全力と深い溜息
「行きますよ、死にたくなければ避けてくださいね。――――icicle」
グレールの藍色の瞳が光る。
瞬間、悪寒を感じたソフィアはアンキの頭を掴み、地面へと倒した。
ソフィア自身も、その場に倒れ込んだ。
刹那、至るところから氷柱が放たれた。
隙間なく放たれる氷柱は、走り回る猿の魔獣を貫き殺す。
そんな中、二人が見つけられなかった魔石が、偶然にも氷柱に突き刺さりガシャンという音と共に壊された。
それにより、無限と感じていた魔獣の攻撃は止み、静寂が訪れた。
「…………すげ」
「…………」
アンキは、グレールの魔法に圧巻されており、ソフィアは何を思っているのかわからない無表情を浮かべながら立ちあがった。
埃を掃い、息切れをしているグレールへと近づいた。
「ここまで大量に魔力を使って大丈夫なのか?」
「問題ありませんよ、睡魔も感じません。なので、早く次に進みましょう」
白い息を吐き、グレールは駆けだした。
ソフィアはそんなグレールの背中を見て、目を細めた。
「行かないんすか?」
「…………」
アンキの問いかけにウンともスンとも言わないで、ソフィアは駆けだした。
そんな彼の様子に首を傾げつつも、アンキは二人を追いかけた。
※
「あともう少しです」
「…………」
アマリアは今、理事長と共に長い洞窟を飛んでいた。
まっすぐ進む中、何度か魔獣が現れたが、二人の最低限の魔力で殺し、掻い潜る。
クインが叫ぶのと同時に、大広場にたどり着いた。
「――――なんだ、ここ」
「ここが修行が出来る場所ですよ。それと、悪いことをした生徒に罰を与える場所でもあります」
アマリアがたどり着いたのは、リヒト達が修行するために連れて来られた、魔石がきれいに浮いている大広場。
ここは、まだ襲撃されておらず、綺麗に魔石が輝いている。
「よかった。ここが襲われてしまえば、取り返しのつかないことになっておりました」
「へぇ、そうなんだ。もしかして、僕にここを守れって?」
「お願いしたいです」
クインが真っすぐアマリアを見ている。
そんな視線を送られても、アマリアは素直に頷けない。
まず、知里がどこまで行ってしまったか。
まだ、遠く離れていないのは繋がっているアマリアがわかるが、それでも今後どうなるかわからない。
ずっとここにいる訳にもいかず、どう返答しようか悩んでいると、地震が起きた。
「っ、上かな?」
「みたいですね。地上でも、何か大きな戦いが始まっているのでしょうか」
二人は上を向き、不安そうに眉を下げる。
「…………上は知里やソフィアがいるから大丈夫だと思うけど、どうなっているのかがわからないと不安になるね」
「そのお方達は、アマリア様の仲間でしょうか」
「まぁね。少なからず、信用は出来るよ。ただ、行動は信用できないけど」
アマリアの言葉にクインは首を傾げる。
信用できるのに、信用できない? と、アマリアを見返した。
「まぁ、とりあえず。ここは無事みたいだし、一つ聞いてもいい?」
「何でしょう」
「この学校に、リヒトと言う生徒が入学していたと思うんだけど、知ってる?」
リヒトの名前が出て、クインは少し驚いた。
「えぇ。ちょうど、あの扉の中で今、修行をしております」
「へぇ、修行中…………待って? ここは修行の場でもあるみたいだけど、罪を犯した人も突っ込まれるってさっき言っていなかったか?」
「はい、そうですが」
「リヒト、何かやらかしたの?」
アマリアがおずおずと聞くと、クインは頭を抱えながら答えた。
「あぁ。いや、リヒトさんは巻き込まれた側で、事態を大きくしたのはエトワールさんです」
「あー」
エトワールの名前が出され、すべてを察したアマリアは、他には深く聞かずに深い溜息を吐いた。
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