帰郷8
「あたし達が住んでいた村は……RLの襲撃にあって…………それであたし達は、生きる為に鳥かごに忍び込みました……」
「そうだな……RLの襲撃は聞かされているが、どうやってここに来た?」
「リディさん、それに付いては……」
「リナ、私は彼女に聞いている。彼女の口から話をさせろ」
眼光の鋭いリディ……平時の時の、昼行灯のようなおっとりとした雰囲気は無く、鳥かごが襲撃された時と同じ、張り詰めた雰囲気を醸し出している。
まさか、リナの家で流血沙汰はしないとは思うが、それでも、リディの眼には穏やかさはない。
「あの……鳥かごに違法入居するのは、難しいのは知っています……でも……チャンスがあったんです……」
「チャンス?君達にどんなチャンスが訪れたって言うんだい?」
「……準都市だった、街が未確認の「何か」に襲われて、大量に人が死んだんです」
「…………」
「リディさん……」
「大丈夫だ……続けてくれ……」
凜の話した事に、リディが苦虫を噛み潰したかのように渋い顔をしたので、美優が助け舟を出そうとするが、手の平を向けてそれを断る。
「……そもそも鳥かごに違法移民しようとする人は、ある程度コネがあります……村に住んでいる人が準都市に違法に住もうとするように……準都市に住む人は、より安全な鳥かごに住みたがります」
「そうだな……」
「村から鳥かごに違法移民するというのは、現実的な話ではありません……村に住んでいる者が、いきなり鳥かごに行く為の伝手は皆無ですし……そんな伝手があるなら、自分達の為に使うでしょう」
「その通りだ……」
「普通ならあたし達は、鳥かごに来る事なんて出来ません……騒動に紛れ込んで、準都市に違法移民しようとしたのですが……その時だけは違ったんです」
「……どう違ったんだ?」
凜の話を聞いて渋い顔をするリディだが、それでも話に耳を傾ける。
「さっきも言いましたが、準都市を襲ったのはRLじゃないんです……「何か」が準都市を襲ったんです……その「何か」によって多くの人が死んでしまったのですが……この事件を出来るだけ隠したかったのか、亡くなった人の情報処理が甘くなっていたんです」
「それで、亡くなっている人の情報を改竄したのか?」
「鳥かごで生きられるという事は、寿命で死ねます……死んだ人は可哀想だとは思いますが、利用出来る物は利用するべきじゃないでしょうか?」
リナの背中に隠れて、伏し目がちに喋っていた凜が、少しだけ語気を荒くしてリディを睨む。




