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千年時計  作者: ちゃぴ
第1章  第1幕 時を紡ぐ時計 

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--**未来断章 ― :レオン編


《剣聖レオン vs 冷酷な剣聖の未来》**


 魔王城深層――“鏡路ミラールート”。

 七つに割れた運命の回廊は、英雄たちをそれぞれの影へと誘う。


 レオンが足を踏み入れた先は、静寂が支配する灰色の大広間だった。

 壁も天井も存在せず、ただ無限に続く床の上に微光が揺らめく。


 ――鍔迫り合う音が、聞こえた。


 次の瞬間、影が姿を現す。


 「……よぉ、レオン。まだ“人を斬る痛み”なんて抱えて戦ってるのか?」


 現れたのは、黒衣に身を包んだレオン。

 表情は冷たく、声には感情が全くない。

 その手に握る剣は、レオン自身の剣と同じ形をしながら、光を一切帯びていなかった。


 まるで“決意”を完全に捨てた者の刃。



  未来の自分は、剣聖の「完成形」


「……お前は、“俺の未来”か?」


 レオンの問いに、影は薄く笑った。


 「ああ。情は切り捨てた。仲間を守るために必要な“犠牲”すら、迷いなく受け入れた未来だ」


 影のレオンは続けた。


 「俺は魔王を討つために――七人の仲間を全て斬った」


 その言葉に、レオンの心臓が大きく跳ねた。


 「……何だと?」


 「最短で勝つために、切り捨てた。ハルヒの“時間”も、リィナの歌も。

  だがその結果、魔王は確かに斬れた」


 影は静かに剣先をレオンに向ける。


 「情のあるお前では、届かない場所がある。

  俺を超えられなければ、いずれ全員死ぬ」



  剣と剣が衝突する瞬間、もう一人の思考が突き刺さる


 影の姿が消え――レオンの背後に現れた。


 「速いっ!」


 反射的に剣を振り上げる。

 火花が散り、衝撃が肩まで突き抜けた。


 影は感情なく告げる。


 「迷いが多い」


 連撃。

 どれもが“急所のみ”を狙う冷徹な剣筋。

 レオンはわずかに押されるたび、内面までえぐられるような痛みを覚えた。


 ――これが、俺が選ぶかもしれない未来?


 ――本当に、ここまで冷たくなれるのか?


 剣聖としての才能の行き着く先が、“全てを捨てた怪物”だというのか。



「迷い」を捨てるのではなく――「迷いを抱えて前に出る」


 影の刃がレオンの頬をかすめた。


 薄く血が流れる。


 影は問いを投げるように呟いた。


 「弱さだ。お前の甘さは、いつか誰かを殺す」


 レオンは息を整え、ゆっくりと剣を構え直す。


 「……ああ、分かってるさ」


 影が目を細める。


 「だったら――」


 「だがな。俺はその弱さごと、剣聖になる!」


 レオンの叫びが、空虚な世界を震わせた。


 「仲間を斬って得る勝利なんて、いらない!

  俺は“迷った俺”のまま、仲間と一緒に未来を切り拓く!」


 その瞬間。


 迷いを抱えてなお折れなかった心が、剣に宿る。


 剣筋が変わった。


 影のレオンの瞳がわずかに揺れる。


 「……その剣は、効率が悪い」


 「だからいいんだよ!」


  決着――影を断つのではなく、未来を選び取る


 レオンは踏み込む。


 一閃。

 影の剣を弾き、胸元に刃を突きつける。


 影のレオンは、初めて表情を動かした。


 驚きと――どこか、安堵。


 「その弱さで……本当に勝てると思うか」


 「勝つさ。俺だけの力じゃない。

  ハルヒがいて、リィナがいて、みんながいる。

  俺はその“未来”を選ぶ。それだけだ」


 影の身体が、光の粒になって崩れ始める。


 「……なら、その未来を……壊すなよ」


 それは、まるで未来のレオンが今の自分に託した願いのようだった。


 レオンは剣を下ろし、静かに呟く。


 「壊さないさ。必ず、守り抜く」


 光は完全に散り、影は消えた。



  レオンは、未来を選んで前進する


 大広間の扉が開く。

 そこには、仲間たちの気配が――遠くに、しかし確かに存在していた。


 レオンは歩き出した。


 迷いを抱えた剣聖のまま。

 けれど、その足取りはどこまでも真っ直ぐだった。



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