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第29話「多層的国際秩序」後編

________________________________________

6. G7本番、藤堂の歴史的スピーチ

________________________________________

【G7サミット・首脳会議場イタリア


巨大な円卓。各国首脳が並び、世界中のメディアが固唾を呑んで見守る。

会場の空気は重く、緊張が張り詰めている。


議長国首脳「次に、日本の藤堂総理。あなたの発言をお願いします」


藤堂はゆっくりと立ち上がる。

橘官房長官と外務省代表団が後方から見守る。

八重樫幹事長は日本側控室でモニターを見つめている。


藤堂は円卓を見渡し、静かに口を開く。

藤堂「諸賢の皆さま。

 私たちは今、国際秩序の"転換点"に立っています」

会場が静まる。


藤堂「国連は、世界の平和と正義を守るために作られた。

 しかし……拒否権が発動されれば、

 どれほど重大な危機であっても、国際社会は動けなくなる」


スクリーンに、三枝がまとめたデータが映る。


藤堂「過去10年、重要案件の7割以上が拒否権で停滞しました。

 この現実を、私たちは直視しなければならない」

各国首脳がざわつく。


藤堂は一歩前に出る。

藤堂「しかし、私は"国連を否定する"ためにここに来たのではありません。

 国連は依然として、普遍的な正統性を持つ唯一の国際機関です。

 ただし……"国連だけでは足りない"のです」


スクリーンに三つの円が浮かぶ。


________________________________________

●第1層:国連(UN)=正統性の層

藤堂「第一層は国連。

 ここは、国際法の基準を作る"正統性"の層です。

 しかし、拒否権がある以上、実行力には限界がある」


●第2層:地域・価値観の枠組み=実行力の層

藤堂「第二層は、G7やQUAD、EU、ASEANなどの"地域・価値観の枠組み"。

 ここは"実行力"の層です。

 国連が止まっても、私たちは動ける」


G7首脳たちが互いに視線を交わす。


●第3層:テーマ別の機能的枠組み=専門性の層

藤堂「第三層は、AI、気候、海洋、サイバーなどの"テーマ別ネットワーク"。

 国境を越える課題は、専門家と志を同じくする国々で動かすしかない」


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藤堂は円卓に手を置き、強い目で各国首脳を見つめる。

藤堂「皆さん。

 "国連が止まったら終わり"という世界を、

 私たちはいつまで続けるつもりですか?」

沈黙。


藤堂「21世紀の世界は、単層構造では支えられない。

 だからこそ、私はここに、"多層的国際秩序"の構築を提案します」

会場がざわつく。


藤堂「国連の正統性。G7の実行力。テーマ別ネットワークの専門性。

 この三つを組み合わせ、

 "止まった部分を別の層で補う"新しい秩序を作るのです」


藤堂は各国首脳を見渡し、静かに言う。

藤堂「皆さんはすでに、世界を支えてきた。

 制裁でも、技術協力でも、安全保障でも。

 私が今日お願いしたいのは、新たな負担ではありません。

 皆さんがすでにやってきたことを、

 世界の"仕組み"として設計し直すことです」


藤堂は胸に手を当て、最後の言葉を放つ。

藤堂「日本はこの多層的国際秩序の"設計者アーキテクト"となる覚悟があります」


その瞬間、会場の空気が変わる。


藤堂「世界は変わる。ならば、私たちも変わらなければならない。

 その先頭に……日本が立つ」


会場に静かな拍手が広がり、やがて大きな拍手へと変わっていく。

藤堂は深く一礼する。


世界が、日本の新しい役割を認識した瞬間だった。


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【各国の反応】


●アメリカ代表

腕を組みながらも、興味深そうに頷く。

米国首脳「……実行力の層、か。悪くない」


●EU代表

深く頷き、メモを取る。

EU首脳「国連改革が進まない以上、現実的な提案だ」


●カナダ・英国

前向きな表情で藤堂を見る。


●フランス

慎重だが、否定はしない。


●イタリア(議長国)

満足げに微笑む。


橘は後方で、静かに拳を握る。

橘(心の声)

*総理……ついに世界に言った。

 日本が"秩序を作る側"に回ると。*


◆八重樫幹事長(控室)

モニターを見つめながら、八重樫は小さく呟く。

八重樫「……やったな、総理」


◆三枝悠斗(外務省・東京)

深夜の外務省で、モニターを見つめる三枝。

目が潤む。

三枝(心の声)

*この瞬間のために、僕は動いたんだ*

 *日本は、変わる*


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7. 各国首脳との会談

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【G7サミット後・個別会談】


会場の別棟。各国首脳が次々と日本側の部屋に入ってくる。

藤堂総理は、橘官房長官と外務省代表団を従えて臨む。


◆アメリカ合衆国大統領:ジョナサン・ドラープ

部屋に入ってくるなり、豪快に手を広げる。体格が大きく、声も大きい。

ドラープ「トードー!

 お前のスピーチ、なかなか良かったじゃないか。

 "多層なんとか"ってやつ、あれは……まあ悪くない」

藤堂は微笑む。

藤堂「ご評価いただき光栄です、大統領」

ドラープは椅子に座り、指を突きつける。

ドラープ「ただし!

 アメリカが"第二層の中心"であることは変わらない。

 そこは忘れるなよ?」

橘が緊張するが、藤堂は落ち着いて答える。

藤堂「もちろんです。

 しかし、アメリカ一国では世界を支えきれない。

 だからこそ"多層構造"が必要なのです」

ドラープは一瞬黙り、ニヤリと笑う。

ドラープ「……いいだろう。

 日本が"秩序の設計者"になるっていうなら、

 アメリカは"実行のエンジン"になってやる」

橘が小さく息を吐く。

藤堂「心強いお言葉です、大統領」

ドラープは立ち上がり、藤堂の肩を叩く。

ドラープ「トードー、俺は気に入ったぞ。

 世界を動かすなら、アメリカと組め」


◆欧州連合(EU)委員長:クラウディア・レンツ

知的で冷静な女性首脳だ。

レンツ「総理、あなたの提案は……正直、驚きました。

 しかし、EUとしては歓迎します」

藤堂は丁寧に頷く。

藤堂「国連改革が進まない以上、

 "多層構造"は現実的な選択肢だと考えています」

レンツは資料をめくりながら言う。

レンツ「EUは第三層――気候、AI、データ保護などの分野で

 日本と協力したい。

 あなたの構想は、EUの価値観とも合致します」

橘が口を挟む。

橘「日本としても、EUの規範形成力は不可欠です」

レンツは微笑む。

レンツ「"日本が設計し、EUが制度化する"。

 悪くない組み合わせですね、総理」


◆フランス大統領

フランス大統領「総理、あなたの構想は興味深い。

 ただしフランスは"多国間主義の原則"を重視します。

 国連の正統性を損なわない形での協力を前提としたい」

藤堂「もちろんです。

 第一層の国連は不可欠です。

 私たちは国連を補完するのであって、代替するのではない」

フランス大統領は満足げに頷いた。


◆カナダ首相:エリオット・マクリーン

マクリーン「総理、あなたの提案は勇気がある。

 カナダは全面的に支持します」

藤堂「ありがとうございます。

 カナダの協力は、G7の結束にとって重要です」

マクリーンは頷く。

マクリーン「"多層構造"は、世界の分断を防ぐための道だ。

 あなたは正しい方向を示した」


◆イギリス首相:サミュエル・ハート

ハート「総理、あなたのスピーチは……

 英国流に言えば"大胆で、少し危険"だ」

藤堂は笑う。

藤堂「危険を恐れていては、世界は変わりません」

ハートは目を細める。

ハート「その通りだ。

 英国は第二層で日本と協力する。

 "実行力の層"は我々の得意分野だ」


【控え室】

藤堂は全ての会談が終わり、控え室に戻った。

橘が興奮気味に言った。

橘「総理……世界が動き始めました」

八重樫がモニター越しに言う。

八重樫「総理、あなたの構想は"現実"になりつつあります」

藤堂は静かに目を閉じる。

藤堂(心の声)

*日本が、世界の秩序を支える国になる*

 *その第一歩を、今日踏み出した。*


________________________________________

8. 中国、ロシアの反応

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一方、G7非加盟の大国である中国とロシアの首脳は、それぞれ次のようなコメントを発表した。


◆中国外交部・定例会見(北京)

報道陣が詰めかける中、中国外交部報道官・劉建華が淡々と読み上げる。

「日本がG7で発表した"多層的国際秩序"なる構想は、

 国連憲章の精神を損ない、特定の価値観を押し付ける危険な試みである。

国際秩序は単一の国や小集団が設計するものではない。

地域機構の強化は、西側による『包囲網』を作ろうとしているのは明らかである。

日本は新たな秩序という言葉を使って同盟国の拡大を図り、再軍事化を加速させている。

日本は歴史を直視し、地域の安定を乱す行動を慎むべきだ」


◆ロシア外務省・声明モスクワ

ロシア外務省報道官・アレクセイ・ドラゴフが強い口調で読み上げる。

「日本が"秩序の設計者"を名乗るとは、国際社会に対する挑発である。

西側による新しい秩序を画策していることに他ならない。

国連安保理の正統性を否定し、G7という排他的な枠組みを強化することは、

世界を分断し、緊張を高めるだけだ。

ロシアは断固として反対する」

「ただし、ウクライナ問題で『講和への対話チャネル』を用意する動きがあれば検討材料となり得る」


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【日本の首脳陣】


藤堂、橘、八重樫の3人は中国とロシアのコメント記事を滞在先ホテルにて読んだ。


橘「総理……中国とロシアが、予想以上に強い表現で批判してきました。

 "歴史を直視しろ""挑発だ"と……

 国内メディアもすぐに取り上げるでしょう」


藤堂はタブレットを受け取り、静かに読み始める。


八重樫が腕を組み、淡々と語る。

「まあ、こう来るだろうな。"国連中心主義"に固執している国ほど、

 多層秩序は脅威に見える。

特に第二層――G7やQUADが強化されるのは中国もロシアも嫌がる」


橘が頷く。

「"日本が秩序を作る側に回る"という宣言そのものが

 彼らにとっては面白くないのでしょう」


藤堂はタブレットを閉じ、二人を見渡してゆっくりと口を開く。

「……批判は想定内だ。むしろ、これで"日本の提案が効いている"証拠だよ」

橘と八重樫が目を見合わせる。


藤堂「国連が止まっている現実を、中国もロシアも本当は分かっている。

 だからこそ、G7やテーマ別枠組みが強くなるのを恐れている」


八重樫が微笑む。

「総理、あなたの構想は"痛いところを突いた"んですよ。

 だから反応が激しい」


橘「ただ……国内では"緊張を高めるだけだ"という批判も出るでしょう。

 野党もこの声明を材料にしてくるはずです」


藤堂は迷いなく答える。

藤堂「構わない。議論が起きるのは良いことだ。

 日本が世界で何をすべきか――

 国民と一緒に考える機会になる」

橘はその言葉に少し驚き、静かに頷く。


八重樫「総理。中国とロシアが反対するということは、

 "日本が正しい方向に踏み出した"ということです。

ここで引けば、また"何もしない日本"に戻る」


藤堂は深く息を吸い、窓の外の曇った空を見つめる。


藤堂「……世界は動き始めた。反発も、批判も、全部受け止める。

 それでも――

 "戦争を防ぐための秩序"を作る道を、私は進む」


橘と八重樫は、静かに頷く。

橘「総理……覚悟は、共有しました」

八重樫「ここからが本当の外交ですよ。」


藤堂はゆっくりと立ち上がる。


八重樫が、ふと付け加える。

「ところで総理、ロシアの声明の最後を見ましたか」

藤堂「ああ……『講和への対話チャネル』という部分か」

八重樫「強硬な批判の裏に、わずかな扉が開いている」

藤堂は静かに頷く。

「……見逃さないようにしよう」


藤堂(心の声)

*批判されてもいい。世界が動くなら、日本も動く*

 *その先頭に立つ覚悟は、もう揺らがない*


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9. インド訪問

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【G7閉幕後・イタリア空軍基地】


夕暮れ。G7の個別会談を終えた藤堂総理一行が、政府専用機に向かって歩いている。


橘官房長官がタブレットを見ながら藤堂に話しかける。

橘「総理。インド側から"ぜひ立ち寄ってほしい"との連絡が入りました。

 カプール首相が、G7での"多層秩序構想"について直接意見交換したいと」


八重樫が腕を組む。

「インドはG7メンバーじゃない。だからこそ、今回の構想に強い関心を持っているんでしょう。

 第二層(G7・QUAD)と第三層(AI・半導体・海洋)の両方で日本と利害が一致する国ですから」


藤堂は空を見上げ、静かに言う。

「……行こう。

 インドは"多層秩序"の鍵を握る国だ。

 アジアの安定、対中牽制、経済の潜在力、そしてQUADの柱としての役割。

 日本が未来を描くなら、インドとの連携は避けて通れない」


美波が頷く。

「インド外務省からも、歓迎の意が届いています。

 外相のラージャン氏も"ぜひお会いしたい"と」


藤堂は少し驚いたように美波を見る。

「……ラージャン外相?以前、美波さんに話しかけてきた、あの?」


美波は苦笑しながら頷く。

「はい。"北川外務大臣に会いたい"と……

 それと、"京都のゲストハウスの思い出"を語っていました」


八重樫が吹き出しそうになる。

「北川麻衣さん、若い頃から外交官を魅了してたのか。」


橘は微笑む。

「ラージャン外相は親日派です。

 今回の訪問は、インドとの関係強化にとって絶好の機会になります」


藤堂は決意を込めて言う。

「よし。"多層秩序"をアジアでどう展開するか――インドと話し合う」


政府専用機のタラップを上る藤堂。

その背中には、G7で世界に向けて放った言葉の重みと、

アジアの未来を背負う覚悟が宿っていた。


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【インド・ニューデリー空港(夜)】


政府専用機が着陸。

インド側の儀仗兵が整列し、赤いカーペットが敷かれている。


カプール首相が自ら出迎える。その後ろには、外相アニル・ラージャンの姿もある。


藤堂がタラップを降りると、カプール首相が笑顔で手を差し出す。

カプール首相「藤堂総理。G7でのスピーチ、拝見しました。

 "多層的国際秩序"――あれは世界を動かす構想です」


藤堂も笑顔で握手を返す。

「ありがとうございます。インドと日本が協力すれば、

 アジアの未来はもっと強く、安定したものになるはずです」


ラージャン外相が一歩前に出る。

「総理、ようこそインドへ。

 そして……美波さん、お久しぶりです」


美波は丁寧に頭を下げる。

「覚えていてくださって光栄です、ラージャン外相。

実は……前回インドを訪問したあと、日本に戻ってすぐに

 北川外務大臣に"ラージャン外相が会いたがっておられました"とお伝えしました」


ラージャンの表情がぱっと明るくなる。

ラージャン外相「本当ですか。北川大臣は……何と?」


美波は柔らかく答える。

「とても喜んでいました。

 "インドは日本にとって最も重要なパートナーの一つ。

 また近いうちに必ずインドを訪れたい"と申しておりました」


ラージャンは深く頷き、少し懐かしむように目を細める。

「……そうですか。

 あの京都のゲストハウスで、

 若い北川さんが外国人客に笑顔で接していた姿を、

 私は今でも覚えています。

彼女は、私にとって"日本の原風景"のような存在なのです」


ラージャンは静かに付け加えた。

「北川さんは、若い頃に藤堂龍一先生に影響を受けたとおっしゃっていました。

 日本の政治家の中で、最も誠実な方だったと」


藤堂が少し驚いたように聞き返す。

「藤堂龍一先生……?」


ラージャン「ええ。北川さんが若い頃に影響を受けたとおっしゃっていた政治家です。

 詳しくは、北川大臣から直接聞かれると良いでしょう」


藤堂は静かに頷いた。

心の中で思った。

藤堂(心の声)

*祖父の話だ……*

 *帰国したら、北川さんに聞いてみよう。*


美波は温かみと驚きが入り混じった表情で聞き入る。


ラージャンは美波に向かって、

外交官としてではなく、一人の"日本を愛する人間"として言葉を続ける。


ラージャン外相

「日本とインドが未来を作るなら……

 私は全力で協力します。

 北川大臣にも、藤堂総理にも。」


橘が小声で藤堂に囁く。

「……外相がここまで親日的なのは、外交上とても大きいですね。」


八重樫が頷く。

「インド外務省の"心臓部"が日本に好意的。

 これは、今後のアジア戦略にとって強力な追い風ですよ。」


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【インド首相府・会談室】


深夜にもかかわらず、両首脳は向かい合って座る。


藤堂「カプール首相。

 "多層秩序"の構想をアジアでどう展開するか――

 そのために、あなたと話したかった。」


カプール首相「インドは、国連の限界を痛感しています。

 中国との国境紛争、CPEC、そして一帯一路……

 国連は何もしてくれなかった。」


藤堂は静かに頷く。

「だからこそ、第二層(G7・QUAD)と第三層(AI・半導体・海洋)で

 日本とインドが協力する必要がある。」


カプール首相は力強く言う。

「日本とインドは、アジアの"共同設計者"になれる。

 あなたの構想に、インドは賛同します。」

橘と八重樫が息を呑む。


________________________________________

【会談終了】


会談後、ラージャン外相が藤堂に近づく。

「総理。日本とインドが未来を作るなら……

 私も全力で協力します。」


藤堂「ありがとうございます。

 あなたのような方がインド外交を担っていることは、

 日本にとって大きな希望です。」


ラージャンは微笑む。

「日本は、私にとって"第二の故郷"ですから。」


美波が驚いたように目を見開く。

八重樫が小声で言う。

「……これは本当に、強力な味方を得たな。」


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【ホテルのバルコニー】


夜風が吹く中、藤堂は街の灯りを見下ろす。


藤堂(心の声)

*——世界は動き始めた。

 アジアもまた、新しい秩序を求めている。

 日本とインドが手を組めば、

 "戦争を防ぐための秩序"は現実になる*

 *その第一歩を、今ここで踏み出した。*


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10. 日本国内の反応

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G7閉幕の翌日。日本中が藤堂総理のスピーチを報じている。


【テレビニュース(夜の報道番組)】

キャスターが落ち着いた口調で原稿を読み上げた。

「藤堂総理がG7で発表した"多層的国際秩序構想"が、国内外で大きな議論を呼んでいます」

画面には藤堂のスピーチ映像。


●国際政治学者・白石

「国連の限界を直視し、G7やテーマ別枠組みを組み合わせる発想は極めて現実的です。

 日本が"秩序の設計者"を名乗ったのは歴史的な一歩です」


●元外交官・曽根

「大胆すぎます。

 大国を刺激し、日本が"矢面に立つ"危険性もある。

 国連中心主義を揺るがす提案は慎重であるべきです」


【新聞各紙の論調(翌朝)】

●朝日新報(リベラル系)「日本外交の新たな挑戦だが、説明責任が不可欠」

●読政タイムズ(保守系)「日本が世界の秩序を主導する時代へ」

●毎東ジャーナル(中道)「国連の限界を示した藤堂構想、実現性が問われる」


【野党の反応(国会前のぶら下がり会見)】

●第一野党・民進会党 代表・神谷

神谷「"多層的秩序"という言葉は聞こえは良いが、具体的に何をするのか不透明だ。

 国会で徹底的に説明を求める」


●第二野党・立志党 代表・村岡

村岡「国連を軽視する危険な発想だ。日本が大国間対立の"仲裁役"を務めるなど無謀だ」


●第三野党・改革未来党 代表・江藤

江藤「私は評価する。日本が"何もしない国"から脱却するための提案だ」

野党内でも意見が割れている。


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【国民の反応(SNS・街頭インタビュー)】


●SNS(X)

@tokyo_student

「藤堂総理のスピーチ、普通に感動した。

 日本が世界の中心で議論するって胸熱」


@old_diplomat

「国連を否定するのは危険。日本は慎重であるべきだ」


@engineer_ai

「AIや半導体の国際枠組みを日本が主導するのは大賛成。第三層は日本の強み」


●街頭インタビュー(夕方のニュース)

会社員(40代)「正直、外交のことはよく分からないけど……

 日本が世界で発言力を持つのは良いことだと思う」


主婦(50代)「戦争を防ぐためって言ってたのは印象に残った。

 でも本当にできるのか不安もある」


大学生(20代)「"設計者になる"って言葉、かっこよかった。

 日本が変わるなら応援したい」


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【外務省内部のざわつき】


外務省の廊下。幹部たちが新聞を見ながらひそひそ話している。

幹部A「……ここまで反響が大きいとは」

幹部B「官邸の勢いが強すぎる。もう止められないかもしれん」


三枝は少し離れた場所でその会話を聞き、静かに拳を握る。


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【官邸執務室】


テレビで報道を見ながら、橘が言う。

橘「総理……国内の反応は賛否半々です。ただ、若い世代の支持が強い」


八重樫が資料を見ながら言う。

八重樫「野党は攻めてくるだろうが、"国連の限界"は誰も否定できない。

 勝負は国会での説明だ」


藤堂は静かに頷く。

藤堂「国民が議論してくれるなら、それでいい。

 日本が世界で何をすべきか――

 その問いを、ようやく共有できた」


橘が微笑む。

橘「総理、次は国会です。ここからが本当の勝負ですよ」


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11. 帰国報告演説

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【総理官邸前・特設ステージ】


帰国翌日の夕暮れ、官邸前には報道陣が集まり、国民向けの"帰国報告演説"が生中継される。

夕陽が沈みかけ、空はオレンジ色に染まっている。


藤堂総理がゆっくりと壇上に立つ。

橘官房長官と八重樫幹事長は後方で見守る。

カメラのシャッター音が止み、静寂が訪れる。


藤堂は深く一礼し、静かに語り始める。

藤堂「国民の皆さん。

 G7サミットから帰国しました。

 まず、この国の代表として世界の舞台に立つ機会を与えてくださったことに、

 心から感謝申し上げます。」


「今回のG7では、

 戦争、気候危機、AI、経済安全保障……

 世界が直面する課題について、率直な議論が行われました。

その中で私は、

 "多層的な国際秩序"という新しい考え方を提案しました。」


スクリーンに三つの円が映る。


藤堂「第一層は国連。世界のルールを作る場所です。

 しかし、拒否権があるため、時に動けなくなる。

第二層はG7やQUADなど、

 価値観を共有する国々の枠組み。ここは"実行力"があります。

第三層はAIや気候など、

 国境を越える課題に取り組む専門ネットワーク。

この三つを組み合わせて、

 "止まった部分を別の層で補う"――

 それが私の提案した新しい秩序の形です。」


「アメリカ、ヨーロッパ、インドをはじめ、多くの国がこの考え方に前向きな姿勢を示しました。

世界は今、

 "誰が次の秩序を描くのか"を探しています。

その中で日本が、"設計者アーキテクト"として名乗りを上げたのです。」


橘が後方で静かに頷く。


藤堂は少し間を置き、国民に向けて語りかけるように言う。

「私は、世界を変えたいわけではありません。

 ただ――

 "戦争を防ぎたい"のです。

国連が止まっても、

 世界が動き続ける仕組みを作る。

そのために日本ができることは、

 まだたくさんあります。」


藤堂は視線を上げ、まっすぐカメラを見る。

「日本は長い間、"何もしない国"と言われてきました。

しかし私は、この国にはもっと大きな役割があると信じています。

軍事力ではなく、

 "秩序をデザインする力"で世界に貢献する。

それが、戦後日本が積み重ねてきた平和の価値を

 次の世代につなぐ道だと考えています。」


「世界は変わり続けています。

 ならば、日本も変わらなければならない。

私は、日本が世界の平和に責任を持つ国になる未来を、皆さんと共に作りたい。

どうか、この挑戦を支えてください。」


藤堂は深く一礼する。


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【演説後の反応】


●官邸前の記者たち

「歴史的な演説だ」「国内議論が本格化するぞ」


●テレビの街頭インタビュー

「分かりやすかった」「日本が前に出るのは良いことだと思う」


●SNS

「"戦争を防ぎたい"の一言が刺さった」

「国連だけじゃ無理って、やっと言ってくれた」


橘は控えめに微笑み、八重樫は満足げに腕を組む。

藤堂は官邸の中へ戻りながら、静かに息を吐く。


藤堂(心の声)

*——ここからが本当の勝負だ*

 *日本の未来を、国民と共に描くために。*


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第29話「多層的国際秩序」(後編) 完

次回:第30話「それぞれの藤堂像」

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