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千年時計  作者: ちゃぴ
第1章  第1幕 時を紡ぐ時計 

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22/50

--第22話「戦火の都 アルグレア」


 都市アルグレア――

 城壁の向こうには、燃え盛る炎と黒煙が渦巻き、戦の悲鳴が絶え間なく響いていた。

 戦場の空気は灼熱と硝煙で満たされ、地面には崩れた建物や倒れた兵士の影が散らばる。


 「……これは……」

 ハルヒは言葉を失う。

 騎士学校での模擬戦とは桁違いの惨状。

 しかし、その惨状の中に、彼の胸を高鳴らせるものもあった――時の刻印の存在を、戦場で試す絶好の機会。


 レオンが前を歩き、剣先を高く掲げた。

 「全員、気を引き締めろ。敵は都市全体に潜んでいる。

  油断すれば即座に包囲される」

 ミリア、リィナ、ガルド、ユグノア、セリア――英雄六人の表情は引き締まり、誰一人として笑みは浮かべていなかった。


 「ハルヒ、無理をしないで」

 リィナの声が届く。

 「力を出し惜しみせず、でも制御を忘れるな」


 ハルヒは頷き、剣を握り直す。

 (この力を――仲間と都市の命を守るために使う)


 都市の中心部に近づくと、魔族兵の姿が目に入った。

 黒い甲冑を纏い、獣のような咆哮と共に市街地を駆け抜ける。

 兵士たちは混乱し、避け惑う民衆も視界に飛び込む。


 「民間人を巻き込むな!」

 レオンの声が響き、全員が即座に陣形を整える。


 ミリアは治癒魔法を展開し、傷ついた兵士や民を安全圏に誘導する。

 「みんな、落ち着いて! 私が守るから!」

 その声は力強く、聖なる光を伴って戦場の空間を照らした。


 ハルヒは時の刻印を意識する。

 剣を構えるたび、視界がわずかに歪み、敵の動きが遅く見える。

 ――初めて実戦で使う自分の力。

 恐怖ではなく、確かな手応えと昂ぶりが胸に広がる。


 「よし、進むぞ」

 レオンの合図で、六人の英雄とハルヒは市街地に突入した。

 瓦礫の間を縫うように進み、魔族兵を斬り伏せる。

 ハルヒの刹那の一閃が、戦局を有利に傾ける。


 しかし、戦場は混沌としていた。

 火の手が迫り、敵の増援も次々に現れる。

 その中で、ハルヒは一際強く輝く光に気づいた。


 ミリア――治癒と補助魔法を司る聖女。

 彼女の手から放たれる光が、傷ついた者たちを包み込み、戦場の緊張を一瞬だけ和らげる。


 「ここで、仲間たちを守るのが私の役目」

 ミリアは微笑みながら、血まみれの兵士に手をかざす。

 光が広がり、瞬く間に傷が癒えていく。

 兵士は再び立ち上がり、戦列に戻る。


 ハルヒは息を呑む。

 (……凄い……この人は戦い方が違う)

 光の中で、ミリアの存在はまるで“戦場の聖女”そのものだった。

 傷ついた者を救い、戦う者の士気を上げる――その魔法は、力だけでは語れない戦場の要だった。


 「ハルヒ、大丈夫?」

 ミリアが剣を手に取るハルヒの横顔を覗き込み、柔らかく微笑む。

 「はい……やっと、この都市でも力を使えました」

 「でも無理はしないで。あなたの力は、まだ未完成だから」


 ハルヒは小さく頷き、剣を前に構える。

 都市の奥から、新たな魔族の咆哮が聞こえる。

 手に浮かぶ刻印――自分の内に眠る力が、微かに熱を帯びて動き出す。


 (……俺の力で、戦局を変える……!)


 都市アルグレア――戦火の中で、六人の英雄と

 時の刻印を抱えた少年は、初めて本格的に力を発

 揮する。

 刹那の斬撃、光の癒し、仲間との呼吸。

 

 戦場の混沌の中で、時の刻印を抱えた少年は

確かな存在感を示し始めていた。



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