帰郷46
普通なら、準都市から離れて他に移り住めと言われたら暴動が起きかねないが、飛び散った血で赤く染まった街に留まりたいと願う者達はおらず、周辺の町でも良いからすぐにでも引っ越したいと願った。
「それでアタシ達が住んでいた所は、軍事基地にされてしまった訳ですか……」
美優の中でも、フアニは破棄されて崩壊しているとばかりに思っていたから、今回のフアニへ行く事は、火内を探すのもあるが、墓参りに行くつもりでもあった。
「気持ちは察するわ……リディさんも、フアニに行くと言われた時に、その話をしたらショックを受けてたから」
ついさっきまでリディも、フアニは廃墟になっていて、誰もいないと思っていた。
多くの人達が無くなった場所を軍事施設に変えるのは、死者への冒涜……とは言えない。
生きている者達は生きないといけないのだから、利用出来る物は何でも利用する……ましてや、準都市という場所を考えれば、利用しない手立ては無い。
「慰めにならないと思うけど、共同墓地はあるの……身元や名前が分かる人達は、個人のお墓があるわ……貴方達のお母さんも、安らかに眠っているわ……」
「ありがとうございます……シュライトさん…………」
「もう休んで良いぞ美優。予定はさっきも言った通り、フアニに滞在するような形で行動する。最初の目的地は凛の故郷だ」
「はい……」
美優は席を立つと、そのまま部屋へとふらふらと戻っていく。
「余程ショックだったんですね……」
美優とは会ったばかりだが、それでも彼女には活力という物を感じていたが、今は意気消沈をしているのが手に取るように分かってしまう。
「……ミィオは大丈夫?」
「自分スか?自分は……平気ッス。こんな事を言うのも変スけど、自分は悲しいというより……それが事実……って感じがするんス」
「事実?」
「お母さんが、優しかったのは覚えているッス……だけど、自分が子供過ぎて覚えてないッス」
「そっか……」
フアニの襲撃は美優が八歳で、ミィオが七歳の時の話。
普通なら母親との時間は覚えているかもしれないが、襲撃を受けたせいで、記憶がおかしくなっているのかもしれない。




