帰郷70
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「可愛い仔犬……」
司令官室から出た、リミィのクローンは小さく呟く。
司令官……と言うと何だが、裏のある悪いイメージがあるが、彼に付いては純粋だ。
お偉いさんの子供の探索という名目を、盲信的に信じたりしない、この地上の鳥かごを視察する可能性を考えての準備を怠らなかった。
彼は、自分の地位を守りたいのではない、このフアニに住む人を護りたいと願っている。
リミィのクローンを、あの子達に接触させたのは偶然ではない、どんな人物か見定めて欲しいというお願いと、万が一の時は「殺せ」という命令も出していた。
この準都市に住む人達を想うから心があるこそ、わざわざ自分が出しゃばる様な真似はしない。
あの司令官の席に座ろうと思えば座れるが、面倒事もしないといけなくなる事を考えれば、協力をしながら、彼を時々利用させて貰うのが丁度良い塩梅なのだ。
「リミィさん、どうしてこちらに?」
司令官室から出て行き、少し気を抜いて歩いた先に辿り着いたのは、整備員達が居る格納庫、そこにはパワードスーツだけでなく、様々な兵器が陳列されている。
「……司令から、パワードスーツの点検をしろと言われたの」
「パワードスーツの点検?それは我々が……」
「スクランブル待機している者から、自分で再度チェック。それと弾薬の確認、補給の手筈を整えなさい」
「……!!すぐに始めさせます!!」
リミィのクローンの命令に異を唱える事無く、整備員達は慌ただしく動き始める。
彼女の一言で、これから戦争が始まるかのように慌ただしくなる格納庫。
それだけリミィのクローンの言葉は重く、みんなからの信頼を得ている。
(それじゃ、私も準備を始めようかしら)
自分専用のパワードスーツ、RLH用に改良されていたパワードスーツ。
人よりも優れた身体能力を持つ、RLHの運動能力を阻害しないように、装甲をそぎ落としモーター等のアシストも最低限にコンパクトにしてある。
『カシュン……』
「リミィさん?」
「少し散歩して来るから、後は任せたわ」
「了解です!!」
普通ならパワードスーツを着て出掛ける等、許される訳も無いのだが、彼女がパワードスーツを着て外に出るというのなら、それは特例で許されるのである。




