また黒歴史を作るところだった
「クティさん、貴方は学生時代からこだわりが強い生徒でした。本当に、困りましたよ」
「ふふっ」
理事長は、過去を思い出すように目を細め、息を吐いた。
「ですが、貴方には魔法の才能が有り、頭脳があり、身体能力も高かった。貴方の学年では”一番”をずっと保っていましたね」
「当たり前よ。私は、一番じゃなければ意味がないもの。二位や三位なんて中途半端な順位に興味ないわ。下位なんてもってのほか、生きている価値すらないわよ」
目を血走らせ、クティが理事長に言い切る。
そんな母親の姿を見て、双子二人は今にも泣き出しそうな顔を浮かべた。
「本当に、貴方は優秀で、逆に先生達からは厄介な生徒として扱われていたのを覚えてないかしら」
「なんの話でしょうか。優秀なのに、なぜ厄介生徒扱いされないといけないのでしょう。優秀で、一番である私が、なぜ?」
ふーん、なるほど。
まぁ、先生からしたら厄介だよな。
今のこいつがそのまま学校に通っていると考えると――――考えたくないな。
俺が同級生だったら、絶対に関わりたくない。
「貴方は、自分が一番になる為なら手段は選ばなかった。校則ギリギリだったから教師は注意しか出来ず、好き放題。気に食わないことがあれば、魔法勝負を仕掛けて自分の優秀さを見せつけていましたね」
「見せつけるなんて、酷い言い方。私はただ、文句があるのなら実力でかかって来いと言っただけです。それは、この学校では普通でしょう??」
「確かにそうです。ですが、貴方は度が過ぎた。大人になれば落ち着くと思っていたのですが、残念です」
深い溜息を吐く理事長を見て、クティが片眉を上げた。
「それは、どういう意味でしょうか?」
「言葉の通りですよ。貴方は、体だけが大人になり、他は全て生徒の時と変わらない。自分のことしか考えず、周りを蹴落とし一番になる。本当に、滑稽な姿ですね」
うわぁ、めっちゃ言う人だ。
まぁ、見た目からしてきつい感じだし、イメージ通りか。
「何でですか? 理事長、貴方はいつもそうですね。生徒を褒めず、いつも口を開けば文句や意見ばかり。もっと、人を褒めるということをした方がいいですよ?」
それこそ、お前が言うなって感じの台詞だな。
「おやおや、貴方が言う資格あります? 実の子供に大きな罪を背負わせて、挙句捨てようとしましたよね? それでも母親ですか?」
「子供を産めば、実質女なら誰でも親にはなれますよ」
…………それは、聞き捨てならねぇな。
「あなた――……」
「おい。今の言葉、撤回しろ」
理事長がまた話し出そうとしたのを遮り、俺が前に出る。
すると、クティは怪訝そうな顔を浮かべ見上げてきた。
「なに? 貴方は関係ないでしょう? 引っ込んでてちょうだい、目障りだわ」
「俺は、お前が目障りだ。お前みたいな奴が子供を産むから、不幸になる奴が増える。お前は親になる資格ねぇよ」
「だから、さっきも言ったでしょう? 資格うんぬんは関係ないのよ。女は、子供を産めば自動的に母親になるの。それが、女と言ういきもっ――……」
――――ドカンッ
「――――は?」
しまった、我慢できずに結構本気のflameを放ってしまった。
クティの髪の毛先が少しだけ塵となっている。
「な、何をするの!? 勝負はもう決まっているでしょう!? 貴方はまさか、無抵抗の女性を殺す趣味でもあるわけ!?」
流石に命の危機を感じたのか、クティが喚いている。
「そんなもん、あるわけないだろ。俺はただ、形だけの親を許せないだけだ」
「形だけの親? どういうこと?」
苛立ちながらも首を傾げ、俺に聞いてくる。
「子を産んで放置、子を理不尽に痛みつける。子を自分の道具として扱う、子を亡き者にする。それを、形だけの母親だってんだよ。いや、もはや母親でもないな」
「私は、しっかりとこの子達を育てたわ」
「利用するためだろ? 自分が一番だと、いい母親だと周りに見せつけるために」
「それは……」
言い返せないはずだ。
だって、利用していたのは事実、見捨てようとしたのも事実。
こいつに、母親を名乗る資格はない。
母親になる資格はない。
今すぐにでも、殺してやりたい気持ちで怒りが満ちている。
こんな、身勝手な考えしかもっていない奴を野放しにしてはいけない。
第二の被害者が出る。
子は、親を選べない。
それなら、こんな屑親を少しでも減らして、少しでも幸せな子を――……
「カガミヤさん、落ち着いてください」
「っ、リヒト?」
リヒトが不安そうに瞳を揺らし、俺を見上げてきていた。
「カガミヤさん、周りの人が引く程に魔力が溢れていましたよ。さすがに、魔力も少ないですし、落ち着きましょう」
「…………そうか」
また、怒りに身を任せ黒歴史を作るところだったのか。
はぁ、気を付けているんだけど、どうも子を大事にしない親を目の前にすると駄目だな。
まぁ、仲が良い家族を前にしても感情が抑えられなくなる時があるけど。
「あの、クティさん……と、お呼びしてもよろしいでしょうか」
「何よ。貴方も私を否定するの?」
リヒトがクティへと近づく。
気まずそうに顔を逸らすけど、リヒトは構わず話し出した。
「クティさんは、リーさんとスーさんが死んでしまったら、どうしますか?」
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