気まずい空気に挟まれている俺を助けて
「強すぎる!!」
「くっそ!!」
リヒトとアルカの苦しそうな声が響く地上。
グレールも氷柱を出して動きを封じているが、魔力が尽き始めているのか、狙いがぶれている。
「はぁ、はぁ……」
「カガミヤさん、はやく……」
リヒトが呟くと、ロゼ姫が右手を振り上げ、リヒトに向かって叩き落した。
「リヒト!!」
「――――っ。あっ……」
アルカの声に反応し、リヒトは避けようと走り出したが、疲労により膝から力が抜けてしまった。
「リヒト!?」
その場に転んでしまったリヒトに、大きな手が迫る。
アルカもグレールもリヒトへ駆けだすが、間に合わない。
「カガミヤさん……」
もう、諦めたようにリヒトは目を閉じた。
瞬間、ロゼ姫の動きが止まった。
「――――え?」
動きが止まり唖然としていると、追いついたアルカがリヒトをだき抱え逃げ出した。
「な、なにが起きたんだ?」
アルカが困惑の声を漏らす。
それもそのはず、誰も攻撃をしていないにも関わらず、いきなり動きを止めたのだ。
アルカは呟きながらもリヒトを地面に下ろし、ロゼ姫を凝視する。
すると、手から徐々に崩れ始めた。
「え?」
指先が崩れたかと思うと、次は手、肩、首、頭と。次々とロゼ姫の身体が崩れ始める。
「ま、まさか……」
アルカとリヒトは、笑みを浮かべ顔を見合わせる。
グレールも深い溜息を吐き「おっそ」と、悪態をついた。
三人の様子に、理事長は重たい体を引きづり顔を上げた。
すると、学校がある方向から、一人の影が姿を現した。
目を細め見続けていると、捕らえられていたはずのロゼ姫を肩に抱えた知里の姿が見えた。
そんな彼の後ろには、クティが水の鞭で拘束しながら歩いていた。
※
ロゼ姫の偽物が崩れていく。
よかった、こいつの言葉は本当だったらしい。
他の奴らは無事だったのか。
早く確認をしたい。
「おっ」
アルカとリヒトが俺へと駆け寄ってきていた。
「カガミっ――……」
「ロゼ姫ぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」
おぅふ、風よりも早く俺の元に走ってきたグレールが、肩に抱えていたロゼ姫を奪い取った。
奪い取られたけど、優しかった。
痛みがないようにしたんだろう。やっぱり、ロゼ姫は大事らしい。
アルカの言葉を遮ってまで吹っ飛んできたもんな、そりゃ大事か。
「やれやれ……あっ」
体を引きずりやってくる双子が、俺の後ろを見た。
「母さん」
「…………」
今は、俺の水の鞭で拘束されているから、クティは身動きが取れない。
逃げる事も出来やしない状況で、何とか気まずい空気を誤魔化そうと顔だけは俯かせていた。
「母さん」
「お母さん」
リーとスーが後ろのクティを呼ぶ。
けど、返答はない。
もう捨てられたと感じた二人は、呼ぶのを諦めて顔を俯かせてしまった。
…………この気まずい空気に挟まれている俺は、どうすればいいの。
え、俺が何か言わないといけないの?
嘘でしょ、なんと言えばいいの?
困っていると、アルカとリヒトが俺を見ていた。
ちょうど、目が合った。
頼む、助けてくれ!!
視線で訴えたが、二人は冷や汗を流し目を逸らす。
うっそでしょ、俺も見捨てられたの?
悲しんでいると、一人のおばさん、理事長が近づいて来た。
「貴方は、クティ・アリスさんですね」
「っ、これはこれは、久しぶりですね、理事長先生。ずいぶんお弱くなったようで?」
お? 二人は知り合いか?
クティが顔を上げて、強気に言っている。
けど、どこか焦りを感じる。どんな間柄なんだ?
「そうね。私も年を取った。さすがに貴方が生徒としてこの学校にいた時と比べると、だいぶ衰えたでしょう」
え? もしかしてクティって、この学校のOBなの?
間に挟まれ、いきなりの情報が沢山入ってきて俺、唖然。
ポカンとしていると、理事長が俺の顔の近くで手を振った。
「――――はっ」
「気をたしかに持ってください。確かに、驚くことが多いかと思いますが」
「は、はぁ……」
意識を取り戻すと、理事長が俺の後ろに移動した。
振り向いた瞬間、バチン!! という乾いた音が聞こえた。
「何事!?」
いや、振り向いた瞬間だったから理事長がクティの頬を平手打ちしたのはわかったけど。
い、いきなりの事態すぎて本当に頭がショートしそう。
唖然としていると、やっとアルカとリヒトが俺の隣に来てくれた。
「あの、なにがあったんですか?」
「裏切り者のリヒトちゃん、どーも。俺にもわからないんだよね」
「…………裏切ってないです。気まずかっただけです」
いや、俺の方が絶対に気まずかったよ。
だって、挟まれていたんだから。
まぁ、ここまで来たらもう、見守るしかないんじゃないか。
クティが、どういうか……反省はしてほしいところだけど。
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