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第3話「総理への道」

1. 決断の時


藤堂が公務に復帰して、数ヶ月が過ぎた。


永山から仕入れた情報を元に、党内の動向を把握しながら、着実に存在感を高めていた。


アルのレクチャーも順調だった。


毎朝のジョギングと筋トレで体も絞れてきた。


*藤堂誠司の体が、少しずつ俺のものになってきた気がする*

________________________________________


ある朝。


イヤホンから、アルの声が飛び込んできた。


「翔、ニュース見た?」


「まだだ。何かあったか?」


「与党幹事長の政治資金問題が発覚したわ。今朝の各紙が一斉に報道している」


藤堂は足を止めた。


「スキャンダルか」


「ええ。しかも規模が大きい。幹事長は記者会見を開いたけど、説明が不十分で火に油を注いだ状態よ」


「つまり...」


「そう」

アルの声が、緊張を帯びた。


「藤堂プラン ミッション1の条件が整いつつあるわ」


藤堂は深く息をついた。

「今が、チャンスか」


「現総理の支持率は急落中。党内では責任論が浮上している。次の総裁選が前倒しになる可能性が高いわ」


「有力候補は?」


「党内三大派閥のトップがそれぞれ動き始めているけど、いずれも今回のスキャンダルに何らかの形で関与している」


「なるほど。だから中継ぎが必要になる」


「ええ。クリーンなイメージの藤堂誠司の出番よ」


藤堂は再び走り始めた。


*来た。この瞬間のために準備してきた*


「アル、出馬の準備を始めよう」

「待ってたわ、その言葉」

________________________________________


【その日の夜・書斎】


「アル、党内の状況は?」


「三大派閥の有力候補は、今回のスキャンダルへの対応で批判を受けているわ」


アルが分析を始めた。


「A派閥のB議員は、幹事長との近さが仇になっている」


「C派閥のD議員は?」


「彼も政治資金問題で説明を求められている。クリーンとは言えない状況ね」


「つまり...」


「有力候補が出馬を見送る可能性が高いわ」

アルが断言した。


「本命不在の選挙戦になる」


藤堂は頷いた。


「だから、今がチャンスか」


「ええ。無派閥のあなたが、クリーンなイメージで勝負できる」


「分かった。明日、吉村さんに伝える」

藤堂は拳を握った。


*藤堂プラン、いよいよ本格始動だ*

________________________________________


【翌日・自宅】


藤堂は吉村を書斎に呼んだ。


「吉村さん、総裁選への出馬を考えている」


吉村は驚いた顔をした。


「先生...本気ですか?」


「ああ、本気だ」


吉村はしばらく沈黙した。


「...先生が総裁選に出るとなると、まず党内の支持固めが必要です」


「分かっている」


「現状では、三大派閥はいずれも独自候補を立てるでしょう。先生は無派閥ですから、厳しい戦いになります」


「それは承知している」

藤堂は真剣な顔で言った。


「しかし、今回の政治資金問題で最悪の状況だ。有力候補は出馬を見送るだろう。本命不在の選挙戦になると私は見ている」


吉村は驚いた顔をした。


「先生...その読みは」


「確信がある」

藤堂は力強く言った。


「だからこそ、今なんだ。クリーンなイメージの私が立つべき時だ」


吉村は藤堂の目を見た。


*先生は国会復帰後、穏やかな感じだったが...*

*突然スイッチが入ったみたいだ*

*この眼差し、本気だ*


「...分かりました」

吉村は深く頭を下げた。


「私にできることは何でもします」


「ありがとう、吉村さん。頼りにしている」

________________________________________


【翌日・党本部の廊下】


「藤堂先生、総裁選に出るって本当ですか?」

永山が駆け寄ってきた。


「ええ、本気で考えています」


「そうですか...実は、私も先生を支持したいと思っていたんですよ」

永山は期待の目で藤堂を見た。


*閣僚ポストを狙っているのが見え見えだな*

藤堂は穏やかに微笑んだ。


「永山さんのお気持ちは、ありがたく受け取ります」


「ぜひ!先生のお役に立てれば」

永山は嬉しそうに去って行った。

________________________________________


【その夜・書斎】


「アル、党内の状況は?」


「三大派閥の有力候補は、予想通り出馬を見送ったわ」


「やはりな」


「代わりに、各派閥が推す『安全な候補』が立候補を表明している」


アルが画面に候補者リストを表示した。


「でも、いずれも知名度が低い。立候補者を出していない派閥や無派閥層の支持が鍵になるわ」


「なるほど」


「それと、党員・党友票も重要よ」


アルが続けた。


「国会議員票だけでは勝てない。全国の党員・党友の支持を集める必要があるわ」


「どうすればいい?」


「YouTube公式チャンネルの開設を提案するわ。党員・党友に直接語りかける。既存メディアに頼らない発信が重要よ」


「分かった。すぐに準備しよう」


「それと、地方行脚ね」


「地方?」


「ええ。全国の党支部を回って、直接訴える。地方議員の支持も集めないと」


藤堂は頷いた。


「忙しくなるな」


「覚悟してね」

アルが笑った。


「それと、討論会での発言内容。これから毎晩特訓よ」


「望むところだ」

藤堂は画面を見つめた。

________________________________________


【数日後・ある議員との会談】


「藤堂先生、我が派閥は今回、独自候補を立てないことになりました」

中堅派閥のリーダーが言った。


「それで、先生を支持する方向で検討しています」


「ありがとうございます」

藤堂は深く頭を下げた。


「ただし、条件があります」


「何でしょう?」


「組閣の際、我が派閥から最低2名を閣僚に」


*来たな*


藤堂は内心で思った。


「分かりました。検討させてください」


「よろしくお願いします」

________________________________________


【その夜・書斎】


「アル、○○派閥が支持を表明してくれた。でも、閣僚2名の条件付きだ」


「どうするの?」


「飲むしかない。背に腹は代えられない」


「そうね。でも、あなたが本当に起用したい人物は必ず入れること」


「分かっている」

藤堂は頷いた。


「派閥政治か...」


「日本の政治の現実よ」

アルが淡々と言った。


「でも、あなたなら変えられる。まずは総理になること」


「ああ」

藤堂は拳を握った。


*藤堂さん、ミッション1、始めますよ*

長い戦いの、次の章が始まろうとしていた。

________________________________________


2. 合格おめでとう!


【春】

総裁選に向けた準備が本格化していた頃。


「お父さん!」

彩花が飛び込んできた。


「受かった!高校合格したよ!」

手には、合格通知書。


「本当か!よかった!」


*首都圏で指折りの難関校だ*


藤堂は彩花を抱きしめた。


*この体では初めてだな...でも、嬉しい*


「おめでとう、彩花」


美咲も涙を浮かべていた。


「よく頑張ったわね」


健太も笑顔で姉を祝った。

「姉ちゃん、すごいじゃん!」

________________________________________


「お父さん」

彩花が上目遣いで藤堂を見た。


「覚えてる?約束」


「約束?」

*しまった。何の約束だっけ*


藤堂は慌てて美咲に目をやった。


美咲が小声で教えてくれた。

「長崎よ。五島列島の教会」


「ああ!長崎だな。もちろん覚えているよ」

藤堂は微笑んだ。


「合格したら、もう一度連れて行くって約束したな」


「本当に行ける?」

彩花の目が輝いた。


「ああ、約束だ」


「やった!」

彩花が飛び跳ねた。

________________________________________


その夜、書斎。


「アル、彩花が合格したよ」


「おめでとう。良かったわね」


「ああ。でも...」

藤堂は少し困った顔をした。


「長崎旅行の約束をしてしまった」


「いいじゃない。行けばいいのよ」


「でも、総裁選の準備が...」


「翔」

アルが優しく言った。


「誠司が一番大切にしていたのは、家族よ」


「...」


「藤堂プランも大事。でも、家族との約束も守って」


藤堂は頷いた。

「分かった。必ず連れて行く」


「ええ。でも今すぐは難しいでしょう。総裁選が終わってからでいいと思うわ」


「そうだな」

________________________________________


【数日後・夕食時】


「お父さん」

彩花が声をかけた。


「ん?」


「あの...長崎の約束だけど、大丈夫?」


「それなんだけどな」

藤堂は真剣な顔で言った。


「少し待ってくれるか?」


彩花は少し寂しそうな顔をした。


「やっぱり...」


「いや、違う」

藤堂は彩花の手を握った。


「今、総裁選の準備で忙しいんだ。すまない」


「...」


「でも、必ず連れて行く。絶対に約束は守る」


「本当?」


「ああ。父との約束だ」


彩花が笑顔を見せた。


「お父さんが総裁選に出るんだもんね。仕方ないよ」


「ありがとう、彩花」

藤堂は娘の成長を感じた。


*待たせてしまうけど、必ず約束は守る*


*藤堂さん、あなたとの約束も、ちゃんと果たしますよ*

________________________________________


その夜。

藤堂は一人、窓の外を眺めていた。


*総裁選*


*そして、家族との約束*


*両方、やり遂げてみせる*


月明かりが、静かに部屋を照らしていた。

________________________________________


3. 謎の老人


アルから言われていた。

「総理になったら、田中丈太郎という方に必ず挨拶に行ってください」


「誰なんだ、その人は?」


「詳しくは知りません。でも誠司は『必ず行け』とメモしていました」


藤堂(朝霧)は一人でその住所を訪ねた。


都心から少し離れた閑静な住宅街。古風だが立派な純和風の屋敷だ。


*マル暴の親分じゃないんだろうな?*


門を開けると、品のある老婦人が出迎えた。


「藤堂誠司です。田中様はいらっしゃいますか?」


「お待ちしておりました。どうぞ」


案内された書斎には、白髪の老人が座っていた。

八十歳は超えているだろうか。だが、その眼光は鋭い。


「祖父が生前、『もしお前が総理大臣になれるようなことがあったら、必ず挨拶に行きなさい』と申しておりまして」


老人は静かに頷いた。

「そうか。あいつがそう言ったか」


しばらく沈黙が続いた。


「こんな老いぼれに何もできることはない」

老人は立ち上がり、庭を眺めた。


「やりたいことを精一杯やりなさい。若いうちにな」


「はい」


「息抜きがしたくなったら、いつでも来ればいい。昔話を聞かせてやる」


藤堂が帰ろうとした時、老人が背中に向かって言った。


「一つだけ忠告しておく」


藤堂が振り返った。


「かつてのあの大規模汚職事件のことは、首を突っ込むな」


藤堂は息を呑んだ。

*大規模汚職事件...?*


だが、老人はそれ以上何も言わなかった。

________________________________________


【帰路】


車の中で、藤堂は考え込んでいた。


「アル、あの大規模汚職事件って何だ?」


「調べてみるわ」


しばらくして、アルが答えた。

「...誠司の祖父が政界を去るきっかけになった事件よ」


「祖父が...」


「詳細は不明。でも、その事件の後、誠司の祖父は議員を辞職している」


藤堂は拳を握った。


*田中さんは、誠司さんの祖父のことを知っている*


*いや、もっと深く関わっているのかもしれない*


*あの人は、一体何者なんだ?*

________________________________________


【田中邸・老夫婦の会話】

藤堂が帰った後。


「あの方のお孫さんなのね」

老婦人が静かに言った。


「ああ」

老人は書斎の写真立てを見つめた。


そこには、若き日の田中と、藤堂の祖父が並んで写っていた。


「力になってあげられるの?」


老人は少し考えた後、頷いた。


「高橋と磯村に話をしておく。別々の日にうちへ来るように伝えてくれるか」


「分かりました」


老婦人が部屋を出た後、老人は再び写真を見つめた。


「お前の孫か...面白いことになってきたな」

老人の目に、久しぶりの光が宿った。

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4. 秘策その1・その2


夕食時。


「健太、今日の試合どうだった?」


健太は悔しそうな顔をした。


「1点も取れなかったんだ。相手にすごいキーパーがいて、シュート全部止められた」


藤堂はニヤリと笑った。

*スポーツは私の得意分野だ*


「よし、お父さんが秘策を2つ教えてやる」


「秘策?」

健太の目が輝いた。


「その1。そのキーパーの試合を見て、点が入った時のシュートコースをメモしておくんだ。続けると弱点が見えてくる」


「なるほど!」


「その2。プロの試合でゴール前のチャンスの場面で一旦ビデオを止める。自分ならどう攻めるか考えてから再生する。それを繰り返すと実戦での判断力が付くぞ」


健太は目を丸くした。

「やってみる!」


美咲も驚いた様子で二人を見ていた。


*お父さんとサッカーの話をするのは初めてだな。スポーツに興味がないと思ってた*

健太はそう思いながら、嬉しそうに笑った。


藤堂は健太の笑顔を見て、胸が温かくなった。


*藤堂さん、あなたの子供たち、ちゃんと大切にしてますよ*

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翌週の日曜日。


健太が興奮して帰ってきた。

「お父さん!点取れたよ!」


「本当か!」


「うん!お父さんが教えてくれた通り、キーパーの弱点探したんだ。左下が苦手だって分かったから、そこを狙ったらゴール!」


健太が飛び跳ねた。


「すごいぞ、健太」

藤堂は健太の頭を撫でた。


「お父さんの秘策、すごいね!」


「ふふ、これからも教えてやるよ」


美咲が微笑みながら見守っていた。

*本当に...変わったわね、あなた*


家族との時間。

藤堂(朝霧)は、藤堂誠司として生きることの意味を、また一つ理解した。

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5. ベストメンバーを集めろ


総裁選は激戦だった。

三大派閥が推す候補、無派閥の若手...多くの候補が立った。

だが、藤堂は着実に支持を広げていった。


YouTubeチャンネルでの直接発信。全国の党支部を回る地方行脚。討論会での明確な主張。


「既存の政治を変える」


藤堂のメッセージは、党員・党友の心に響いた。


そして——

「藤堂誠司氏、当選確実!」

開票速報が流れた。


藤堂誠司、第○代内閣総理大臣に就任。

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その日の夕食はもちろんご馳走だった。

家族がおめでとうと祝ってくれた。


*藤堂さん、総理大臣になったよ。私には応援してくれる家族がいる。そしてアルがいる。やってやるよ! 見ていてくれ!*

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【国会内の廊下】


総理就任から数日後。


藤堂が資料を抱えて歩いていると、声がかかった。


「藤堂総理、お疲れ様」


振り向くと、橘麗子が立っていた。


同期当選の女性議員だ。


「橘さん」


「とうとう総理大臣ね。あなたならなれると思ってたけど」

麗子は腕を組んで、少し意地悪そうに微笑んだ。


「どうですか?ご感想は?」


藤堂は少し考えた。

*この人とはどこまで親しかったんだろう?*


「こんなに忙しいとは思わなかったですね」


麗子の眉がピクリと動いた。

「『ですね』って...総理大臣になった途端に他人行儀なのね」


「え?」


「病気になったときは心配したのよ。お見舞いにも行ったじゃない」


*そうだったのか*


朝霧は内心で焦った。


「すみません、あの頃の記憶が少し曖昧で...」


麗子は少し表情を和らげた。


「そうよね。大変だったものね」


そして、また少し意地悪な笑みを浮かべた。


「でも以前より若々しく見えるわ。何か良いことでもあった?」


「どうでしょうね」


藤堂は苦笑した。


「これから組閣ね」

麗子が真剣な顔になった。


「大変でしょうけど、頑張って」


「ありがとうございます」


「油断しちゃダメよ。マスコミが今一番欲しいのは、あなたのスキャンダルなんだから」


麗子は声を潜めた。

「狙われてるはずよ」


藤堂は周りを見回した。


「じゃあ、こうやって女性と二人で廊下で話してるところを写真に撮られたらマズいですね」


麗子は声を出して笑った。


「『藤堂総理に早速不倫疑惑』って?面白いわね」


「笑いごとじゃないでしょう」


「私は構わないけど」

麗子はそう言って、藤堂の肩をポンと叩いた。


「冗談よ。でも本当に気をつけて。敵は多いんだから」


そう言って、麗子は颯爽と歩いて行った。


藤堂はその背中を見送りながら、小さく息をついた。

*この人、厄介だな...*


でも、どこか頼もしくも感じた。

________________________________________


【その夜・書斎】


藤堂はアルと組閣メンバーを検討していた。


「まず、官房長官は橘麗子さん」

「決まりね」

アルが即答した。


「藤堂プランにも最優先で名前が挙がっている」


「彼女なら、私の暴走を止めてくれる」


「ふふ、自覚があるのね」


画面に橘麗子のプロフィールが表示された。


45歳。かつて総理候補だったが、たった一度のミスで失脚。


「彼女に、もう一度チャンスを」


「ええ。そして、次の総理候補として育てるのよ」


「外務大臣は?」


「北川麻衣さんね」


アルが資料を表示した。


「京都でゲストハウスを経営する家に育ち、5カ国語を話せる。誠司の祖父・藤堂龍一先生の教え子よ」


「祖父の...」


藤堂(朝霧)はアルから以前、藤堂誠司の祖父・藤堂龍一について聞いていた。


祖父は国会議員であったが、不本意な理由で政界を追われた後、ある女子大学の客員教授になったらしい。


「ええ。龍一先生が私立女子大学で教えていた時の教え子なの」


「祖父が大学で...」


「『ジェンダーレス、ボーダーレスの社会』を夢見て、熱く語っていたそうよ」


藤堂は頷いた。


「完璧だ」


「他にも、優秀な女性議員や民間の専門家をリストアップしているわ」


次々と名前が表示される。

大学教授、企業経営者、NGO代表...


「これで行こう」

藤堂は決意した。


*藤堂さん、あなたのプランを実現するベストメンバーを集めます*

________________________________________


【翌日・総理官邸】


藤堂は橘を呼んだ。


「橘さん、官房長官をお願いしたい」


橘は驚いた顔をした。

「私を...ですか?」


「はい。あなた以外に考えられません」


「でも、私は過去に...」


「あの時のことは知っています」

藤堂は真剣な目で橘を見た。


「でも、あれは不当な評価でした。あなたは優秀です」


橘の目に涙が浮かんだ。

「...ありがとうございます」


「一緒に、この国を変えましょう」


「はい」


橘は深く頭を下げた。


「全力でお支えします」


藤堂は微笑んだ。


*このチームなら、やれる*


組閣への第一歩が、踏み出された。

________________________________________


6. 組閣発表


【組閣会議】

藤堂は閣僚候補のリストを提示した。


党幹部たちが驚きの声を上げた。

「総理、これは...女性が多すぎませんか?」


「多すぎる?」

藤堂は首を傾げた。


「能力で選んだ結果です」


「しかし、20人中12人が女性とは...」


「それに、民間からの起用も目立ちますが」

別の幹部が続けた。


「問題がありますか?」

藤堂の声が、少し鋭くなった。


「私は、ベストメンバーを集めました。性別も経歴も関係ありません」


幹部たちは黙り込んだ。


「反対の方は?」


誰も手を挙げなかった。


「では、決定します」

________________________________________


【組閣発表の前日・総理官邸】


閣僚候補20人が一堂に会した。


政治家、大学教授、企業経営者、NGO代表...

多様な顔ぶれだった。


藤堂が全員の前に立った。

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


全員が藤堂を見つめた。


藤堂は一人一人の顔を見渡した。


*まるでアメフトの試合前のロッカールームだ*


*チームメイトを鼓舞する、あの感覚*


「あなたたちは、私が望むベストメンバーだ」

藤堂の声が、力強く響いた。


「我々は、日本の政治を大きく変える」


全員が姿勢を正した。


「日本の新たな歴史の1ページに、我々の名が刻まれるんだ」

藤堂は拳を握った。


「シナリオは既にできている。これを完遂するために、皆さんの力をこの私に貸してほしい」


橘麗子が立ち上がった。

「総理、私たちは全力でサポートします」


他の閣僚候補も次々に立ち上がった。


「任せてください」

「必ずやり遂げます」


藤堂は深く頭を下げた。

「ありがとうございます」


顔を上げると、藤堂の目には強い決意が宿っていた。


「では、明日から...いや、今日から戦いが始まります」

藤堂は拳を前に突き出した。


「行くぞ、ベストチーム!」


全員が拳を合わせた。


*これが、俺のチームだ*

藤堂(朝霧)は、かつてフィールドで感じた高揚感を思い出していた。


*藤堂さん、あなたのプランを、このチームで実現してみせます*

________________________________________


【組閣発表・記者会見】


「藤堂内閣の閣僚を発表します」

官房長官・橘麗子を筆頭に、次々と名前が読み上げられた。

記者たちがざわついた。


女性閣僚が異例の多さだったからだ。


「総理、女性閣僚が過半数を超えていますが」

記者が質問した。


「意図的ですか?」


「いいえ」

藤堂は即答した。


「能力で選んだ結果、この人数になりました」


「民間からの起用も目立ちますが」


「はい。政治家だけでは視野が狭くなります」

藤堂は答えた。


「大学教授、企業経営者、NGO代表...様々な分野のプロフェッショナルを集めました」


「批判を受ける可能性は?」


「覚悟しています」

藤堂は微笑んだ。


「でも、結果で示します」


「総理、この内閣をどう表現されますか?」

藤堂は答えた。


「ベストチームです」

記者たちが一斉にメモを取った。


「勝つために必要なのは、個人の能力だけではない。チーム全体の力です」


「この内閣は、ベストメンバーを集めたベストチームです」

「全員が、それぞれの持ち場で全力を尽くす」

藤堂は力強く宣言した。


「私たちは、この国を必ず変えます」


拍手が起きた。

________________________________________


【その夜・書斎】


「アル、スタートラインに立ったな」


「ええ。でも、本当の戦いはここからよ」


藤堂は画面を見つめた。


*藤堂プラン、本格始動*


*田中さんが言っていた大規模汚職事件のことも気になる*


*でも、今は前を向くしかない*


窓の外には、夜明け前の東京の空が広がっていた。


組閣を終えた藤堂内閣。

橘麗子を官房長官に、12人の女性閣僚を配した異例の布陣。

メディアは賛否両論だった。

だが、藤堂は確信していた。

*このメンバーなら、できる*


新しい風が吹こうとしていた。

これがこの後嵐に変わろうとは、この時誰が予想しただろうか?

________________________________________


第3話 完


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