--未来断章 :ガルド編
〈ガルドvs 壊れた獣の未来**〉
空気が震えていた。
世界は巨大な石壁で囲まれ、まるで規格外の闘技場のようだった。
地面には無数の亀裂が走り、中心には打ち捨てられた鎧と武器の山──戦場の残骸が転がっている。
「ここは……戦場か?」
ガルドは低く呟き、警戒を深めた。
その時、石壁の影から“異様な重圧”が迫る。
黒い鎧をまとった巨躯。
同じ筋肉、同じ顔つき、同じ戦士の構え──
ただしその瞳には、理性がなく、獣のような狂気しか宿っていなかった。
「俺か……? いや、“壊れた未来の俺”か」
影のガルドは、低く唸るだけだった。
「──壊す。すべて……壊す」
斧を握りしめ、地面を踏み砕きながら突進してくる。
ガルドは両腕を交差させて防御したが、影の一撃は重さも速度も異常だった。
腕がしびれ、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「お前は壊れる。仲間を守るために、限界を越え続けた結果……
気づけば“守るために壊す獣”になったんだ」
影の声は、ガルド自身の内側から響くようだった。
「守るために……壊す、だと?」
「そうだ。
仲間を守れなきゃ自分を責める。
自分だけ無事でいるのが許せない。
だから戦う。
だから壊す。
だから壊れていく」
「バカな……俺がそんな……」
「あるさ」
影は腕を広げ、狂気の笑みを浮かべた。
「お前は優しすぎるんだよ、ガルド。
強さを求めすぎて、弱さを捨てた。
その未来が──“俺”だ!」
影が地面を蹴り飛ばし、凄まじい速度で迫る。
ガルドも拳を握りしめ、迎え撃った。
肉と肉、力と力がぶつかり合い、石壁が震え、地面が裂ける。
だが、押し負ける。
影の力は圧倒的で、ガルドの拳を打ち砕かんと迫った。
(やばい……力じゃ勝てねえ!)
「なあ、“未来の俺”。」
ガルドは影に押し込まれながら、低く言った。
「確かに俺は仲間を守れねえと自分を責める。
でもよ、壊れるのは違うだろ。
守るために強くなるんだ。
壊すためじゃねえ!」
「同じだ! 強くなるほど、お前は壊れる!」
「違えよ!」
ガルドは吠え、その声で影の動きが一瞬だけ止まる。
「俺は壊れねえ。
だって──」
拳に力が戻る。
折れそうだった心に、仲間たちの顔が浮かんだ。
「仲間がいるからだ!」
封じていた渾身の力が爆発し、ガルドの拳が影を押し返した。
「俺は、一人じゃねえ!」
拳が影の胸へ深く突き刺さり、黒い鎧が砕け散る。
影は膝をつき、ガルドを見上げた。
「仲間……か……
なら、お前は……壊れねえ……な……」
影は満足げに笑い、光に溶けていった。
ガルドは拳を下ろし、静かに深呼吸した。
「強さってのはよ……守りたい奴がいるから手に入るもんだ。
壊れるためじゃねえ。
俺は……壊れねえよ」
まぶしい光が彼を包み、現実世界へと戻していく。




