--第28話 「戦士ガルドの誇り」
「人間の理屈なんざ知らねぇ! 俺たちは守るために戦うだけだ!」
戦斧が閃き、槍を粉砕する。
敵の隊列が一瞬にして崩壊した。
グラーデンの目が細くなる。
「……化け物め。だがそれも、短時間しか保たぬのだろう?」
「充分だ。俺が立ってる間に、仲間は逃げ切る!」
遠く、南門の方角にハルヒとレオンの姿が見えた。
爆煙の向こう、リィナの風が彼らを包み、退路を開いている。
――間に合った。
その刹那、グラーデンが手を振り上げた。
「撃て――《時封陣》!」
地面が光り、陣形が爆ぜた。
時間が一瞬、止まる。
風も、炎も、音さえも凍りついた。
その中で、動けるのはただ一人。
ガルドだった。
「……やっぱり、来やがったな。
時間の魔法なんざ、もう見飽きた」
血を吐きながら、彼は最後の一歩を踏み出した。
戦斧を振り抜く。
凍りついた世界を裂くように、閃光が走った。
次の瞬間、光が弾け、封陣が砕け散る。
止まっていた時間が流れ出す。
「なに……!」
グラーデンの瞳が見開かれる。
「……戦士を舐めるな。理屈の外で生きてんだよ、俺たちはな!」
戦斧が風を裂き、グラーデンの肩を掠めた。
血が飛ぶ。
その隙を突き、レオンたちが完全に撤退。
ガルドはその場に膝をついた。
身体中に刻まれた獣化の紋章が、黒く煙を上げる。
「……悪ぃな、みんな……俺はここまでだ……」
彼の視界の端で、戦場の空が裂けた。
遠く、王都の西門に純白の光――セリアの光の弓矢で出来た光の柱が輝いている。
ガルドは笑った。
「……あの光、まぶしいな……」
そして、崩れ落ちる。
だが、その笑顔は誇りに満ちていた。
戦士として。
仲間を生かす“盾”として。




