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帰郷54

案内人に母の名前を預け、一つ一つの墓に名前が刻まれているのを横目にしながら、お墓を縫うように歩いて行く。



墓に刻まれた、順番通りに並ぶ名前が時折飛ぶ。



元々、そこに亡くなった人の名前が無かったのか、それとも身元不明になってしまったのか……連なっている名前が飛ぶのを見ると、心臓が跳ねる。



「…………」



「アネキ…大丈夫スか……」



自分の母の名前が刻まれている、お墓へと近付いて良く……ここで足を止めれば、シュレーディンガーの猫の様に、母のあるお墓と、母のお墓に無い世界に……別れる訳が無い。



箱の中に死に掛けの猫を入れれば、その猫はいずれ死ぬ……今は生きているか、それともこの後に死ぬのか……答えが少し変わるだけ……



「……」



自分が、ここに母のお墓があるのが知っているか知らないか……そんな話になってしまうだけ……出来るだけ無心になって、足を止めないようして……



「この人で……間違いないかしら?」



足を止めないように進んでいたのだが、先に案内人が足を止めるのであった。



「……見てみます」



美優は、母のドッグタグに刻まれていた情報を覚えている……墓に刻まれている情報と……それを照らし合わせる事が出来るのは自分だけ……



墓前の前に立つと、刻まれた一つ一つの文字を読んでいく……生年月日に血液型、名前の綴り……それらを間違える事無く、記憶と合わせていき……



「……母さんの……墓だ」



「アネキ……」



美優にとっての母は、ミィナの実母……二人はリミィの墓前に立つ。



涙は零れない……零れはしないが、フアニが復興していると聞かされてから、体の中に溜まっていた疲労が「ドッ」っと抜けていくのを感じて、



「少し…座らせてくれ……」



「美優さん……」



「少しだけだ……少しの時間で、全てに片が付く……」



美優は、しゃがみ込んでしまう。

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