偽の声
「行き止まり……」
俺の方は、行き止まりだった。
と、いうことは、リヒトかカガミヤの方が当たりか。
すぐに戻って、カガミヤかリヒトの方に行こう。
――――ゾクッ
な、なんだ?
なんか、寒気というか、悪寒というか……。
なんか、体がぞくぞくする。
でも、殺気を向けられているわけではない。
魔力は感じるけど、敵意はない。
なんか、魔力が辺りを漂っている感じ。
『――――アルカ』
「え、カガミヤ?」
後ろからカガミヤの声が聞こえた。
思わず振り向きそうになっちまったけど、ちょっと待てよ?
なんか、おかしくないか?
だって、カガミヤがこんな所にいるわけがない。
仮に、カガミヤが見ていた所が思いのほか短くて、すぐに俺の方に来たとしても、流石に早すぎる。
『おい、アルカ。何してんだ、こっち向けって』
カガミヤは、そんなこと言わないはず。
俺を振り向かそうとしているのか?
『アルカ、なんでそっちを見ているの?』
っ、次は、リヒトの声だ。
『アルカ、カガミヤさんが痺れを切らしそうだよ。早く行こう?』
違う。この声は、違う。
二人じゃない。
『アルカ』
『アルカ?』
違う、違う違う違う。
でも、もし、本当に二人だったら――……
『────うん、偉いよアルカ。このまま、振り向いては駄目よ』
っ、リヒト??
「うわっ!!!!!」
いきなり、突風!!
「…………落ち着いた?」
一瞬、強い風が吹き荒れたけど、直ぐに収まった。
何なんだよ、まったく……。
「あ、あれ? 気配が、無くなった?」
ゆっくりと振り向くと、そこには何もない。
もちろん、二人の姿もない。
「最後、振り向きそうになった時。リヒトの声が聞こえた。俺を、止める声が」
もし、リヒトが止めてくれなかったら、俺は確実に振り返っていた。
でも、本当にリヒト? リヒトであって、また違う何かが、俺を止めたとか?
「――――わっかんねぇ」
とりあえず、ここは行き止まりだ。
早く戻って、リヒトかカガミヤと合流しよう。
※
「行き止まりだ~」
私の方は行き止まりだった。
ということは、次に進める道は、アルカかカガミヤさんの方とか。
「それにしても……」
さっきから視線というか、何か、気持ち悪い気配を感じる。
気のせいだといいんだけど、多分違う。
「――――あの、誰かいますか?」
振り返りながら問いかけるけど、当然のように何も返ってこない。
それじゃ、やっぱり気のせい?
でも、まとわりつくような視線はまだ感じるし……。
『リヒト』
「カガミヤさん? ――――って、なにこれ」
思わず振り向いてしまったけど、私の後ろには変な石があった。
さっきまで、こんな石あったっけ?
しゃがんで手を伸ばしてみると、急に石が動き出した!?
すぐ後ろに下がると、石はカタカタと動きが早くなる。
は、早くどうにかしないと!!
「~~~~chain!!!」
うっそ!! 石が飛び掛かってきた!!
咄嗟に鎖魔法で捕まえて、地面へと叩き落す。
すると、石は簡単に真っ二つ、動きを止めた。
「な、何だったの?」
石が動くなんて、そんなこと――――あっ。
前に、人。双子のように、影が似ている。
『リヒト』
『リヒト』
シルエットしか見えないから誰だか判断できないけど、微かに動く口から発せられた声には違和感を感じる。
だって、人影からは、アルカとカガミヤさんの声が聞こえるのだから。
「ど、どんな魔法を、使っているの?」
『リヒト』
『リヒト』
辞めて、二人の声で、私を呼ばないで。
二人の声を、穢さないで。
『リヒト』
カガミヤさんの声を、勝手に使わないで。
「──許さない。chain!!」
人影に、鎖魔法を放つ。
すると、捕まえる直前で姿を消した。
――――アハハハハハハハハハ!!!
笑い声が反響する、一種のホラーだよ、これ。
普通に怖いし、マジで勘弁してほしい。
「…………声が、聞こえなくなった」
耳を塞ぎ耐えていると、音が消えた。
な、なに? さっきまでのは、なんだったの?
「…………さっきの影、なんとなくだけど……」
なんか、リーさんとスーさんに似ている気がした。
「…………とりあえず、こっちは外れみたいだし、早く戻ろう」
早く、カガミヤさんと合流したい。
今のことを、報告したい。
「…………カガミヤさん…………」
早く、会いたいなぁ。
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