両親の呪縛という者は、簡単には離れない
俺が魔法を唱えると、二人を淡い光が包み込む。
最初は怖がっている二人だったが、何か違和感を感じたのか目を丸くした。
数秒間、淡い光に包まれていた二人。
徐々に光が落ち着き、辺りは暗くなった。
「さてと、これならどうだ?」
アビリティの言う通りにしてみたが、もしこれで何も変わらなかったら、悲しいぞ?
二人は、自分の体を見回しているみたいで、なにも教えてくれない。
なにか違和感があるのなら教えてほしんだが?
「……軽い」
「私もだよ。リーも??」
「うん。俺も、体が軽くなった」
今までは、体が重たかったのか。
『お二人から、二つの魔力を感じておりました。一つは、それぞれが持っている魔力でしょう。もう一つは、呪いのようなものが付着するように魔力が纏っておりました』
へぇ、だから魔力を消す魔法を放ったのか。
だが、この魔法はどれだけ持つんだ?
まさか、ずっとじゃないだろうし、今はもうこいつらにも魔力が戻っているだろう。
『今はもう魔力が戻り、二人は魔法を放てます。ですが、一つだけです。付着していた魔力は戻っておりません』
「つまり、余計な魔力は無くなった、と」
付着していた魔法がなくなった今、二人を縛るものは無くなった。
それは、二人も感覚的に感じているのか体の震えがいつの間にか落ち着いている。
「もしかして、俺達にかけられていた魔法を、解除してくれたのですか?」
「そうみたいだな。どんな魔法をかけられていたんだ?」
聞くと、スーが答えてくれた。
「監視の魔法だよ。私達が裏切るようなことをしないように」
「裏切るってなんだ。お前らは誰に、何をさせられている」
今だったら答えられるはず。
そう思って質問したんだが、中々に答えない。
おいおい、何を迷っているんだよ。
もう、話せるんじゃないのか? 何を迷っている。
「……話しても、いいの? リー」
「わからん。話したいが、本当に裏切ってもいいものなのか……」
裏切りたくないと思っているのか?
でも、さっきまではあんなに怯えていたのに。
こいつらが、わからん。
「おいおい、何を迷っているのかわからんが、話せ」
…………もじもじしていても、俺はお前らを逃がさないぞ。
「あの、なにに迷っているんですか?」
そうか、俺じゃなくて、またリヒトにお願いすればいいのか。
もう透視は使いたくないし、出来るだけ吐かせてくれよ、リヒト。
「……裏切ってもいいのかを、悩んでる」
「スー!! あまり余計なことを言うな」
リーが話し出そうとしたが、スーがそれを止めてしまった。
ちっ、あともう少しで話してくれそうだったのに。
「裏切ってもいいのかって……。誰に従っているの?」
「……………………お母さん」
お母さん。だから、さっき母と言ったのか。
「お母さんを裏切っていいのかを悩んでいるのですね」
リヒトの優しい口調に、二人は目を逸らしながらも頷いた。
「教えてくれてありがとうございます。では、もう一つ質問します」
リヒトは二人に笑いかけ、口を開いた。
「貴方達は、今自分達が行っていることを、正しいと思いますか?」
リヒトからの質問に、二人が固唾を飲んだ。
すぐには、頷かない。
悩み、迷っている。
自分達が行っていることが正しいか、どうかの質問。
それは、答えるのは難しいし、勇気のいる質問だ。
頷けば、俺達を敵に回すことになる。
首を横に触れば、母を裏切ることとなる。
さて、こいつらの選択はどっちに転がるか。
余計なことを言わないように待っていると、やっとスーが動いた。
首を、ゆっくりと、横に振った。
「スー!!」
「だって!! だって……。こんなの、誰も笑えないよ。私は、人を笑わせると聞いて行ってきたのに。一向に誰も笑わない、楽しそうにしない。そんなの、おかしいよ!!」
スーの声が、涙声に変わる。
「リーも、本当はやりたいこと、違うんじゃないの? 途中で違うって、気づいたんじゃないの?」
「そ、それは……」
「私も、もう嫌だ。こんなの、誰も楽しくない。みんなが、悲しむだけだよ」
リーの訴えに、スーが顔を俯かせる。
「スー?」
「でも、俺は、母を……」
未だ、母の呪縛に捕らわれている。
親の呪縛って、簡単には解けない。
それは、俺もわかってる。
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