帰郷13
「でも……それなら、あの子の親が……」
「あの子の口ぶりを聞いた感じだと、村の襲撃の後は、火内と一緒に生きていたような口ぶりだったろ」
「そうですね……」
「だから気を付けろ……本人は分かっていないみたいだが、矛盾しているという話で解決出来ない、何かがあの子にはある」
この話はリディだから気付いたという話ではない、時間を置いて、少し考えれば誰でも気付く話。
だから、誰かが自分達を嵌めようとしているのなら、そんな簡単な事を帳尻合わせもしないで、自分達の所に送って来るとは思えない。
「訳の分からない子だよ……」
それを言ったら、火内も不思議な少年であったが、リディの中では何故か、火内と違って凜に対しては口では説明し難い「何か」を感じて……
「分かりました。あの子に対しては気を付けますが……リディさん、心のイライラをあの子にぶつけたら可哀想ですよ」
「心のイライラ?」
「心のイライラです」
「……イライラしている様に見えるのかい?」
「はい」
「そうか……それで、アタシがイライラしている理由は……いや、自分でも分かっている事か……」
自分の内心で、何とも言えない不快感があるのは間違いないのだが、それを美優に見抜かれてしまった事で、少しだけ肩の力が抜けた。
自分の中で感じていたイライラを、得体の知れない凜にぶつけていた……その理由は、
「……里帰りをします」
「行かないとダメか……」
美優にとっての里帰り……それは、リディにとっては罪を正面から見据えるという事……凜が言っていた「何か」を創った張本人はリディなのだから。




