帰郷57
「それでは手配を……と言いたい所だが、来ないな……」
「来ないですか?」
「秘書ではないが、君達を担当する者を用意していたのだが……連絡をしてみるか」
机の上に置かれている受話器に手を伸ばし、どこかに連絡をし始める。
受話器を耳に当てて、短い会話を少し済ませると、
「どうやら、こちらのミスで他の仕事が入っていたらしくてね……外の入り口に、これから迎えに来るという事なのだが」
「それでしたら外で待ちます」
「申し訳ないが、そうして貰えると助かる。さっきの案内人の彼に、一緒にいさせよう」
もう一度、受話器を耳に当ててどこかに連絡すると、リディを司令官室まで案内してくれた人が、来てくれる。
「失礼致します」
「すまないね、何度も」
「はっ、問題ありません……それで彼女を」
「あぁ、入り口に案内して、一緒に待っていて欲しい」
「一緒に待てば、良いだけですか?」
「それだけ良い、頼めるね」
「分かりました、それでは……」
「よろしくお願いします」
リミィはそのまま、案内人に連れられて入口の方へと戻ると、一言二言の他愛の無い話をして、互いに距離感を置いたまま、迎えの車が来るのを待っていると、
『パァン……』
自分達の前に一台の車が停まって、短いクラクションを鳴らす。
「迎えが来ました」
「そしたら後は、向こうの方に話を聞きます」
「はい、それでは」
「……ふぅ」
本当に、何とも無く話が終わった……と言いたい所だが、実際は「何とも無く終わらせる」為に、機転を利かせていた。
(後は、このまま戻れば良いだけだ……)
ここで変なボロを出さないように気を付けながら、墓参りに行っているミィオ達と大型トレーラーで合流すれば、今日という日は無難に終わる事が出来る。
「よろしくお願いします」
何度も繰り返す「よろしくお願いします」という言葉も、これで終わる。
ドアを開けて後部座席に座ると伏し目がちになり、余計な問題を起こさないようにと……
「君は賢い……私の知っている「リディ」と、どことなく似ているよ」
「なっ……」
投げ掛けられた言葉よりも、投げ掛けられた「声」にリディは反応してしまう。
あれほど距離を保ち、何があっても冷静さを失わないようとしていたのに、運転席に座る人物を見てリディの瞳孔が開いてしまう。




