帰郷18
目を叩く美優に、凜が『ギョッ』と驚きながらも、真正面から目線を合わせる。
「それって……義眼なんですか?」
「おぅよ、パワードスーツと連携する事も出来る優れ物さ」
見ただけでは義眼だと分からない程に、精巧な作りをしているそれは、リディが精魂と謝罪の気持ちを込めて作った物で、顔を近付けて『マジマジ』と見なければ義眼と言うのには気付けない。
「でもよ、勘違いしないでくれよな。母さんはアタシとミィオを担いで走ってくれたんだけどな、運悪く七節が伸ばした腕が、アタシだけに刺さったんだ」
「……痛くなかったんですか?」
「痛くは無かった……一瞬で意識が消えたからな……それに昔の事だから気にしなくて良いぞ……っと、アタシの事が聞きたきゃ後でだ、今はリディさんの話だ」
何と声を掛けたら良いのか分からないという、凜のとりとめのない無い言葉をしっかりと拾ってから、リディに会話の流れを返す。
「そうだな……アタシが創った七節には繫殖能力は与えていない。勝手に繁殖されて、自分の手に負えない状況にならないようにする為の、セーフティーを掛ける意味もあったからな」
「だったら、フアニに行っても七節はいないって事ですか?」
「もう一つのセーフティーに、半年程度で死ぬように細工は仕掛けてあった……が、命ってのは自分が思っている以上にしぶとい。外に逃げ出せた個体もいるかもしれない……」
「油断はするなという事ですね」
「それもそうなんだがな……」
「あのリディさん……ちょっと良いですか?」
「……何かに気付いたかリナ?」
ちょっと蚊帳の外になっていたリナであるが、それは話に付いていけなかったからではなく、リナの中でちょっとシミュレーションをしていたからであった。
リディとミィオが説明してくれた、鉄の棒のような体を持つ七節。
攻撃方法は銛で突くような鋭い突き……だけで、一度に大量に移送が出来るという利点は理解出来たが……
「アタシが本気を出したら、七節は壊滅出来ると思います」
リナにとっては、その七節はそんなに恐ろしい敵には思えなかった。




