。背は俺よりも少し高くて、黒髪で、カンガルー皮のウエスタン・ハットを被っている。その帽子はかつてオーストラリアのエアーズ・ロックの売店で俺が見つけ、ずっとかぶっていたもの。ハセと出会うまでは、主にヒッチ・ハイクや長距離バスなどを利用して旅を続けていた。また時には何十キロも歩いて旅したこともあった。しかし、ニュージーランドに着いて、その南島のキングストンという町で、彼と出会ってから後は、彼の愛車で一緒に旅をすることになった。ちなみに彼は地元ではちょっとは知れたカーレーサーで、国際 A級ライセンスを持っていた。彼はまた腕のいい車の整備士でもある。そして羊の毛刈りもかなりうまかった。それとグロッサリー・ストアに入ると主婦が舌を巻くぐらい経済的な買い物をする。また、どこからともなくジャンルを問わず格安な情報を見つけてくるのが得意だった。彼と一緒に旅をすることになってからは俺の旅は少しずつ変わってきた。そんなハセと出会ったのは、ふとしたことがきっかけだった。しかしそれはまた次の機会にでも話そう。


 「ヒロシ、ここの店すごいわよ。カクテルだけでも100種類はありそう。ビールもざっと見、50はありそうよ」

クルミがメニューを見ながら言った。

 彼女は仲間の紅一点。ニュージーランドでハセと出会い、その後、ハセとともに今度はノース・カントリーのバンクーバーに向かった。その町に着いた早々にクルミとは出会った。次に会ったのはシアトルに行く途中のマウント・バーノンという小さな町外れのガソリンスタンドの隣にあるミニショップの入り口でだった。金髪美人でスタイル抜群の容姿は、黒の上下のライダースーツでより目立っていた。そしてシルバー・カラーのTRIUMPHのバイクに乗っていた。その後、シアトルでも会い、さらにはポートランドに行く途中で会ったりと、いつの間にかよく旅先で会い、自然と親しくなっていった。しかし、彼女がなぜ一人で旅をしているのか? ただの観光ではなさそうなのだが…俺もハセも彼女の個人的なことはほとんど何も知らなかった。唯一知っているのは、食後や休憩で立ち寄るカフェで彼女が頼む飲み物はいつも決まって、カフェマキアート、かエスプレッソだった。けれども時々興奮したときの彼女の話し方から考えると、東海岸で育ったのではないかと思う、あまり自信はないけれど…。


 「ねえ、ステイン・ラガーなんてあるよ、これハセの国のビールだよね」とリョウが言った。

 リョウは、ポートランドの孤児たちのリーダーだった。リョウとの出会いも一波乱あったが、それもまた、いつか別の機会に話そう。


「それは、スタイン・ラガーって呼ぶんだ。懐かしいな…。俺はこれにするよ」

ハセが故郷のブランドのビールに決めた。

「でも『Stein lager』って綴ってあるよ」とリョウがくいさがる。

「<ei>はアイってキウイたちは発音するんだよ」と俺がリョウに教えると、

「キウイって?」とクルミが尋ねてきた。

「ニュージーランド人のことをよくそう呼ぶのさ」と俺がクルミに説明した。

「ねぇ、クルミちゃんは何にするか決めたの?」とリョウが言った。

「そうねぇ、普段はあまりビール飲まないからなぁ…」

「たまにはいいんじゃない。」とリョウ。

「そうね、ヒロシ、何かお勧めのある?」

「そうだなぁ…」といいながら、俺は席を立ちカウンターへ向かった。

 こういうときはメニューよりも実際にカウンターの中の冷蔵庫の中を見たほうが手っ取り早いからだ。そして、俺はバーテンにある銘柄を注文した。


 「何かあった?」とクルミがたずねた。

「ああ、ちょうど良さそうなのがあったよ」

「なんて銘柄なの?」と興味深げに、再びクルミが聞いてきた。

「『ブルームーン』っていうビールだよ」

「なんだか今夜にふさわしい銘柄ね。どんなビールなの?」

「この大陸に来て、初めて聞く名前だな…」とハセがつぶやいた。

「おいらも知らないな」とリョウ。

「それはきてからのお楽しみさ」と俺がクルミたちに言うと、

「なによ。ヒロシのいじわる。ちょっとぐらいどんなのか教えてくれてもいいでしょ」

クルミがちょっと不満げに俺の顔を覗いた。

「飲みやすいビールだよ。特に普段ビールを飲んでない女性にはね」

 それにしても隣のテーブルが騒がしい。さっきから、スクリーン上の試合でタッチダウンの度に、ビールを持つ手とは逆の手でテーブルをたたいては呻いたり、歓声をあげたりしている。そこでその隣にいる40半ばの男性にたずねてみた。すると、地元の大学のチームが15年ぶりに決勝まで残った大事な試合の最中ということだった。おそらく、その晩テーブルを埋め尽くしている客のほとんどは地元に住む客だろう。

「なるほどね、地元のチームじゃしょうがないな。俺の住んでた国でもラグビーの試合ともなるとまさにこんな感じだったからな」

ハセが言った。

「ところで、あなたは何を飲むか決めたの?」

クルミが俺に尋ねてきた。

「ああ、クアーズにするよ」

「じゃあ、おいらはブルーにする」とリョウ。

「ダーメ。リョウは未成年だろ」と俺が言うと、

「えー、そんな…」とリョウが悔しげにつぶやいた。

「未成年でアルコールを飲み続けると体の成長止まるわよ」とクルミが言った。

「でも、今日だけ。ね?」

「だめだ。それに、未成年にお酒を与えたら、ここの店に迷惑かかるんだぞ」とハセ。

「あれ、そうだっけ?」としらじらしくリョウが言う。

「リョウ、ポートランドでの一件、まさか忘れたとは言わせないぞ」と俺がいうと、ハセが続けて、

「ああ、あの二の舞はもうごめんだからな」と続けた。

「わかったよ。コーラでいいよ、でもバーボンをシングルで」

「ダメよ!」とクルミ。

「じゃあ、1滴だけ」

「だめだ」とハセ。

「じゃあ、せめて、ライムを入れてよ」

「それなら許可する」

ハセとクルミと俺は口を揃えて言った。

「ちぇっ、みんなつれないよな。おいらはいつになったらお酒飲めるのさ」

「それは、大人になってからよ、リョウ坊や」

クルミがちょっとからかうように言った。

「大人って何才からさ」とリョウ。

「そうだなぁ、国や州によって違うけれど19から21才ぐらいだよ」

「13才から大人っていう国はないの?」

「残念ながら地球上にはないようだな」とハセが言った。

「ほんとうに?」とリョウが俺に聞いてきた。

「ああ、俺が知っている限りはね」

「ついでにいうと、月面にも、この太陽から100光年の間にもないわよ」とクルミ。

「チェーツ」とリョウ。

「いいかい、みんな、あんまり飲みすぎるんじゃないよ。酔っ払いの介護なんておいらはまっぴらごめんだからね」とリョウが言った。

「ああ。ポートランドでのリョウみたく、酔って意識がなくなるようなヘマはしないから安心しな」とハセ。

「本当よ、まさかテキーラを水と間違えるなんてね、もう信じられないわよ」

「もう、その話は勘弁してくれよー」

リョウが呻いた。


   S.09 村の住人たち


 「さあ、ここよ。ヒロシ」とシルビアが言った。

ヒロシとシルビアそしてコロという人間の言葉を話すヒロシの幼馴染の犬は、その町の奥に進んだ。するとそこには林があり、その林を歩き出すとまもなく、そこはまるで、中世かファンタジーの魔法世界のように、左右不釣合いな、白い石を積み上げてできた塔があった。

「シルビア、一体ここはなんだい?あわせたい人って?」

「まぁ、入ればわかるわよ。さぁ、中に入りましょ。コロ、あなたはここの入り口で周りを見張っていて。もし、誰か来たらすぐに知らせてね」

「コロ、ごめん。でも万が一のためにお願いするよ」

「…うん。ここは任せてよ」

 そして二人は中に入った。その中央には螺旋階段があった。その周りには机から床まで、所狭しとたくさんの本が折り重なっていた。壁には見慣れない文字で書かれた羊皮紙などが張られていた。上で足跡が聞こえた。やはり、誰かいるようだった。

「ベルナー、私よ。そこにいるんでしょ」

シルビアが口を開いた。

「やぁ、久しぶり。シルビア。元気かい? ん? キミの隣にいる者は誰だい? みかけない顔だな」

「彼なら大丈夫よ。私の家族も同然の人だから、ベルナー、彼はヒロシよ。ヒロシ、彼がベルナーで私が合わせたい人って彼よ」

「そうか、よろしく、ヒロシ」

「こちらこそ、よろしく」


 塔の3階の部屋。その端にあるソファに座って3人は紅茶を飲んでいた。

「ん? これキーモンティーじゃないか。幻の紅茶って言われる中国の紅茶だ」

「ほう。よくわかったね」とベルナーが感心して言った。

「彼は、あれでもイギリス出身なのよ、ベルナー」

「なるほど。キミは祖国でもこれを飲んでたことがあるんだね」

「ええ、子供のころに、アフタヌーン・ティーの時間に」

「アフタヌーン・ティーの時間にですって?」とクルミがたずねた。

「英国民は紅茶好きだからね。1日に何回も紅茶を飲むんだよ」とベルナーがいうと、それにヒロシが付け加えて

「そう。うちでは朝は決まってアール・グレイ・ティーを飲み、昼には、アッサム・ティーかダージリン・ティーを飲み、午後の3時頃に、近くの住人がティー・ルームに集まり、メイドたちがたくさんのクッキーなどと一緒にいろいろな種類の紅茶を入れてくれて飲んだよ。その時にこのキーモン・ティーもときたま飲んだことがあった」

「そして、夕食後にまた、デザートと紅茶を飲むわけだ」とベルナーがいうと

「そのとおり」とヒロシが答えた。

「お腹がタポタポになりそうだわ。ところで、ティー・ルームに集まってメイドたちがクッキーを出していろいろな種類の紅茶ですって!? ヒロシ、アナタのうちって…」

「うちのことはどうでもいい。それよりも、僕はたしかシルビアの家で、カシミラの枝茶を飲んでたはずだ。そのあと気を失って…」

「気づいた時にはキミはここにいたってわけか、お気の毒に。いや、歓迎するよ、ヒロシ。でも驚いたろう。こんな世界があるなんて」

「じゃあ、やっぱりこの世界は夢なんかじゃないんですか?」

「いや、ややこしい言い方だけれど、ここは『ドリームランド』って呼ばれている世界で、我々の普段生活している世界とは別次元の世界のように思える」

「ここには、誰でも入ってこられるんですか?」

「ああ、基本的にはね。実際1回ぐらいは誰でもはいっているんじゃないかと思うね」

「でも大抵はただの夢の出来事と思ってそれでおしまい。まず続けてここに訪れることはないでしょ。たとえ、また来たいと思ってもその方法がわからないしね」

シルビアが続けた。

「けれどもごくまれに再びこの世界にやってくる人たちがいて、徐々にこの世界を探検する者たちが現われてきたんだ」



 フロイトも実はこの世界に度々訪れたことのある者たちの一人だったという。そこで、夢を研究する者たちによって、どういう状態で寝るとこの世界に来られるのか長年調べられてきた。この世界に入っているときの人間の脳波や心拍数や脳内物質の変化などといった具合に。そして徐々にこの世界にはいるきっかけがわかってきた。それはレム睡眠中に起こり、特にシータ波がよく出ている状態のとき、またそのときの呼吸数は1分間に5, 6回のときにみなこの世界に入っているということだった。しかし、レム睡眠はノンレム睡眠と一晩に4, 5回交互に起こるので、そう長くこの世界には居続けることができないだろうと考えた研究者たちが、まずレム睡眠とノンレム睡眠との繰り返しを少なくさせる薬の開発に取り組み、やがてそれは成功した。さらに最近ではレム睡眠がノンレム睡眠に比べ長く続く新薬が完成した。それでもレム睡眠に入るまでは通常は2時間はかかった。

 しかし、あるとき、たまたま温かいカシミラのリーフ・ティーでその新薬を服用したところ、通常の約半分の時間でレム睡眠に入ることができたという。その後、研究者たちはいろいろな飲み物でこの新薬を試してみたところ、カシミラの枝茶を飲んだ時がリーフ・ティーよりもより早くレム睡眠に入り、このドリームランドに入ることができた。



 「――というレポートがあがってきている。しかし、なぜカシミラの枝茶が最も有効なのか、実は今のところよくはわかっていない。おそらく、その中の何かの成分が人間の脳に刺激を与え、作用するんだろうと考えられる」

「すると、やはりここは夢の中なのでは…」

「ああ、私も最初はそう思っていた。しかし、ここには肉体もあり、食事をすることもできる。そして、ここで起きたことは記憶に残り、さらに悪いことに…」

そこで一度ベルナーは口を閉ざした。

「悪いことにって、その先を言ってください」

「この世界で怪我をすると、それは現実の世界でも同じ所が怪我をしていたという報告が数多くある」

「なんだって!?それじゃあこの世界で死ぬと…」

「ああ、おそらく、二度と現実の世界で目を覚ますことはないだろう」

「そんな…。ということは、ここはやはりどこか別の世界でそこに今僕たちは移動してきているっていうことなのですか?」

「いいや、そうでもないらしい。実験では被験者の肉体は、意識こそなかったが、そのまま消えることなくその場所にずっといたという結果だよ」

「そのとおりよ。でも心配しないで。今頃は、マスターがあなたの体をベッドに寝かせているはずだから」

「だったらなおさらこの世界で怪我をしたとして、現実の世界でも怪我をしているなんてありえないのでは…」

「キミは『オベール司教の話』を知っているかな?」

「オベール司教っていうと、フランスのあの有名なモン・サン・ミッシェルに最初に礼拝堂を建てたといわれる方ですか?」

「ああ、その通り。キミは大した物知りだね」

「ヒロシはね、世界中をずっと旅しているのよ、ベルナー」

「ベルナーさん、話を続けてください」

「ああ、古い話だが彼もまたこの世界に足を踏み入れた人物だろうと我々の間ではそう認識している」

「まさか、そんな話はきいたことないな」

「オベール司教には有名な話が残っているだろう」

「ねぇ、二人とも、そのオベール司教の話って一体なんなの?」

シルビアがきいてきた。

「ああ、簡単にまとめるとこんな話だよ」



 西暦708年のある晩のこと。当時アヴランシュの町の司教であったオベールの夢の中に大天使ミカエルが現われて、当時はモン・トンブと言われていた、ノルマンディー地方の岩山の島の上に教会を建てるように言われたんだ。最も当時のオベール司教もそんな夢のことなどたいして気にしなかったらしい。それからしばらくすると、オベールは夢の中で再び大天使に会い、同じことを言われたが、このときもまた、オベール司教は単なる夢だとしか思わなかった。すると、三度、夢の中に大天使は現れ、オベールが自分の話を単なる夢としか思っていないことに対して、これがただの夢ではない証として彼の額の頭蓋骨にミカエル自身の指で穴を開けたという。



 「で、結局どうなったの?」とシルビアがその先をせかした。

「オベール司教が起きた時に額からは血が流れていて、その額の骨には穴が開いていたんだ。それで、ようやくこれは神からのお告げだということを理解してその言葉に従って礼拝堂を作り、それがやがて、巡礼地になり、教会も大きくなりその地名もその出来事にちなんでモン・サン・ミッシェルになったんだ。でもまさかその夢っていうのがこの世界だっていうのですか?」

ヒロシがベルナーに問いかけた。

「確かにそうだという証拠は何一つない。だからといってまんざら否定もできないんじゃないかな。その理由として彼は同じ夢を3度も見ている。さらには夢の世界で肉体に傷をつけられたところが現実の彼の体にも同じことが起きている。この2つのことに納得のいく説明をしたものはいない。しかし、この世界に彼が来ていたとしたら十分理解できることだとは思わないかい?」

「…どう思うかね? シルビアは」

「んー、正直言って私には難しすぎてよくわからないわ。でも、たしかに今私たちは現実とは違う世界にいると思う。そしてこれがヒロシの夢の中の出来事ではないってことだけは言えるわ」

「でもね、それさえもここでは証明できないんだよ、シルビア」

ヒロシが言う。

「では、私がその頭の固いヒロシの頭蓋骨に大天使ミカエルに代わって穴を開けてさしあげましょうか?」

「ゲッ!? それは遠慮しておくよ」

「じゃあ、ヒロシはこの世界を認める気になったってわけ?」

「ああ、わかったよ。とりあえずは認めるよ」

「とりあえずね。まぁいいわ。少しは前進したわね」

「シルビア、ヒロシ君が疑うのも無理はないさ。キミだってはじめてここに来たときは全く信じてなかったじゃないか」

「なんだ、シルビアもそうだったんじゃないか」

「まあはじめはね。でも今は信じてるわよ。この世界があるってことを…」

「それはどうしてだい?」

「だって、あのサプリメントを飲むことによっていつだってこの世界に来ることができるんだから。ただの夢ではこうはいかないわ」

「でも、さっき僕はコロに出会った。彼は犬だ。それなのに人間の言葉を話すしそれに現実の世界ではもうとっくの昔に亡くなっている。これはどういうことなんだい」

「だからこそここを『ドリームランド』って人々が呼んでいる理由なんだよ。この世界は人間のいや、生き物の思念によってできているのかもしれない」

「生き物の思念?」

「そう。生きとし生けるもの全ての思念が集まる世界。それも具体的な形になって表れる世界。しかし、人の思念は時として不完全で曖昧なものだから、この世界も必然的に曖昧になっている」

「だからこの村にたどり着くのも予想外に長かったわけね」

「ああ、おそらく。だから、死んだと思ったものともここでは出会えることがある」

「死んだと思ったものって…」

「私はここに来てから人間の生と死についていろいろと考えるようになった。そこで今では、こう考えている。魂というものは本来は不滅なんじゃあないかってね。確かに現実の世界では人はいつか亡くなる。けれども、それは我々の世界での出来事にすぎない。だからこの世界では人の魂は、いや生き物の魂はまだ存在している。だから、さっきヒロシが出会ったように、現実では二度と会えなくなったものたちともこの世界では会うことができるんだよ」

「それがもし本当なら、ここはとてもすごい世界なんだな」

「ああ、私が今達している結論ではそういうことになるよ」

「だから、私はここでベルナーにあることを協力してもらっているの」

「シルビア? あることって?」

「それはね、アイリーンに会うことよ」

「アイリーンにだって!?」


   6話目につづく…

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