理不尽にもほどがある
「なんて?」
「…………ぬしは、何も聞いておらぬのか?」
「聞いてはいないな、読みはしたけど。報酬と護衛対象、場所しか読んでいない。それ以外は特に俺には関係ないかなと読み飛ばしたわ」
「本当にこういう人間はいるのだな。外とはやはり、わからん事ばかりだ」
「そりゃどーも」
隣に立つアルカとリヒトが何か言いたげに俺を見て来る。
何を言いたいのか、手に取るようにわかるからわざわざ聞かないぞ、俺。
「改めて今回、私がなぜこの国を出なければならないのかを説明すると、オスクリタ海底に住む王の娘と婚約するためだ。だが、私はしたくない。だから、今回の依頼はなし。こういうことだ」
…………ほう。詳しくはわからないが、今回の依頼が残っていた本当の理由はわかった。
今の状況は、本人の意思とは関係なく親が勝手に依頼を出し、息子がそれを拒否している状態なんだな。
依頼を受けた冒険者は、この頑固に負け、遂行出来なかった。
相手は皇子、下手に何かをすれば自身の冒険者としての立場がなくなる可能性があるしなぁ。
正直、俺も今すぐやめたい。今すぐ帰りたい、この後に待っている流行病の方を解決して報酬をもらいたい。
でも、さすがにここで放置するのも後味が悪い。出来る限り、説得してみるか。
「俺から言えるのは――――」
「断る」
「何も言っていないんだが?」
「何を言っても無駄。ぬしは私を説得しようと考えておると思うが、なにを言われても私の考えは変わらん。どんなに親が強くても、私は折れん」
うわ、親の方が権力があるのをしっかりと理解してやがる。それでも今の言葉か。
関わりたくねぇぇぇええ…………。
好きにやればいいじゃん、そんな家族の揉め事にギルドを巻き込むなよ。
「あの、説得とは関係なく、質問なんですがいいですか?」
「質問なら許そう」
「ありがとうございます」
リヒトが手を上げ、控えめに言う。
俺はすぐに遮られたのに、なんでだよ。
俺も質問だったかもしれないじゃん、違うけど。
「どうしてそこまで婚約を嫌がるのですか? そんなにオスクリタ海底の方がお嫌いなのですか?」
「嫌いではない。だが、嫌なんだ。そもそも私は――――」
……ん? 言葉を止めた?
気まずそうな顔をしているな。
「おい、何か言いたい事があるのなら言え、俺達も暇ではない。このまま何も言わなければ、強行させてもらう」
「そ、そんな事をして、ただの冒険者であるお前らがどうなるか、考えもしないのか」
「安心しろ、この依頼はお前より権力があるおめぇの親からの依頼だ。お前に従えば今後どうなるかはわからんが、少なからずお前の親に従って俺達が処分されることはないだろ」
何も言い返せなくなったヒュース。
頭では理解出来ている様子だったからな、言えなくなるのは無理もない。
「…………わ、私が、婚約したくない理由は…………」
わぁ、体は震え、目には涙の膜が張っている。
そんなに言いたくないのか。
もしかして、他に好きな奴がいるのか?
それか相手がとてつもなくブスとか、金を持っていないとか?
いや、王族の結婚相手だ、金を持っていないは間違いなくないだろう。なら、タイプではないとかか?
考えられる点は沢山あるが、どれも俺達になら言ってもいいはず。
俺なら親にさえ言う。タイプじゃないんで嫌ですって。
「私は…………」
…………はよ言え。待たされているこちらの気持ちも考えてくれよ。
――――お?
奥から人影? いや、子供か?
前を見ていないのか、こちらに走って来ている。手には木の棒、チャンバラでもしていたのか?
って、ヒュースに近づいてねぇか? 本人気づいてねぇし。
これはぶつかったな、どんまい。
――――――――ドンッ!!
「わっ!!」
あ、やっぱりぶつか――――
――――――――トンッ
………って、こっちに倒れ込んでくるんかい。
まぁ、目の前に居たのは俺だし、受け止めるけど。
足腰しっかりと鍛えなさいよ、こんなんで倒れるんではありません。
「す、すまない」
「別にいいが…………」
――――――――ムニュ
あ? なんだ? 手を動かしたら何か柔らかいものが…………。
え、待って? この感触って、いや、え?
「……………………」
「あっ」
下を向くと、ヒュースの顔が熱でも出したかのように赤い。これは確定だな。
今俺が触ってしまったのは、異性にしかついていない二つのふくらみ。
「お前、女か?」
「~~~~~無礼者ぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!」
――――――――ばっちぃぃぃぃいいいいいん
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