--第76話 時殻破砕
──アルディエルの一撃が、世界の時間を削り取った。
時の渦が天井を貫き、
崩落した魔王城の石片が“落ちる前”と“落ちた後”を同時に示す。
空間は歪み、未来と過去が混線し、
常識という概念そのものが粉々に砕け散っていた。
この空間こそ、魔王が築き上げた
《時殻》――世界の運命を覆う、時の外殻。
それを破らなければ、七人は未来へ進むことすらできない。
魔王の“本質”が露わになる
「これが……魔王の領域……!」
ミリアが杖を握りしめながら、
落ちる“未来の瓦礫”を光の障壁で防ぐ。
「違うわ」
ユグノアが息を呑む。
「これは……世界そのものが未来を拒絶してる。
アルディエルは、世界の意志と同化しているのよ」
魔王の姿は半ば人型を保っていたが、
その背後に広がる“虚無の翼”は時間の流れそのものを喰らい、
ただ存在するだけで周囲の時空を削っていく。
「我が身は世界の断片。
私の存在は、終末そのものだ」
アルディエルの声は静謐だった。
「抗うならば──未来の殻を破ってみせよ。
英雄たちよ」
七人、時の奔流へ飛び込む
「やるしかねえってことだなァ!」
ガルドが咆哮し、地を蹴った瞬間──
彼の足元の時間が “3秒分” 削れ、
着地するより先に身体が前方へ投げ出される。
「ぐっ……! 時間加速が勝手に……!」
「ガルド、伏せて!」
セリアが光装弓セレスティアで、
“3秒後に落下する岩”と“2秒前に砕ける石片”を同時に撃ち落とす。
「この時空……私たちの常識じゃ通用しない……!」
リィナが息を整え、風の精霊を呼び寄せて空へ舞う。
「ハルヒ」
レオンが視線を向ける。
「お前の剣じゃないと、この空間は斬れない。
進路を切り開けるのは……お前だけだ」
「……分かってる!」
ハルヒは“時の剣”を握りしめる。
その刀身には、彼の“存在時間”が脈のように刻まれていた。
時間を使いすぎれば──消える。
それでも、進むしかない。
時殻、顕現
アルディエルが手をかざすと、
空間に巨大な球殻が出現した。
それは透き通るような光でも、硬質な結晶でもない。
“過去の記憶”と“未来の断片”が連続的に積層した、
世界の運命そのもの。
《時殻》
その外殻が七人の前に立ちはだかった。
「まるで……大陸そのものが鉱石になったみたい……」
ミリアが呟く。
「違う。
これは“世界が歩んできた時間”の結晶だ」
ユグノアが分析する。
「だからこそ……斬れねぇわけにはいかねぇんだろ?」
レオンが剣を構えた。
「よし、行こう!」
ハルヒが叫ぶ。
「みんなの動きを、俺が合わせる!」
七人の連携が“未来の道”を穿つ
「風よ──彼らを導け!」
リィナの歌が響く。
風の精霊が七人の動きを同調させ、
全員の時間軸が一つに揃う。
次の瞬間──
七人の影が、一つの未来へと伸びた。
◆レオンは雷神剣で“次の瞬間の壁”を裂き
◆ガルドは戦斧グラヴォルテスで“1分前の層”
を叩き割り
◆セリアは光装弓セレスティアで“未来の綻び”
を射抜き
◆ユグノアは最適行動を導き
◆ミリアは崩れた時間を光で修復し
◆リィナは風で未来を押し出し
◆ハルヒが──すべての時間を貫く。
「はああああああああああッ!!!」
ハルヒの剣が巨大な“時間の殻”に到達し──
世界の運命そのものが、悲鳴を上げて砕けた。
時殻破砕。
その瞬間、アルディエルは表情を変えた。
「……見事だ。
だが、殻を破っただけでは未来は変わらぬ」
魔王の翼が形を変え、
冷たい光を帯びた槍となる。
「ここからが──本当の戦争だ、英雄。
レガリアを“織り直す”戦いがな」
ハルヒは前へ一歩踏み出し、剣を構えた。
「なら、やろう。
世界の未来を……取り戻すために!」




