魔力が足りるか不安だが、やるしかないか
俺が水の翼を出して、グレールを抱えながら地上へと向かおうとしたんだが、その必要はなかった。
「まさか、お前の氷魔法で人の魔法を模倣できるなんてな」
「完全に模倣できるわけではありませんよ。ただ、見よう見まねで真似しているだけです」
「それはそれですげぇよ」
グレールは今、氷の魔法で俺の翼と同じ形を背中に作り、空を飛んでいる。
今回グレールが使った魔法は、|conversionglace。
簡単に言うと、見たまんまに魔法を真似できるものらしい。
けど、魔力量も相手と同じくらい使うから、何でも模倣できるわけではない。
あくまで、自分より低い魔力を持っている人、または魔力をあまり使わない魔法のみ。
俺が使っている水の翼は、常に魔力は減り続けるけど、微弱だから問題ないみたい。
でも、ずっとは使えないみたいだから、早く地上に行きたい。
「こっちです!!」
リヒトが俺達を案内する。
アルカは、まだ空を飛び慣れていないのか、ふらふらしながらも前を飛ぶ。
「そう言えば、なんでリヒトとアルカは空を飛べるんだ?」
「学校で学びました!! 習得は出来ずに事件が起きてしまいましたが、イメージを強くすればできると信じてやってみたらできたんです」
なるほど、学校に行っていたのは、無駄ではなかったということか。
それは、良かった。
「んで、スーとリーはどうしたんだ? 今どこにいる?」
「地上で理事長先生と一緒にロゼ姫様のお人形さんと戦っています!」
へぇ、なるほど。
「ロゼ姫……」
グレールの顔が青い。
魔力切れやロゼ姫本体の状況とかで、色々と不安が溜まってんだろうなぁ。
俺も、流石に不安だ。
せっかく出会えたのに、魔力が完全に無くなり干からびてしまっていたとかふざけるなよ。
早く行かないと。そして、ロゼ姫を早く見つけないと。
でも、ロゼ姫がどこにいるのか、見当もつかない。
一体、どこにいるんだ。
「あそこの穴から地上に――……」
奥を見ると、光が降り注いでいる場所が見えっ────
――――ドシン!!
「っ、そ、そんな!!」
「ちっ」
あー、地面を踏み抜かれた。
いつかそうなるかなと予想はしていたし、別にいいや。
「おそらく、俺達の魔力に反応したんだろう。完全に察知は出来なかったから、場所がずれてしまったみたいだが……」
「早く地上に抜けた方がよさそうですね」
言いながらグレールが魔力を込め始めた。
「待て、グレール」
「な、何ですか?」
「魔力はまだ俺の方が余裕あるだろう。だから、俺がやる」
もうそろそろみんな、魔力が尽きかけてしまう頃合い。
無駄に使えないし、俺の魔力を使った方がいいだろう。
眠くはなってきているけど、まだ問題はない。
「――――flamaArrow」
炎の弓を作り出し、上を向き弓矢を引く。
狙いを定め、炎の弓矢を放った。
一本の光の道を作り、地上へと放たれた炎の弓は、一人は入れるくらいの穴が出来た。
ついでに――……
――――ギャァァァァァアアアア!!!
「ロゼ姫!? の、叫び声ではないけれど、直撃したのでしょうか?」
「直撃したかはわからないが、今のうちに地上に出るぞ」
すぐに穴を出て、地上に向かった。
まさか、地下から攻撃されるとは思っていなかったのか、腕が一本焼き切れていた。
「――――なんだ、これ」
地上に出ると、そこには悲惨な光景が広がっていた。
おそらく、地面に倒れ込んでいるばーさんが理事長。
スーとリーも動こうとしているが、怪我が酷すぎて無理な様子。
他にも、騒ぎを聞きつけたであろう警備員や他の魔法使い達が戦っているが、全く魔法が効いていない。
それに、地面には踏みつぶされたであろう死体まで転がっていた。
「酷いな」
「はい。早く止めないととは思っていますが、攻撃が全く効かなくて……」
「アルカの地の剣でも駄目なのか?」
アルカに聞くと、首を横に振られた。
「固くて……」
「そうか」
さて、どうするか。
――――おっ、俺に気づいたのか、ロゼ姫が俺を見た。
瞬間、叫び声を上げ残っている手を振り上げてきた。
大きい分、動きが鈍いから簡単に避けられる。
「っ!! うわ!!」
「チサト様!?」
体が大きい分、簡単に避けられるけど、風が巻き起こる。
手を振り上げただけで、風に煽られバランスを崩してしまった。
「これは、難しいなぁ……」
魔力が少なくなってきている今、無駄に魔法は使えない。
けど、固いんだったら何回か放つか、魔力を貯めて放つか。
スピリトを使うか。
でも……。
『主。この人形から本物のロゼ姫の魔力を感じるわ。もしかしたら、本物まで飛べるかも』
「――――魔力を辿れるのか?」
『おそらくとしか言えないわ。けれど、多分できるわよ。だって、私はリンク様、他の精霊とは違うのだから!!』
リンクが俺の髪に捕まりながら強気にそんなことを言ってきた。
でも、微かに震えているのはわかる。
本当は、怖い。
その気持ちが伝わってくる。
「――――任せて、いいんだな?」
『えぇ、任せなさい!!』
んじゃ、今回はリンクに任せようかな。
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