帰郷61
美優とミィオの話では、リミィさんという母親は死んでいる事になっていたが、目の前には生きた人がいて……
「うっ……あっ……」
美優さんの反応からして、冗談を言っている訳では無いのは肌で感じられる。
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美優の体が、硬直して動かない。
死んだはずの母……死んでいると伝えられていた母なのに、目の前には、椅子に座っている母がいる。
泣いて抱き着けば良いのか?それとも妖と罵声を浴びせるべきなのか?
砂漠を歩いて来たかのように、喉がカラカラになってしまって言葉を絞り出す事が出来ない。
みんなを護る為になら……今すぐに、この鋼鉄の右腕で……
「アネキ……」
「ミィオ……」
鋼鉄の右腕をどうするべきかと、どう決断を下すべきかと思い悩んでいた右腕を「そっ」と握られる。
「アネキ……あの人は……お母さんじゃないッス……」
「じゃあ……」
それならば「敵」なのかと、体を何とか動かさなければと、思考を働かせようとするが鈍い。
母の顔を持つ相手をグチャグチャに殺さなければならない……体の一部は鋼鉄の機械だが、心まで機械なのではない。
(何をしているんだ……みんなを……守るんだろ……)
自分の手を握っているミィオを払い、鋼鉄の手を握り締めて殴れば、それだけで撲殺出来る……その後は、心を殺して殴り続けて、顔が判別出来なくなるまで「グチャグチャ」に殴り続ければ、そんなのは気に無くなる。
「……落ち着け美優、この方は敵では無い」
「リディさん……」
美優の不穏な空気に気付いたのか、リディが美優を落ち着かせる。
覚悟を決め、鋼鉄の拳を振り上げて、がむしゃらに振り降ろすまで後一歩という所で、美優の気持ちを踏み止まらせる。
「この方の正体なんだがな……」
「言って大丈夫、その為にここにいるから」
リディは一瞬、この事を言って良いのかと言葉が淀んだが、女性は、気にしていない所か是非とも紹介して欲しいと言う。
「それなら……この方は……リミィのクローン人間だ」
「クローン人間?母さんのクローン?」
「よろしくね、私はリミィのクローンよ」
改めて全員の方に顔を向けてリディが言ったのは、なまじ、信じられない事であった。




