帰郷32
「無理です!!自分は機械科出身なんですよ⁉外に出たら一日と持たずに死んじゃいます!!」
目に涙を浮かべながら、自分は軍学校では兵士としての適性は無く、機械科に移って学問に精を出し、卒業してからは、設計や整備等の担当で生計を立てている事を訴えるが、
「探索する周辺は兵士で固められている。君に担当して貰う人達はVIPでな、何かあれば最優先で助けが入る」
「そんな事を言われても……」
「あれの開発設計に携わっているのだから……メカマンは必要だろ?」
聞き耳を持って貰えず「行け」という命令で、行かざるを得なかった。
「すみません……自分達の為に……」
「うっ…うぅ……大丈夫ですぅぅよぉぉ」
喉を絞るかのようにして「大丈夫」だと言葉絞り出す彼女、まるでフルーツを絞るかのようで……「大丈夫」という甘い汁を絞り出した彼女は、カスカスの身のように抜け殻になってしまっている。
「わ…私だって軍学校を卒業してるんですぅぅぅ……シュライトにお任せ下さい……!!!!戦う事も出来ます……から……」
彼女なりに辛気臭くならないように気丈に振舞っているが、やはり、外の世界には行きたくないらしく、声が震えてしまっている。
「シュライトさんは、準都市育ちスか?」
「準都市育ちでも地上生まれですよぉぉぉ安心して……」
「心配無いッス……前線基地で育ったスけど、自分は今も生きてるッスよ」
「えっ……鳥かご育ちじゃ?」
「リディさんが、助けてくれたお陰ッス。生まれは最前線の基地だったんス」
「…………」
前線基地……死に最も近い防波堤……そこで生き延びるというのは絶望的な話であるが、それでも生き延びて、今もこの世界にいる。
「今回、地上に降りる事は基地のみんなも知ってるッス……担当する場所があるにしても、近くに行けば助けて貰えるッス」
「凄いです……」
不安で震えていた自分を鼓舞する少女……本当なら、年上の自分こそが子供達を安心させないといけないのに……
「私に出来る事は……」
自分が兵士になれなかったのは、適性が無かったから……それは逆立ちしても変えられない過去、もう下されてしまった結果……だけど、そこで諦めた訳じゃない……その後に進んだ自分の道は……
「整備は任せて……この大型トレーラーもパワージャケットも、何でも扱ってみせます!!!!」




