出来る限り面倒は増やしたくはない
「ソフィアさーん、どこに向かっているんすか?」
「知らん」
「道なりに進んでいるだけっすもんねぇ。どこに繋がるんすかねぇ~」
ソフィアとグレール、アンキはひたすらに真っすぐ、洞窟を進んでいた。
アンキの体力が回復したため、話ながら二人について行く。
「んー、また無限入ってないっすか」
「それはないですよ」
「え? そうなんすか?」
今度は、一番前を走っていたグレールがアンキの質問に答えた。
「一応、無限を経験している為、氷を壁に挿してきたんです。まだ、それを見つけていないため、ループはしておりません」
「おぉ、流石っすねぇ。なら、単純に道が長いだけっすか。早くゴールについてほしいっすねぇ」
アンキが呆れたように言うと、ソフィアが急に静かにするように言った。
「お望みのゴール、付いたらしいぞ」
グレールも何者かの気配に気づき、歩みを止めた。
そこからは三人、警戒しながら向かう。
「……なんか、体が重たいっすね」
「戦闘が行われているみたいだしな。空気が流れてきてんだろ」
「そういうもんすか」
戦闘が行われていると思われる場所に近付いているにも関わらず、三人は冷静さを崩さない。
そんな中、グレールは何かに気づきその場に立ち止まる。
「ん? どうした」
ソフィアが聞くが、グレールは答えない。
耳を澄まし、何が起きているのか集中する。
『――――viasunet』
魔法を唱える声と共に聞こえたのは、爆発音。
ソフィアとアンキが顔を合わせていると、グレールが焦ったように駆けだした。
「な、どうしたんすかー!!」
アンキとソフィアは、グレールを追いかけるようにまた駆けだした。
アンキの声など聞こえていないグレールは、真っすぐ走り続ける。
辿り着いた先の光景を見て、グレールは目を見開き立ち止まった。
「もぉ、どうしたんすか~」
アンキが息を切らし、グレールと同じ光景を見た。
瞬間、息を飲み目を開く。
「な、なんすか、ここ…………」
二人の視界には、壁側で苦しそうに動いているアマリアの姿と、その周りにいる酸のイルカが映る。
そのイルカは、グレールにとっては見覚えがあり過ぎて、視線だけを横へと向けた。
「ろ、ロゼ、姫?」
何故かロゼ姫がアマリアへと、酸のイルカを放っていた。
「…………あ、グレール。最悪だ……」
体を起こしたアマリアは、大人の姿をしている。
そんな彼はまだ意識があり、頭を支えた。
そのまま立ち上がろうとするアマリアだったが、イルカがそれを許さない。
アマリアの周りを飛び、酸を降らせる。
アマリアはなんとか白衣で酸を防ぐが、溶かされてしまい肌までただれてしまった。
このままではアマリアの命が危険だと判断し、ソフィアは風の如き速さで駆け出し、アマリアを救い出した。
「あ、ありがとう」
「ふん」
アマリアを地面に下ろし、拳銃を構えた。
「あいつはなんだ、今までとは雰囲気が違うように見えるが」
ソフィアの言う通り、ロゼ姫の様子はまるっきり今までとは異なっている。
目は虚ろで、肌は青い。
ふらついている体は、ゆっくりとアマリアへと歩みを進めていた。
「狙いは、お前か」
「と、いうよりこの空間を作り出している、あそこかな」
アマリアは、後ろを見た。
ソフィアも見ると、そこには崖が広がっている。
「あそこに、何がある」
「そっか、ソフィアは魔力を感じないんだよね」
「馬鹿にしているのか?」
「いや……。あの崖の下には、この学校を支えられるほどの莫大な魔力があるんだ。多分、それを壊そうとしている」
「それに、何か意味はあるのか?」
「もし、あの魔力のコアが壊されたらこの学校と、もしかしたらツムリア帝国はつぶれるかもしれないね」
「そうか」
アマリアの冷静さにはソフィアも驚くところがあるが、元管理者だと思えば普通の反応だと考えないようにした。
「あいつは、怪我をさせていいのか」
「グレールも敵に回ると思うよ」
「それは厄介だな」
未だ、出入り口で固まっているグレールを一目見て、肩をすくめた。
アンキがグレールの前で手を振り、意識を取り戻そうとしているが、意味はなさそうだった。
「グレールを敵には回したくないんだ」
「敵に回るのであれば、殺すだけだ。だが、面倒ごとを増やさなくていいのなら、その道を行きたい」
「ふーん。それなら、まずロゼを無傷で捕まえることからかな」
「手加減しながら戦わないといけないのはめんどくさいな」
「まぁね」
アマリアは「どっこいしょ」と、立ちあがり、両手を前に出した。
「魔法を放っていいのか?」
「出来るだけ放ちたくないけど、イルカを殺す程度ならいいかなって。――――vibration」
全体に広範囲の音魔法を発動。
ソフィアは瞬時に理解し、耳を塞ぐ。だが、一番近くで喰らっている為、眉間に深い皺を寄せた。
アマリアの音魔法で正気を取り戻したグレールも耳を塞ぎ、アンキも「巻き込まれっすよー!!」と、叫ぶ。
そんな三人へのダメージを気にせず、アマリアはただ、イルカだけを見ていた。
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