帰郷14
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『これより地上へ向かいます。搭乗員は所定の位置に座り……』
「良く個室なんて取れましたね」
「向こうから用意してくれたんだ。私達は余程期待されているという事かな」
大型輸送機のフライマンタを超える、超ド級航空機フライホエールシャーク。
フライマンタは数十機存在するが、フライホエールシャークは一つの鳥かごに対して、一機しか存在しない。
そんな士官以上が使える個室の中で、リディ達は全員一緒で席に付いている。
「大丈夫、凛ちゃん?」
「はい、リナさんが担いでくれてたお陰で」
凜が小さいお陰で、少し大きめのリュックに入って貰い、そのまま担いで個室まで連れて来ていた。
「さすがに、アタシやリナの所の子供として登録する事は出来ないし、変に存在を記録したら足が付くだろうしな……だから、火内は自分だけの分を登録してたんだろな……万が一の時は、自分の所で捜査の手が止まるように」
「…………」
実際、リディは凛の事に気付いていなかった。
火内の家族関係は洗いざらい調べていはいたが、リディと接触をした時点で、凜を核露の部屋に匿って貰い、火内はあたかも最初から一人でいたかのように振る舞っていた。
リディに隠れて凜に会えるのかというと、友人の核露の部屋に行けば、凜に会えるので疑われる理由も無く。
凜が外を出歩いていたとしても、それが火内と関係があるというのは分かるものでは無いし、その子が違法移民等というのは、見ただけで判断が付くものでは無い。
「凄い奴だよ……」
火内を死なせてしまった事に負い目を感じる……凜には、自分が火内に軍学校の斡旋をする約束をしていた事を伝えると、
「あなたの事は聞いていませんでしたが、話は聞いていました……この場で、あなたに聞いても仕方ありませんが……火内が死んだのは、あなたのせいなんですか?」
それは聞かれて当然の事……自分の不注意で火内を死なせた……それが真実である以上、凛には自分が火内を死なせた犯人だと伝えたのだが、
「やめて下さい……あたしと核露さんは、火内が死なないといけなかった理由を求めているんです……下手な罪悪感で犯人になられても困ります」
それも当然の話であった。
「地上に降りたら、凛にはしばらくリュックに入って貰う事になる。今のうちにゆっくり休んでいてくれ」
「はい」
リディと凛が、初めて出会った時のような警戒心は無いが、それでも、ぎこちないのには変わりはない。




