因縁がありそうな二人の会話が気になりすぎて仕方がない
なんか、魔法が聞こえた。
瞬間、acquaが渦を巻き、しばらくすると霧散し、消えた。
「な、何だ??」
困惑していると、アルカが上を指さした。
「なぁ、あれ。エトワールじゃないか?」
アクアの近くを見ると、大きな黒い魔女の帽子を被り、黒色のグラデーションのツインテールを揺らしている女が、笑いながらアクアの後ろに待機していた。
「はぁ~~~い、呼ばれてないけどこんにちは~! ここでの救世主、エトワールちゃんだよぉ~」
「きもっ、うざっ、おそっ」
「そのげんなりした顔は、私にとってはご褒美ですよ~」
アクアの手を後ろで拘束しながら、俺達の元に降りてきた。
その光景に、上にいたウズルイフがつまらなそうにふてくされている。
「つまんねぇ」
「ちょっと」
「まぁ、いいや。俺の目的は、違うしな」
ウインクをしているウズルイフが気持ち悪い。
じゃないや。
目的がアクアを利用することじゃない?
そもそも、アクアをどうやって利用したのかもわからないし。
どうなってんだ??
「これこれ。落ちていたから拾ったんだよなぁ~」
言いながらウズルイフが懐から出したのは、一つの魔石。
まさか、あれは双子がまき散らした魔石の一つか?
「どこで拾ったの?」
「この学校でだぞ~」
「それで、その魔石でアクアを操ったの?」
「そういうこと♪」
拾った魔石で、アクアを?
そんなこと、普通ありえるか??
だって、もう使用した後の魔石なんじゃないのか?
不発したってこと?
「まぁ、これは別に遊びで使っただけだし、俺の魔力はもう少ないからいらね」
言うと、ウズルイフが魔石を落した。
地面にぶつかると、ガシャンと音を鳴らし、魔石は粉々に砕けた。
「さぁてと、帰るかなぁ~」
「待って、ただで帰すわけないでしょ」
「へぇ~? でも、どうする訳?? お前の魔力――というか、下の奴の魔力、もうないだろ?? どうするつもりだ?」
ウズルイフに図星を突かれた。
俺も魔力がもうない、アルカもないだろう。
ソフィアは――――どうだろう。正直、わからない。
戦えるのかな。
「ねぇ~?? ウズルイフちゃん、さっきから私を視界に入れないようにしているけどぉ~、なんでかなぁ~??」
あっ、エトワールが笑いながら空を飛び、ウズルイフへと向かっていく。
少し、ビビってる?? あの、ウズルイフが??
「――――やぁ、エトワールちゃん♪ 元気そうで何よりだよぉ~。でも、呪いは解けていないみたいだねぇ~。周りは死んでいくのに、自分だけが生き残る永遠の命ライフはどぉう??」
え? ど、どういうこと???
「んー?? それはねぇ~、さ、い、あ、く♪ だよ。ねぇ、私にかけられた呪い――時魔法は、術者が死ねば、無くなるのかなぁ??」
――――ゾクッ!
な、なんだ、この悪寒、殺気。
エトワールから、放たれているのか?
「おい、あの女。殺し屋か??」
「え? 別に、そういう訳ではないと思うけど……」
「だとすると、やべぇな。あの目は、人を殺し慣れた目、だぞ」
――――え??
再度上を見ると、エトワールは楽しそうに目を細め、ただひたすらに笑っている。
まるで、ウズルイフをあざ笑うかのように。
「どうだと思う?」
「答える気はないみたいだね、ならいいや。――――|bevelensomnium」
エトワールがウズルイフと目を合わせ、魔法を唱えた。
すると、ウズルイフが動かなくなる。
「私の夢魔法に、殺傷能力はないの。でも、使い方次第では、簡単に人の骨を折れるわよ。それで、人間が一番、折られてはいけない骨ってわかる? ――――首よ」
な、なんだ。
今までへらへらしていたエトワールとは、まるで別人のような殺気、表情、視線。
今までのは、演技だったのか?
そう思う程に、今のエトワールは別人だった。
「それじゃ、試させてもらうわね。――――”頭から落ちなさい”」
エトワールの冷たい視線は、動きを止めたウズルイフに向けられる。
今の魔法は、なに? まさか、無理やり命令をさせる魔法か?
それなら、ウズルイフの今の位置から落ちたら、シャレにならんだろ。
しかも、頭からなんて。
「――――ん?」
後ろから、気配を感じた。
ソフィアも感じたらしく、反射的に振り向いた。
「クロ!?」
「あー、ばれた。けど、いいや。うちの役割は、果たしたから」
果たした??
後ろにいたのは、管理者の処刑担当であったクロ。
背中には、大きなライフルが背負われている。
しかも、手に持っているのは、黒い魔石。
上を見たかと思うと「あーあ」と、ため息を吐いている。
そんな事をしていると、ウズルイフが頭から落ちた。
「やばっ」
マジで死んだらやべぇって!
走ろうとすると、後ろにいたクロが急いで飛びウズルイフを回収した。
瞬間、目を覚ましたウズルイフが顔を上げた。
「おー、やっぱり夢魔法、嫌いだなぁ」
「今回はウズルイフさんが油断したのも敗因だと思いますよ」
「それもあるかぁ~」
目を覚ましたのか。
普通に話してる……。
「ウズルイフさん、これで間違いない?」
「おー、上出来。んじゃ、これ以上ここにいるとまずいし、ちゃっちゃと退散しましょうかね」
言いながらウズルイフとクロがいなくなろうと上空へと飛んだ。
「待ちなさい!!」
「あっ、そうそう。一つ言い忘れてた。俺がかけたお前への時魔法、俺を殺したところで意味はねぇぞ。お前は永遠を生き、苦しめ。――――この、変態魔法使いさん」
エトワールが手を伸ばし止めようとしたが、ウズルイフ達はいなくなってしまった。
…………エトワールさんや、あのウズルイフに変態と言わせるほどに何をしたんですか。
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