帰郷58
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「お手数をお掛けしました」
「良いのよ。ここに来て手を合わせられる人は中々いないから、本当に良かったと思うの」
「手入れをされたり?」
「私達にとっても大事な場所だから……さっきの繰り返しになっちゃうけど、辛いじゃない……自分が死んだら、荒廃するって思ったら……だから、自分が綺麗にするの。そうすれば自分が死んだ時に、同じ事をしてくれる奇特な人がいるって思えるじゃない」
「そう……ですね……」
墓参りが終わった美優達の方はと言うと、和やかな雰囲気であった。
パトロールカーを運転してくれる案内人という立場から、彼女は良い人という、信頼関係に変わったというのが大きい。
彼女の言葉で全てが解決した訳では無いが、それでも、また一歩前へと進める。
復興したフアニ……一歩前へと進めば、自分達を忘れてしまった場所で立ち尽くして、途方にくれないで済む……大きく前にはまだ進めないが、確実に前には進めている。
パトロールカーに乗せて貰い、大型トレーラーの所へと戻って来ると、
「あれは……」
「車だ……」
大型トレーラーに横付けしている車がいる。
「軍用車……」
「軍用車?」
「挨拶をしていた方を、送ったのだと思いますけど……」
案内人の顔が少し曇る。
何か怯えているかのような態度に、和やかな雰囲気が急激に冷める。
「取り敢えず、こちらも着けましょう」
案内人は少し距離を離した所で、パトロールカーを停めて全員を降ろすと、案内人も車から降りて、軍用車に視線が釘付けになる。
「……気を付けてと言うのも変だけど、私よりも格の高い人だと思って」
「どんな人か、聞く事は出来ませんか?」
物々しい雰囲気に何かを聞き出せないかと、何か教えて貰えないかと乞うと、
「……このフアニで最強の人よ」
「最強の人?」
「……訓練で手合わせをしてボコボコにされたけど……そういうのも含めてだけど……」
口にするのが難しいのか、憚られているのか、曖昧な形でしか答えて貰えない。
「格別なの……隔たりがあるの……ごめんね、こんな事しか言えなくて……」
「いえ、ありがとうございます」
「ごめんね……」
そこまでの義理は無いはずなのだが、罪悪感を感じているのか、顔を曇らせたまま身を小さくして、美優達から逃げるように車に乗り込むと、
「あの……」
「なにかな?」
美優が、車の窓から体を入れて、案内人の耳元に口を近付ける。




