帰郷25
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「みんな降りて行くね」
「随分と人が乗っていたからスからね」
窓から外を覗くと、物は数だと言わんばかりに雑兵としての兵士達が、隊列を組んで基地へと向かって行く。
「あぁやって列に並ぶと、自分が何の為にいるのか分からなくなるんだ……与えられた任務をしているだけと思えるなら、それの方が楽だけどな」
蟻の列の様に前に付いて進む姿は、プログラミングされているかのようで、そこに人の意思があるのか甚だ疑問に感じてしまう。
「火内の知り合いだから、アタシ達は本当の事を知っているけど。基地に向かっている兵士達は、火内がお偉いさんの息子だから緊急の探索隊を出すという話で通ってる」
もちろんそんなのは噓八百で、もし火内が普通の人間なら探索隊など出されずに事は終わっている。
火内がドラゴンになれるという話は伏せられて、上の親バカで駆り出されていると兵士達は思っている。
彼等が真実を知った所で、やらされる事は変わらないが、騙されているというのは、自分達の存在価値というのが「その程度」と言われているのと同じような物であった。
「でも大丈夫なのですか……彼等だって、何かあったら襲われるんじゃないんですか?」
「心配しなくて大丈夫だ。彼等はあくまでも探索隊で、周辺の警戒は蛇の道を行く者達がしてくれている」
大型のリュックサックに入り込んでいる凜が、首を出して「ひょっこり」としている。
兵士達が、このフライホエールシャークから降りれば、自分達は別口で呼ばれるので、いつでも出れるように準備をしているという訳である。
「凜ちゃんは、何があってもアタシが守るから大丈夫だよ」
「……よろしくお願いします」
凜がリュックサックの中に隠れて、口を閉めた所で、
『コンコン……』
「リディ様、皆様方、お車の準備が出来ましたので格納庫の方へお願い致します」
「分かりました。それじゃみんな行くぞ」
「「「はい!!!!」」」
ドア越しに掛けられた声を皮切りに、全員が窓から離れて個室から出て行くのであった。




