何度目かの命の危機にさらされた気分
「そう言えば、貴方。空中にいれば安心などと思っていないかしら」
「そうじゃないのか?」
「さぁ、それはどうでしょうねぇ」
えぇ……。
その言い方は、安心できないって言っているのと一緒じゃん。
くっそ、気持ち悪い笑みを浮かべやがって。
「――――ん?」
右側から魔力――四角に切り取られた壁が迫ってきた!?
「うわ!!」
体を捻って回避すると、反対側の壁に大きな音を出してぶつかった。
こっわ。もしあんな勢いで壁に追い込まれたら、内蔵の一つや二つ、簡単に潰れるぞ。
「あらあら。やっぱり、魔力の探知が人より鋭いのねぇ。私の魔力は感じにくいはずなのに、発動する前にわかっていたみたい。でも、反射神経はそこまででもないのかな」
褒めてんのか貶してんのか、どっちだよ。
それに、なんか……っ?!
「──っ! ナイフ、投げやがった」
「ふふっ。魔法だけでは、この世界は渡っていけないのよ?」
魔法だけじゃダメだと判断したからか、隠し持っていたシルバーナイフを投げやがった。
頬を掠めたらしく、血が出ている。
でも、薄い。グイッと拭けば、簡単に止血ができた。
改めて下を見ると、シルバーナイフを指に挟み、クティが俺を見上げていた。
「お前、何者だ?」
「ただの双子の母よ。ちょっと、人より強欲なね!!」
っ、ナイフを投げてきた。
体を捻ったり、空中を飛び回り逃げる。
「逃げるだけでは、勝てないわよ!!」
くっそ!! 何個ナイフを持ってんだよ!
合間なく投げられて、避けるしか出来ない。
――――トンッ
「しまった!!」
壁に背中をぶつけてしまった。
瞬間、箱が俺を包み込むように現れた。
「ふふっ、簡単ね。やっぱり、物理攻撃には弱いのねぇ~」
「この世界で物理攻撃してくる奴には、一人しか会ったことねぇし、仕方がないだろ」
「それでも一人はいるのねぇ」
でも、ソフィアは魔法が全く使えないから物理攻撃してくるだけ。
魔法と物理攻撃の組み合わせが、ここまで厄介だとは思わなかった。
だが、捕まっているだけで何かしてくるわけではない。
考える時間はあるし、今は少しでも魔力の節約のために水の翼を消して、待機しておこう。
「あら、もしかしてだけれど、私の魔法が人を捕まえるだけだと思っているのかしら」
「違うのか?」
「そんな魔法、クズでしかないわ。一番を狙う私に相応しくないじゃない」
それなら、何を――……
「…………なんか、この箱、小さくなってないか?」
「気づいたかしら。そう、その箱は大きくも小さくも出来るの。便利でしょう?」
「マジかよ」
やばい、時間も無くなってきた。
このまま小さくされ続ければ、俺の身体はぺしゃんこだ。
しかも、炎魔法も水魔法も、こんな狭い場所では使えない。
多分、俺も巻き込まれる。
「何を考えても意味は無いわよ。どうせ、貴方は潰れて終わり。でも、安心して? 貴方が潰れた後は、私が大事に貴方の残りを保管してあげるわ」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇわ」
「あら、傷つくわね」
急に指を鳴らしたかと思うと、箱が小さくなる速さが早くなる。
「私を怒らせない方がいいわよ。貴方は今、私の手のひらの上なのだから」
「くっ」
まずいまずいまずい。
どうする。焦って思考が回らない、考えられない。
「――――終わりね」
足も腕も、腰も限界まで曲げている。
それでも、箱は小さくなるばかり。
力で押し返そうとしても、意味は無い。
骨が、軋み始めた。
痛い、やばい……。
小さな魔法で、この箱を押し返せる魔法。
いや、この箱を壊せる、切れる?
そんな、小さな刃を放てる魔法なんて、俺には無い。
あー、今ここに、アルカがいればなぁ。
地魔法の刃で切れるんだけど――……
「魔法は、イメージ、か……」
イメージは、自由なんじゃないか?
今迄は、カケルの持っている魔法を使ってきたが、魔法はイメージが大事。
それなら、イメージ次第で自由に魔法を作り出せてもいいはず。
でも、今のこの状況で……。
『集中してください。炎で、刃を作るイメージを強く持ってください』
「あ、アビリティ?」
『早く、貴方だけの魔法を作り出してください』
こんな、狭い場所で…………。
いや、アビリティそう指示を出してくるってことは、できるんだよな。
なら、信じるしかねぇじゃねぇかよ!
「――――あらぁ? なんか、魔力の高まりを感じるわねぇ」
クティが俺を見上げてくる。
「でも、貴方の魔法は広範囲の威力重視の魔法が多いはず。そんな狭い所で放てば、貴方まで巻き込まれるんじゃなくて?」
こいつの言う通り、今までの俺の魔法は広範囲だったり、移動手段に使える魔法が多かった。
つーか、知ってんのかよ! 俺の魔法!!
俺、こいつとの戦闘では、水の翼しか使ってないのに!!
「まぁ、そうだな。俺、自分の魔法に巻き込まれるのはごめんだ」
「それならそのまま潰れて、私のコレクションになるしかないわね」
肉片がコレクションかよ、気色わりぃ趣味してんな。
「それは、もっとごめんだ!!」
アルカの地の魔法の刃は、自由に飛び回る。
半月のような形で、内にも外にも鋭い刃がついていた。
それを、炎でイメージする。
炎を圧縮させ、刃の形にし高温で燃やし切るイメージだ!!
「な、何をするつもりなの? 魔力が……」
「――――行くぞ。flameblade」
たった今考え、思いついた魔法名を口にし、魔力を右手に込め放つ。
すると、炎の刃が俺を閉じ込めている箱を、焼き切り、壊した。
「う、嘘でしょ?」
「嘘じゃないんだよ、それが」
「しまっ――」
箱から抜け出た瞬間に水魔法を出し、クティの背後に回った。
「fouetwater」
水の鞭で、クティを拘束。
やっと、黒幕を捕まえた。
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