--第81話 魔王の未来線
——時の深海の奔流が再び動き出した。
七人の英雄が立ち上がる。
時相断層を超え、全方向から未来と過去の攻撃が飛び交う中、彼らは互いの存在を確かめ合った。
「アルディエル……!」
ハルヒが剣を握りしめる。
その目に映るのは、無数の光の線——魔王が織り上げた“未来線”だ。
光の糸は、時間軸の差異を伝え、未来の動きを現世に投影する。
その線に触れれば、どの瞬間に攻撃されるかが全てわかる。だが同時に、錯綜する未来が意識を圧迫し、精神を削る。
「これは……一体……」
ユグノアが額の汗を拭う。
数十の未来が彼女の頭上で爆発するかのように現れ、どれを選ぶか迫る。
これがアルディエルの時空操作能力——“未来線戦闘”だ。
リィナが口を開いた。
「私たちだけの未来を、作るしかない……!」
彼女の歌が時海の波を振動させ、七人の時間だけをわずかに安定させる。
アルディエルが槍を掲げた。
その槍先には、光の糸が絡みつき、七人を包囲する。
「私の未来をすべて通過し、抗う……。面白い。だが、この世界で抗える者は誰もいない」
ハルヒが一歩前に出る。
「抗う者はいる!俺たちは――過去も未来も全部抱えて、ここまで来たんだ!」
その瞬間、七人の連携が完全に重なった。
レオンの剣が、未来の自分を斬るかのように光を振るう。
ガルドの戦斧グラヴォルテスが、過去の傷を押し返す重力波を叩き込む。
リィナは歌で時間の偏差を正確に戻す。
ミリアは回復の光を“予測補正”し、攻撃が届く前に仲間を守る。
セリアは光装弓セレスティアで未来の軌道を射抜く。
ユグノアは戦術思考で七人の行動を一瞬の遅延で補正する。
光と影の奔流が衝突し、アルディエルの未来線の束が裂けた。
だが、魔王は微動だにせず立っている。
未来の破片が散乱する空間で、ただ一つの意志だけが残る——“勝利は私のもの”。
ハルヒが心を集中させる。
時計の刻印が胸で脈動する。
「時間……止めるだけじゃない、未来そのものを掴んでみせる!」
彼の視界に、七人の未来が同時に映る。
もしアルディエルに抗えなければ、それぞれの未来は滅びる。
だが、全ての未来を同時に認識することで、**“可能性の線”**が一本、太く輝き始めた。
その瞬間、ハルヒの剣から強烈な光が放たれる。
光は未来線を貫き、アルディエルの槍を弾き返す。
魔王の瞳が、初めて驚きに揺れる。
アルディエルが動く。
槍が時空を切り裂き、七人を断層の中心に引き寄せる。
その力は過去と未来の全てを巻き込み、七人の存在を消去しかねない。
「これが……私の全力……《未来線裁き》――ッ!」
空間が波打ち、時海が渦を巻く。
七人は必死に抗うが、全身が時間の歪みに引き裂かれそうになる。
リィナが咆哮した。
「歌え!時間を止めろ!七人の未来を守るために!!」
風と光の波動が炸裂し、七人の“今”だけを保持する。
未来線を巡る死闘が続く中、ハルヒの胸の時計刻印が限界を超えて赤く輝いた。
——この力を使えば、アルディエルを追い詰めることはできる。
だが代償は……
——彼が元の時代に戻れなくなる可能性。
ハルヒは視線を仲間に向ける。
彼らの決意が、未来を一筋の線に束ねる。
「……行くぞ、七人の未来を、俺たちの手で掴む!」
光と闇がぶつかり合う。




