逃げるは勝ちだし役に立つ!
「取り敢えず逃げるぞ!」
廊下の窓をぶち破って外へと逃げ出していく。
それを追いかけるおよそ百二十体にも及ぶ人間達。
幸いあの人間達はあまり頭が良くないようで窓を越えるのに手こずっている。動きもゾンビみたいで気持ち悪い。
「とにかくどこか身を隠せる場所に行かないと」
なぜ身を隠す必要があるんだ。そう問おうとした時ちょうど放送を知らせる音が鳴った。
「ピンポンパンポーンこちら鬼側の造花ちゃんでーす。ほんとはもうすこーしルール説明をしたいところだったのですが、お二人が逃げてしまったのでもう少しルール説明しますねー」
ルールはまだあったらしい。残りのルールでこっちが有利になるような物があるのを願いたい。
「まずこの鬼ごっこの範囲はこの町全体。もし範囲から出た場合は、貴方達二人を即座に負けとみなします。つまり死ぬということですね。どうやって殺すかについては企業秘密なのでお教え出来ません。すみませんね。そしてもう一つ大事な大事なルールがあります。十分経つごとに三分だけ休憩を差し上げましょう。私は優しいのです。ではでは今度こそ鬼ごっこスタート!」
一個だけ優しいルールがあった。それにちょっと安心する。だって十分逃げれば三分間休憩なんて結構余裕なんじゃないか?
数分後
嘘嘘嘘、全然無理だった。結構やばい。脇腹痛いしゲロ吐きそう
十分逃げるのが余裕だと思っていた私は結構早く痛い目を見ていた。それもそうだ帰宅部だし運動なんて全くしてこなかったんだから長時間走れる訳がない。というか今の今まで走れたことが奇跡だ。
「まだ走れそう?というか走ってもらわないと困るんだけど!」
「もう、ちょっと、だけ、、なら、頑張、れる」
「もうダメそうな感じしかしないんだけど!?ええい!分かった一旦人間どもかブッ飛ばすからそのうちに近くの家から自転車盗んできて!」
そう言うと青くんは傘を逆さ傘にしてレーザービームのように触手を伸ばした。ちなみにあんまりカッコ良くない。
私は取り敢えず一番近くにあった家に入る。幸い自転車はあったようだ。鍵も付いたままみたいだ。不用心だが今はそれに感謝しよう。
「早く乗って!」
「よし、ナイス!」
青くんが触手をしまい自転車に飛び乗ってくるのを確認した私は全力で自転車を漕ぎ始めた。
「自転車だと結構距離作れたね」
「そうだね、あの人間達、いや今は鬼達か。あいつらは操られていると言っても人間を超えるスピードは出せないんだと思う。そんな無理させたら体が壊れて使い物になんなくなるしね」
「ちなみに今何分?」
私は九分くらいと予想している
「五分、いや六分かな。造花の放送を聞いてから時間を測り始めたから少し誤差はあると思う。ちなみに君は三分でバテてたよ」
三分しか体力が持たないなんて今まで運動してこなかったことを猛烈に後悔してしまう。
「それでこれからどうするの?何か作戦とかある?」
「んー取り敢えず自転車で逃げるのは容易になったから色々検証しないとだね」
「色々ってルールのこと?」
「そう。ルールをもっと詳細に知れれば造花を倒す方法も見つかるかもしれない。というか見つからないと結構まずい」
「ってことは今は取り敢えず逃げ続けるってことでいい?今言うのも申し訳ないんだけどさ。十分経ったら交代してくれない?」
「それは無理だね。僕は鬼達を迎撃したりルールを理解するので忙しいから君がずっと漕いでて。あ、休憩時間は漕がなくていいよ」
結構鬼畜だ。でも漕ぐだけなら頑張ればいける。
「あと、鬼からは近づ離れずの距離感でお願い。鬼達は一直線に追いかけることしかできないみたいだから待ち伏せとかは気をつけなくていいよ。あとついでに学校から離れすぎないようにしてね」
、、、結構注文が多いな。
ここから三十分間全く変化はなく三回目の休憩に入ろうとしていた。
「水飲む?」
「ありがとう。いや、ちょっと待って今その水どこから出したの?」
私は見た。青くんは傘に手を突っ込んで、比喩じゃなくて直喩だ。そう手を突っ込んでそこからなんかヌメヌメしたペットボトルを拭いて私に渡して来たのを。
「ん?それは内緒だよー」
「、、、自販機で買って来ます」
私たちは自転車で学校の周りをグルグル回った。青くんが言った通りに鬼達はまっすぐ追いかけてくるしか脳がないみたいでこのままなら一生逃げ切れそうだ。
「ピンポンパンポーンこちら造花ちゃんです。なんかテスト期間で頑張って覚えた内容ってテストが終わったらすぐ忘れちゃいますよねー。まぁそんなことより三十分間の逃走おめでとうございまーす。私的には十五分くらいで勝ってた予定なんですけどまさかここまで逃げ切るとは流石ですねー。うんうん素晴らしい」
「世間話なら後でいつでも付き合うよ。要件はなんなの?」
「いや聞こえてるわけないでしょ。馬鹿?」




