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千年時計  作者: ちゃぴ
第1章  第1幕 時を紡ぐ時計 

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23/52

--第23話「治療の聖女ミリア」


 アルグレアの街中。

 煙が立ち込め、瓦礫と瓦屋根の破片が散乱する戦場に、ひときわ柔らかい光が差し込んでいた。


 「しっかりして、兵士たち。傷は治る。落ち着いて」

 ミリア・ルゼリアが手をかざすと、傷ついた者たちの身体から痛みが消え、切り傷や打撲が光に包まれて修復されていく。

 その光は聖なる青白さを帯び、戦場の混沌にあっても、一瞬だけ静寂を生む。


 「すごい……」

 ハルヒは呆然と見つめる。

 剣で戦うのとは異なる、力の形。

 それは、刃や火力ではなく、“命を守る力”そのものだった。


 「ハルヒ、そっちの負傷者はどう?」

 ミリアが振り返り、優しく問いかける。

 ハルヒは傷兵を指差し、剣を構えながら答える。

 「こちらは大丈夫です。敵の接近を抑えつつ……」


 ミリアは微笑み、手を再びかざす。

 「私は、あなたの力と連携する。傷を癒やす間、あなたの刹那の一閃で敵を止めるの」


 ――戦場はチームワークで成り立つ。

 ハルヒはその言葉に心が温まると同時に、背筋に戦士としての覚悟が走る。

 刹那の時間操作と、治癒の光。

 自分の刻印――時の力――を制御し、仲間の魔法と合わせることが、戦場での勝利を決める鍵になる。


 「民間人を安全な場所へ!」

 ミリアの指示に従い、兵士たちが負傷者と避難民を導く。

 その間も、ハルヒは刹那視界と時感応で敵の動きを先読みし、魔族兵を正確に斬る。

 まるで、二つの“時”が同時に存在しているかのような光景だ。


 その時、ハルヒの視界に一瞬の異変が起きた。

 時の刻印が微かに震え、身体中に熱を帯びる。

 「……また来る」

 何かが接近する予感――それは魔族の精鋭部隊だった。


 「ハルヒ、準備はいい?」

 ミリアが微笑む。

 「ええ、任せてください」

 刻印の力を感じながら、ハルヒは剣を握り、刹那の間で敵を斬る瞬間を待つ。


 光と闇が交錯する戦場で、ミリアの治癒の光は、仲間たちに安心と希望を与える。

 彼女の魔法は、単なる補助ではない――戦場全体の士気を高め、戦闘効率を劇的に向上させる力だった。


 「俺も、もっと役に立ちたい……」

 ハルヒは胸に誓う。

 時の刻印と連携し、英雄たちと共に戦場を駆け抜ける――

 その決意が、心の奥で静かに燃え上がる。


 南方の空に再び敵の咆哮が響き渡る。

 次なる瞬間、時の刻印の力が刃となり、敵の動きを止め、ミリアの光と共鳴する。

 戦場は混沌の中でも、二人の力が織りなす秩序を帯び始めた。


 その背後で、リィナの風の精霊が静かに羽ばたく。

 「次は……あなたの番ね、風の歌姫」

 戦火の都市で、次の英雄の力が目覚める予感が、ハルヒの意識に届く。


 戦場の夜明けはまだ遠い。

 だが、時の刻印と治療の聖女の光が交わる瞬間、確かな希望の光が戦火に射し込んだ。



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