本当の想い
「黙れ!! 私はもう、弱かった頃の私には戻らない! そんなことを言うあんたなんていらない。邪魔をするなら、貴方も殺すわ!」
「管理者同士の戦闘は固く禁ずる、だよ」
「管理者の立場を脅かそうとする人物を排除する私の邪魔をしている貴方も、違反者になるわ。私は悪くない!!」
「……話にならないね」
肩を落とし、ため息を吐くアマリア。
その様子を見ながら、アルカが小さな声で問いかけた。
「なんで、俺たちを助けてくれるんだ?」
「君たちを助けるつもりはないよ。結果的に、命を奪われていないだけだ」
アマリアは淡々と答える。
「過去を繰り返したくない。フェアズを守りたい。それしか僕は、考えていないよ」
「繰り返したくない?」
「それについては、今話すことじゃない」
そう言ってアマリアは、軽く肩をすくめた。
「それにしても、まさかここまで時間が経っているのに来ないとは思わなかったよ。もしかして本当に、君たちは見捨てられたのかな」
肩越しに言われた言葉に、アルカとリヒトは悲しそうに眉を下げた。
二人は、自分たちに価値がないと思っている。
だから知里が助けに来ないことにも、怒りはない。
ただ――自分が弱いから悪いのだと、そう思っていた。
そんな二人から視線を外し、アマリアはぽつりと呟く。
「知里は、君たちが思っているような薄情者じゃないと思うよ」
「「え?」」
二人が聞き返そうとした瞬間――フェアズが動いた。
「何を話しているのか知らないけれど、今さら何を企んだところで意味はないわよ」
鞭を構える。
「アマリア。貴方も私の邪魔をするのなら容赦しないわ。今ここで、私の強さにひれ伏しなさい! |herbes fouet!」
魔法を唱えた瞬間、フェアズの手に握られていた鞭が生き物のように蠢いた。
「おっと。そうだわ。でもまずは、約束を守らないといけないわね」
鞭を引くような動きを見せる。
すると――
アルカたちを縛っていた木の蔓が動き出した。
「っ!」
叫び声にアマリアが振り向く。
見ると、両手両足だけではなく、体全体を覆うほどの蔓が伸びていた。
二人は完全に拘束され、身動きが取れない。
「まさか……絞め殺すつもり?」
「痛みは感じさせないって言ったはずよ」
アルカたちの周囲を、刃のように鋭い蔓が蠢く。
きらりと光り、普通の蔓ではないことは明らかだった。
アルカもリヒトも、もう何も出来ない。
涙を流し、諦める。
「──っ……ちっ」
「邪魔はさせないわよ、アマリア」
アマリアが右手をアルカたちへ向けようとした瞬間、フェアズの鞭が伸び、アマリアの腕を拘束した。
さらに動きを牽制するように、同じ刃の蔓を突きつける。
「怖いとは思うけれど、それだけよ。私の言葉を信じて。痛みはないわ……ふふっ」
下唇を舐めながら、恐怖に染まった二人の顔を楽しむように刃を操る。
「ばいばい」
ゆっくりと振り上げられる刃。
そして――
一気に振り下ろされた。
「やめろぉ!!」
・
・
・
・
・
――ザシュッ!! ザシュッ!!
その瞬間。
アマリアの焦った声と共に、アルカたちの目の前にブラックホールのような空間が現れる。
そこから誰かが風のような速さで飛び出した。
周囲を囲っていた蔓が、次々と切り裂かれていく。
「なっ!? 誰!?」
木々を蹴り、空中を駆ける影。
蔓は次々と切り落とされ、地面に落ちていく。
すべてを切り終えると、その青年は地面へと降り立った。
「……っ、間に合ったみたいですね。良かったです」
フェアズを見上げる青年。
水色の髪を揺らしながら、氷の刀を下ろし、汗を拭った。
「グ、グレールさん!?」
吊るされたままのアルカは、理解が追いつかないまま下を見る。
そこに立っていたのは、ロゼ姫の執事、グレールだった。
「あら。もしかして、鏡谷知里が動かなかったから貴方が来たのかしら?」
フェアズが笑う。
「こんなことに巻き込まれるなんて思ってもいなかったでしょう。哀れね」
「何を言っているのか分かりませんが」
グレールは静かに言った。
「来たのは、私だけではありません。勘違いしないでください」
「なんですって?」
フェアズが困惑する。
その瞬間――
彼女の背後が切り裂かれる。
空間が開き、ブラックホールのような異空間が現れた。
「っ!? 何が――!?」
フェアズはすぐ距離を取る。
突如現れた空間を睨みつける。
アルカたちも同じように見つめる。
そして――
そこから現れた人物を見て、言葉を失った。
「どっこいしょ……うわぁ、魔力が……」
『大丈夫ですか!? ご主人様!』
『ふん。この程度でへばるなんて。しっかりしなさい。それでも私のご主人様なのかしら』
気だるそうな聞き覚えのある声。
そして、二つの高い声。
リヒトは涙を流しながら、その人物の名を呼んだ。
「カ、カガミヤさん……」
ブラックホールのような空間から現れたのは――
めんどくさそうに眉間に皺を寄せ、頭をガシガシとかいている知里。
そして、その肩に浮かぶ二人の精霊だった。
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