気まずい空気と焦り
「アマリア様、音魔法には殺傷能力があまりないと私は把握しておりますが、あっていますか?」
「半分正解。全方包囲攻撃魔法の場合は、殺傷能力はないけど、一直線の魔法なら運が良ければ殺せるよ」
素直に話すと、クインがシールド魔法を展開しながら頷いた。
「わかりました。では、私があのワイバーン二体を破壊します。アマリア様はサポートをお願いできますか?」
「わかったけど、何をするつもりなの?」
聞くと、クインはほくそ笑んだ。
「見ていてください。そして、タイミングを見てサポートをよろしくお願いします」
「無茶を言うね。まぁ、いいけどさ」
アマリアは、少しだけ後ろに回る。
クインは彼の様子を見て、真正面にいるワイバーン二体を見据えた。
タイミングを計り、一瞬ワイバーンが息継ぎをするために口を閉じた。
その瞬間を見逃さず、クインはシールドを消し、攻撃魔法へと切り替えた。
「flame」
まず、炎属性の基本魔法を発動。
ワイバーンは、ブレス攻撃をやめて上へと避けた。
「acqua」
次に水属性の基本魔法を発動。
上に逃げたワイバーンは、すぐに切り替えたクインの魔法に対応できず、天井に叩きつけられた。
それだけだと思っていたが、そんなことは無い。
今回発動した魔法は、ただのacquaではなく、粘着液。天井にワイバーンがくっついた。
けど、身動きが取れなくなったからと言って攻撃手段がないわけではない。
二体は口を開き、ブレス攻撃を仕掛けようとした。
「最後ですよ。――――frost」
最後は氷魔法で終わり。
天井にくっついていたワイバーンは、身動きが取れずそのまま凍り、地面へとゴトンと落ちた。
「…………魔法の切り替え速すぎ、的確過ぎ、気持ち悪い」
「管理者にそこまで褒めていただけるのは光栄ですね。では、音魔法でワイバーンを沸騰していただいてもよろしいですか?」
「あんたがやればいいじゃん。どうせ、音属性の基本魔法も扱えるんでしょ?」
嫌味たっぷりに言うけれど、クインは首を横に振った。
「私にはもう魔力が残っておりません。これ以上魔力を使うと強制睡眠に入ってしまう恐れがあり、危険なのですよ」
「…………強制睡眠に入られたら流石に困るか」
クインの言う通りに動くのは些か不本意ではあるが、アマリアは音魔法でワイバーン二体を破壊した。
「では、次に進みましょう。あともう少しで修行場のある地下にたどり着くはずです」
「わかった……けど、なんか、調子が狂うなぁ……」
クインが思っていた以上に話の通じる人で、アマリアは頭をガシガシと掻き、気まずい空気を誤魔化した。
そんな彼の心境などつゆ知らず、クインはすぐに飛び通路の奥へと行ってしまう。
アマリアは、そんな彼女の背中を見て眉間に深い皺をよせ、渋々付いて行く。
「なんか、クイン。都合よく使われてそう」
※
学校の二階へと行くと、一階と変わらず教室内や廊下は酷いありさまとなっていた。
「うわぁ、壁は何かに引っ掻かれた跡だらけ。教室内は、あえて荒らしたかのような酷いありさまだなぁ」
「血痕もあるし、酷いなぁ……」
アルカが教室の中へと入り、散乱している机や椅子を見つつ、床に付着している血の跡を見つけ眉間に深い皺を寄せていた。
魔力が漂っている。
魔獣の痕跡と考えればいいか。
「なんで、こんなことになっているんだ。それに、リヒトは!! リヒトは無事なのか!? エトワールは!?」
「落ち着け、アルカ」
「でも、この血の跡が……。もしかしたらリヒトの可能性もあるだろ!! せっかく魔法の勉強をするために頑張ってここまで来たのに、まさか、こんな…………」
アルカが顔を青くして取り乱し始めた。
焦る気持ちもわかる。リヒトが無事という証拠もない。
証拠は無い、けど、大丈夫だと思うんだよなぁ、なんとなく。
「…………アルカ。リヒトはエトワールと一緒にいるはずだ。だから、多分大丈夫」
「ほ、本当か? 本当に、大丈夫なのか?」
「エトワールは援護魔法を得意としているみたいだが、あの性格だし。数百年前にはカケルと共にSSSダンジョンをクリアした実績もある。何とか切り抜けているだろ」
エトワールの実績は、信用できる。
実力が本物でもあるし、なにより対応力が高いはず。
俺達は、出来るだけ急ぎつつも、グレール達と合流して、捕らわれてしまったロゼ姫を救出。
その途中にでも、リヒトとエトワールと合流出来たらうれしいな。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




