命を安く見ている奴は、絶対に許さねぇ
ぁぁああ、魔力の消費が酷すぎる。
仕方がないだろうけど……。
時空を歪めてワープしたのだから、魔力が吸い取られるのは当然か。
地面に足をつけ、上を見ると、捕らわれたままの二人と目が合った。
「グレール」
「わかりましたよ」
言いながら地面を蹴り、アルカ達へと飛ぶ。
フェアズが「させない」と、蔓を操作するが俺がflameで燃やし阻止した。
そのまま二人をつるし上げている蔓を切り、二人は自由の身となった。
グレールがリヒトを抱え、アルカは自分で着地。俺の方へと駆け寄ってきた。
「元気そうでなによりだが、怪我はないか?」
フェアズを警戒しながら二人に聞くと、小さく頷いた。
直後、二人はさっきまで泣きそうになっていたのが嘘のように凛々しい顔になり、それぞれの武器を構えフェアズを見上げた。
よし、こっちは戦闘態勢が整ったか。
それは良かったけど、アマリアとフェアズの空気が険悪な感じがするな。仲間割れか?
「なんか、タイミング最悪な感じだけど、いいわ。俺は今、怒ってる。鬱憤を晴らさせてもらう」
魔導書を開き見上げると、フェアズと目が合った。
「……何よ、何をそこまで怒っているの。私、聞いたわよ。貴方、お金にしか興味が無いのでしょう? 報酬がもらえないと動かないのでしょう? なぜそこまで、感情的になるの?」
あー、なるほど。
「それ、こいつらから聞いたんだろう」
気まずそうに俺から視線を逸らしている二人を差しながら聞くと、フェアズは素直に頷いた。
やっぱりな、そうだろうと思ったわ。
「確かに、俺は報酬が無ければ無駄なことはしたくないし、モンスター退治といった、命を賭けなければならないことは絶対にしたくない」
「なら──!」
「だがな、勘違いしてんじゃねぇよ。金があったところで、失った命は戻らない。金があったところで、人の絆は生まれない」
俺の言葉に、フェアズは目を丸くしている。
「おめぇは、金と命を天秤にかけたんだよ。俺から、仲間を奪おうとしたんだ。絶対に許さない。 |turbo flame」
右手を前に出し唱えると、フェアズの四方から炎の竜巻が出現し、轟音が響き渡る。
赤い光に囲まれ、フェアズは慌てたようにその場から逃げようと宙を舞うが、俺が逃がすと思うか?
「逃がすかよ、炎によりチリとなれ!」
炎を操り、逃げるフェアズを追いかける。
ちっ、上手く掻い潜っているみたいだな、うまく捕まえられない。
「逃げられますね。偉そうに担架切っていたのに」
「口に出すの良くない、俺が一番恥ずかしいから」
「私も動きますね。アルカ様、動けますか?」
グレールが氷の剣を握り直しながら、アルカへと問いかけた。
最初はきょとんとしていたアルカだったが、すぐに笑顔で「おう!!」と、元気に返事をした。
何故、笑顔を浮かべられるんだ?
「リヒト様も、動けますか?」
「は、はい!!」
こっちも気合十分みたいだな。
ここから本気で捕まえっ――……
「っ、アマリア…………」
上から、アマリアがローブを揺らしながら降りてきた。
地面に足を付けると、俺を見上げて来る。
子供じゃない、だと??
いや、俺よりは身長小さいからいつも通り見上げてはきているけど、アルカよりはでかいな。170くらいか?
「…………身勝手だとは思う。でも、お願いだ。フェアズを殺さないでほしい」
「は? なんだそれ。本当に身勝手だな。俺はアルカとリヒトが殺されそうになっていたんだぞ。そんな俺に、お前は仲間を殺すなというのか?」
今迄、アマリアには多少なりとも世話にはなった。
けど、それとこれとでは話は別だ。さすがに、すぐは頷けねぇよ。
「確かに、その通りだよ。本当に酷い話だと思う。それでも、僕はフェアズがまだ好きだから、助けたいんだ。でも、知里にも酷いことはしたくない」
アマリアが悲しそうに顔を俯かせ、目を伏せる。
くそ、めんどくせぇな。つーか、そんなこと俺に言われても困るっつーの。
結局のところ、フェアズが考えを改めない限り、殺さないという選択肢はない。
じゃなければこっちがやられる。
だが、アマリアも本気で言っているみたいだし……。
どうすればいいんだよ……。
「チサト様!!」
「っ!!」
くそ、集中が切れたせいで、フェアズに魔法をかき消された。
「舐めるんじゃないわよ、鏡谷知里!! restraint!!」
っ、至る所から蔓が伸びて来た。
体を捻り避けると、すぐに軌道を変えて迫ってくる。
「flame!!」
とりあえず周りの蔓を燃やっ――――燃やせない!?
「やっべ!!」
捕まる!!
――――――――ザシュッ!
「あっ、アルカ、ありがとう」
「カガミヤはアマリア様の話を聞いてくれ!! 俺が蔓を斬るから!!」
「お、おう」
そのままアルカは駆けだした。
「私も行きますね。どうするか決まり次第、教えてください」
言いながらグレールも走り出した。
次々と蔓を斬っていく二人。でも、時間はないみたいだ。
アマリアの話を聞けって言っても、殺すな、だろ?
知ってるか? 戦闘で一番難しいのって、格上を捕まえることだぞ。
殺すより難しいのわかってんのか!?
「カガミヤさん。アマリア様のお願い、聞いてはいただけませんか?」
「はぁ? リヒト、お前……。さすがにお人好しがここまでくると、それはただの馬鹿だぞ」
リヒトが後ろから控えめにそんなことを言ってきた。
流石に頭を疑うぞ?? お前、殺されかけたんだよな??
「お前らは殺されかけていたんだよな? アマリア達に。なら、何故こいつの願いを聞こうと思うんだ」
「私達が死ななかったのは、アマリア様のおかげなんです。アマリア様がフェアズ様を止めてくださっていなければ、私達は死んでいました」
リヒトの言葉がいまいち信用できない。
だって、二人を助けたところでアマリアにメリットなんてないだろう。
でも、リヒトはこういう嘘は絶対に言わない。
というか、嘘を言えないことはもうわかっている。
けど、なぁ…………。
「…………はぁ、わかったよ。俺も、出来ることなら殺しはしたくないからな」
「それでいいんだろう?」とアマリアを見ると、驚いたように目を開く。
けど、すぐに「ありがとう」と笑った。
めんどくせっ!!!!
「つーか、お前がフェアズを助けたいと言ったんだから、協力してくれるんだよなぁ? 管理者である、アマリア様?」
「当たり前だよ。僕に出来ることはサポート位だけど、協力する。フェアズを、昔の優しくて、温かい頃に戻してあげたいんだ」
「わぁーったよ。まったく、本当にめんどくせぇな」
頭をガシガシと掻きながら見上げ、魔力を右手に込める。
すると、何故かフェアズと目が合った。
俺の隣にいるアマリアに気づいたのか、苛立たしく舌打ちを零す。
「アマリア、貴方、やっぱり寝返ったのね。そんな気はしていたわ」
「違うよ、フェアズ。僕は寝返ったわけじゃない。君を助けたいんだ。今の君は、力に捕らわれている、ただの化け物。心も人でなくなってしまった。そんな君を救うため、知里にお願いをしていただけだよ」
「何ですって? 私を救う? 馬鹿なことを言わないでちょうだいよ!!」
鞭を振り下げると、地面が大きく揺れ始めた。
なんだこれ!?
駆け回っていたグレールとアルカも立ち止まり、膝をつく。
俺も立っていられず片手を地面についてしまった。
瞬間、アマリアが慌てたように叫んだ。
「魔法を出す準備をして!」
その声と共に、フェアズが魔法を発動した。
「restraint」
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