大事な分担
時は、知里達が学校に突入する前まで遡る。
リヒトとエトワール、ビジョンとキロンニスは無事に試練の間を抜け出していた。
その時に、クインがいないことに気づき、キロンニスは首を傾げ周りを見回した。
「あれ、理事長がいねぇ……」
「まさか、私達を置いてどこかに行っちゃったとか〜??」
キロンニスの後ろからエトワールが顔を覗かせ、一緒に周りを見た。
「――――空気が淀んでいるね。なんだろう、何かが始まってる」
「なにかって、なんだよ」
ビジョンが質問しながら髪を解こうとした瞬間、エトワールがその手を止めた。
「まだ、覚醒したままでいて」
「ど、どういうことだよ。疲れるんだが??」
「いいから……」
エトワールの声には焦りが含まれており、汗が一粒、額から流れている。
みんなから遅れて出てきたリヒトは、エトワールの言っていることがわからず困惑。
周りを見ても、何かを感じ取ろうとしても、わからない。
でも、エトワールには、何か感じるものがあるらしく、警戒態勢を取っていた。
「――――地下にいる方が危険かもな」
「かもしれないね。理事長がいなくなったのも、何かに巻き込まれてしまったと考えるのが妥当かなぁ。どうする?」
エトワールが真剣なまなざしでキロンニスに聞いた。
「そうだな。生徒を守るのが教師である俺の役割ではあるが、流石に事態が事態だ。エトワール、任せてもいいか?」
キロンニスがエトワールを見て、そんなことを言う。
エトワールは、待ってましたと言うようににんまりと笑い「了解!!」と、元気に言い切った。
「待ってたんだよねぇ~、任されるの。でも、何とか出来る保証はないから、そこは許してね」
「わかっている」
エトワールは言うと、その場でジャンプ。すると、制服から、肩出しの黒いパーカーへと服が変わった。
「ジャンプするだけで着換えられんのか、便利だな」
「女性のお着替えシーンを見たんだから、罰金十万ね」
「たっか!! つーか、見せてきたのはお前だろうが!! 一言くらい言えや!!」
二人が喧嘩するのはいつものこと。
リヒトは気にせず、キロンニスへと声をかけた。
「あの、キロンニス先生。エトワールさんが言っていることは本当ですか?」
「あぁ、何か大きなことが起きているのは確か。だが、この地下までは浸食されていない。まだ、いろいろ間に合うだろう」
「間に合う……。間に合わなかったら……」
リヒトが怖がりながらも聞いてみると、キロンニスはリヒトと目を合わせた。
「最悪、この学校は終わりだろう」
「そんなっ!!」
そんなことになっては、絶対に駄目だ。
リヒトの顔は真っ青になり、カタカタと肩を震わせる。
「おい、まだ間に合うと言っているだろう。そんな終わってしまったという顔を浮かべるな」
「…………わかりました」
キロンニスの言葉にホッとするも、早く動かなければならないのは同じ。
いまだに喧嘩している二人の間に入り、意味のない言い争いをやめさせた。
「喧嘩している場合ではないですよ! 早く動きましょ!!」
「リヒトちゃん?」
まさか、リヒトが喧嘩している最中に入り込んでくるとは思っていなかったため、二人は驚いた。
そんな二人など気にせず、リヒトはエトワールの腕を引いた。
「早く行きましょう!! どこに行けばいいですか!!」
リヒトの勢いにビジョンは驚き、エトワールはクスクスと笑う。
「そうね、早く動きましょう。理事長も気になるしね」
上を見ながら言うエトワールの視線を追う。
リヒトには、ただの天井しか見えない。
「――――あの」
「リヒトちゃん、一人で動ける?」
「え?」
上を見ていたエトワールがリヒトへと視線を移す。
目が合い、リヒトは息を飲んだ。
「一人、私が……」
「うん。もしかしたら、上。動き始めているかもよ。貴女の大好きな人が」
「っ! カガミアさん!?」
大きな声で名前を呼んで気づく。
自分で好きな人を暴露してしまったことに。
「──ふふ」
「~~~~~~~~行きます」
「そう、それならよかった」
真っ赤な顔を隠すように、リヒトは手で顔を覆った。
ビジョンは面白くなさそうに唇を尖らせ、キロンニスは肩をすくめた。
「でも、他の人達は何をするのですか?」
「少し、地下を探るよ。この学校の地下は、色々と隠せそうだからね」
言いながら、エトワールは歩き出す。
「俺は、エトワールが危険だから行くわ。ビジョンはどうする?」
「え。お、俺は……」
悩んでいると、エトワールが振り向かずに答えた。
「ビジョンはここで待機。ここも狙われそうだし、一番壊されてはいけない場所だろうからね」
エトワールの指示に従うのは癪だったが、ここが壊されでもしたらたまらない。
それは分かっているビジョンは仕方なく、「へいへい」と頷いた。
「では、解散。よろしくね」
エトワールとキロンニスはそのまま地下道の奥へと姿を消した。
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