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別離

待っても待っても少女の元に南條からの連絡はなかった。




少女が南條が死んだと知ったのは、少女たちが『ギルティー』に行った2日後だった。




ニュースでも学校の全校集会などでもなく、それを少女に知らせたのは少女の母親、藤嶺キョウカであった。




「南條先生が岩佐木に殺られた」




キョウカは怒りに満ちた口調で少女に言った。




「はぁ?」




真夜中に叩き起こされ、突然そんな事を言われても、少女の思考回路はうまく働かなかった。




「だから!南條先生が死んだの!殺されたの!」



「どういう事?」




やっと動き出した少女の頭には様々な事が浮かび上がった。




南條が死んだ?




岩佐木に殺られた?




ドウシテ…?



テツに連れられて岩佐木組の事務所に行った南條は、事務所内にあった薬を1つ残らず全てを燃やしてしまった。




岩佐木は怒り、まず南條を拷問にかけた。




お前は誰だ―




どうしてこんな事をしたんだ―




南條は何が何でも口を割らなかった。




どれだけ痛めつけられても何も言わなかった。




そんな時間が数時間続いた後、南條はその場で動かなくなった…




キョウカは少女にだいたいこのような内容を話して聞かせた。










ウソツキ―







岩佐木の所に殴り込んだりしないって言ったくせに。




あんたが死んでどうすんの。




そんな無茶をすれば死ぬとわかっていたはずなのに…




生徒を守る為に死ぬなんてそんなバカな教師はいないよ。




あんた以外にはね…



「大丈夫?」




キョウカが心配そうに少女の目を覗き込んだ。




「大丈夫」




少女は力強く言った。




不思議と涙は出ない。




もしかしたら、少女は南條が死を覚悟しているという事を予測していたのかもしれない。




「岩佐木、つぶそうか」




キョウカはケロッとした顔で物騒な事を言った。




確かに、キョウカなら岩佐木をつぶすことが出来るだろう。




藤嶺キョウカ、旧姓高羽キョウカ―




関東黒龍会会長、兼関東黒龍会高羽組組長。




「仇討ちはガラじゃないから。それに父さんの世話になるのはいやでしょ?」




藤嶺ゲンゾウ。




警視庁、警視総監。




この夫婦は世界最強に間違いない。




「まぁ、やだね」



「だったらおとなしくしてて」



「わかったよ」




わかったとは言っているが、まだ不服そうな表情だった。



南條が死んだ。




殺された。




テツの上司に。




少女はテツを恨んだ。




そんな事をしても意味がないと知っていても、それでも恨んだ。




だから、南條の死によって少女の心が空っぽになる事はなかった。




皮肉にも、テツへの恨みによって少女の心は無にならずにすんだのだ。




少女は南條に何を教えられたかを考えた。




少しは勉強しろ―




友達を作った方がいい―最後まで人を信じろ―




少しくらいは外れてもいいが、出来れば真っ直ぐに道を進め―




素直になれ―




少女は学校の先生が好きではなかったが、南條の事は好きだった。




だから、これからは南條に教えられた事を守っていこうと少女は決めた。




本人が死んでからでは遅いのかもしれない。




でも、南條なら許してくれるだろう。




見守っていてくれるだろう。




少女は南條のような大人になろうと思った。




この時が、少女が心を入れ替えた瞬間だった。




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