帰郷12
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「あの子の事、どう思う?」
「凜ですか……火内の義妹なら保護はするべきかと」
車を運転するリディの隣で、凜の事を考える。
これから地上に降りるという時に、随分な件を持ち出して来られたと思いつつも、無碍には出来ないというのが美優の考えであったが、
「何かあったら、あの子を殺せ……」
「いきなり穏やかじゃないですね……何か気になる事が?」
リディの考えは、かなり過激であった。
「……あの子の話を信じるなら、フアニの襲撃事件の時というのは間違いないと思う」
「そうですよね。村住みで、鳥かごに来られるチャンスがあるのは、あの時だとは思います」
凜が言った事は間違いない……美優とミィオがすぐにでも、鳥かごに来れたのはリディが無理矢理に連れて来たからであって、伝手が無い者達は、どこに割り振るか「何か」の処理の片手間に行われた為に、日数が掛かっている。
その間に、あの子達が鳥かごに入り込める余地は十分にある。
説明だけ聞けば、あの子が言っている事は間違っていないのだが、
「……警戒しているのは、台本通りに言っているって事ですか?」
あまりにも正し過ぎて、それが気に喰わないという事なのかもしれない。
これから地上に降りるからスパイを送って来た……そういう考え方が自然と出てくるが、
「でも、凜を預けたのは火内って話ですし、もしもスパイなら最初から、火内に監視を付けていた事になりますよね?それだと話が、おかしくなりませんか?」
自然と出てくる話は不自然であった。
火内を探す為のスパイを送るなら、そんな事をせずとも最初から、火内を保護してしまえば良いだけの話。
しかも時系列も滅茶苦茶で、火内がいなくなってから凜を用意したのなら、火内からリナに紹介するという話に矛盾が生じてしまう。
「……アタシが気にしているのは、そこじゃないんだ美優」
「他に気なる事があるんですか?」
リディは、ハンドルを握り締める手に少しだけ力を込めると、
「あの子は何歳に見えた?」
「年?年ですか……8から10歳位ですかね?」
「フアニの襲撃事件があった時の、お前の年齢は幾つだった?」
「8歳で……す……」
ここで美優も、凜のおかしな事に気付く。
美優の年齢は現在16歳で、フアニの襲撃は八年前に遡るのだが、八年も遡ったら、あの子は生まれていないか、赤ん坊の可能性が高い。




