今はとりあえず役立たずって事な
俺達は情報を貰う為、グランド国にあるギルドに向かった。
「あ、こんにちわ!! また来てくださったのですね!」
「あぁ、今回は一回目に話していた依頼を遂行するために来た」
「ですが、貴方達は今、護衛任務を遂行中のはず。規定で他の依頼は受けることできませんよ?」
それはもう仕方がない。
情報だけもらえればそれで構わん。
それを伝えようとしたら、ヒュース皇子が前に出た。
「それに関しては話が変わった。護衛任務は取り消し、新たに依頼を発注する」
「ヒ、ヒュース皇子が言うのでしたら…………」
目を伏せ、パソコンを操作し始めた。
俺達が受けていた護衛任務を取り消し、新たにモンスター討伐の依頼を受けられた――――のか?
いざとなれば名前を出そうとは思っていたが、まさかこんなあっさりと任務を切り替えられるなんてな。助かった。
「よしよし、これでSSランクの攻略報酬を貰えるのか、嬉しいなぁ」
「…………今までも同じ言葉を耳にしたのですが、誰一人として攻略できず逃げ帰っているんですよねぇ」
いや、ちょっと、受付嬢さん?
あの、嫌な言葉を呟かないでよ、一気に不安になったわ。
俺、フラグを建築してしまった?
「ま、まぁ、そん時はそん時だ。俺達が出来るのはそのモンスターを殺すのみ。他にやりようがない。一番手っ取り速いから、早く情報を渡せ」
「かしこまりました。もう少し、お待ちください」
またパソコンを触り始めた受付嬢。
手慣れたタイピングですぐに目的の情報を出し、印刷。俺達に渡してくれた。
「こちらになります」
渡された資料を見てみると、小さな文字が沢山……。詳細に書かれ過ぎてて、目が痛い。
「えぇっと……?」
モンスターの性質や技、属性や弱点など。そんなことまで書かれてる。
これは結構、いい線まで行ける気がするんだが、逆に不安になるな。
なぜ、今までの冒険者は攻略出来てないんだ?
「他に何か必要な物はございますか?」
「必ず勝てると言い切れる何か」
「…………何かとは」
「武器でも技でもなんでも」
「ありません…………」
知ってるわ、そんな本気で可哀想な人を見る目で俺を見るな、はっ倒すぞ。
※
資料を片手に部屋に戻った。
ベットに横になりながらもらった資料を何度も読み返すが、ラムウの方が厄介な気がするぞ。
今回のモンスターの名前は、ショス。
アメーバのような見た目をし、歪に作られた口から毒を吐き出す。その毒が感染症の可能性が高い。
形は伸縮自在、姿形を変えられる。
刃や鋭い爪も生成可能。物理で攻撃しても体が柔らかすぎるため衝撃を吸収されてしまう。
弱点属性は、炎。体を溶かし尽くせば勝てる可能性がある。
簡単にまとめるとこんな感じか。
見た目が変化できるモンスターだからか、見た目や武器の説明はバラバラ。だが、出会った時は大抵アメーバのような姿が多いと書いてある。
体が柔らかくて物理攻撃は不可能。今回アルカは囮に使うのがよさそうだな。リヒトは拘束重視で。
炎が弱点はこっちとしてはラッキーだ。
俺の属性が炎だからな。スピリトも炎だし、今回は頑張ってもらうか。
そういえば、リンクは一体何が出来るのか。予め確認しておいた方がいいだろうな。
素直に答えてくれるかわからんが。
「出てこい、リンク」
『こんな時に私をお呼びになるなんてね。用事は何かしら」
髪を触りながら聞いて来るのがなんとなく腹が立つが、そんなところにまで付き合っていたら話が進まんから、今回は俺が大人の対応をしてやるよ。
「お前の出来る事を詳しく教えろ」
『私はなんでもできますわよ? やろうと思えばなんでも出来るの。なんていったって、私は《《無属性》》なのだから!!!』
無属性? 属性がないのか?
高笑いしているところ申し訳ないが、まったく理解出来ないぞ。
『ちょっと、何か反応はないんですの?』
「反応したかったんだが、さすがに無理だったわ。理解が出来なくて」
『理解? どこが理解できなかったのかしら』
どこがと言われても、全部なんだが?
リンクと話していると、ヒュース皇子が俺の隣に座った。何でいきなり俺の隣に座るんだ?
「君は先程、自分を無属性と言っていたな。つまり、自分で属性を選択できるという事か?」
『そうよ!! 私はその場で好きな属性魔法を扱えるわ! 基本属性である、炎、水、雷、地、草などは当たり前。他の属性も使おうと思えば使えるの!! 私は本当にすごいのよ!! もっと私を誉めなさい!!』
『オーホッホッホッホ!!』と、高笑いしている声が耳障りだが、まぁいい。
ヒュース皇子は何か考えてるな。
リンクの頭のできとか考えてんかな、それなら成績最下位レベルで馬鹿だぞ、絶対。
「属性がないのは魅力的だが、そんな精霊がいるなんて今まで聞いたことがないぞ」
「お前でも聞いたことがないのか?」
「あぁ、属性なしで何もできないなどは聞いたことがあるが、逆になんでもできるは聞いたことがない。無属性として現れたものは確かに希少価値があるが、それは自分で属性を選べるというだけの特典だ。他に魔力が上がったり、特別な魔法が使えるようになるわけではない」
ヒュース皇子が説明している時、何故かリンクの肩が震えた。
なぜか冷や汗も流している。
…………なるほど、何となくわかったわ。
精霊と言えど、反応は人間と同じで助かった。
「リンク、お前。まだ自分で属性を選んでいないんだな?」
『……………………そ、そうよ。だったらなに? 私は生まれたばかりなのだから仕方がないじゃないのよ。決まっていないのなら、逆になんにでもなれるという事じゃない。私は間違えてないわ!!』
腕を組んで鼻を鳴らされてもなぁ。
「無属性は、最初だけが特別仕様。なら、一度属性を決めてしまえば変更はできないのか?」
「私はそう解釈している。だが、この世界には私が知らないものが沢山。もしかしたら、また新たな情報が出てきている可能性も視野に入れてくれ」
「そんなもんわかっとるわ。今の段階では属性を変えられない、それでいいんだな?」
「あぁ、そうだ」
なるほどな。それは結構美味しいが、逆に属性を決めなければこいつはただのうざい奴で終わるのでは?
属性が決まるまでの間は、色んな属性魔法がお試しで使い放題とか? それならめっちゃいいんだが…………。
「なぁ、リンク。今のお前は何か魔法を出せるのか?」
『出す事は可能よ。でも、今出したその属性が私の属性になるわ』
試し打ちが出来ないって解釈でよさそうだな。
つまり、こいつはただの役立たずという事か、本当にはずれを引いた気分。
「…………ひとまず、俺が何かの基本魔法を使ってというまでお前は待機な」
『え、なんで!? 私も戦えるわ、待機なんて出来る訳ないじゃない』
「お前の主である俺が待機を命じている。逆らう気か?」
俺を睨んでも駄目だ。今は安易に決められない。
アルカとリヒト、俺の属性のバランスや、今後の展開。すべてを考え、後悔しない選択をする。
これは間違える訳にはいかないから、少し緊張するな。
「今回はスピリトを軸に、作戦を立てる。炎が弱いのなら、俺がメインで動くしかない。お前らは援護を頼む」
アルカ達は小さく頷いてくれた。
よし、今だ喚いているリンクを黙らせ、資料をヒュース皇子達に見せながら、作戦会議だ。
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