予想外な話
放り投げられた本は、相手の攻撃に当たると同時に炎が舞い上がった。
「っ、あれって?」
「魔道具ですよ。あれには炎魔法を閉じ込めている魔導書です。破れるのと同時に、炎が舞い上がる仕様となっています」
「そんなすごいものを隠し持っていたのか」
炎が舞い上がったことにより、魔法が霧散した。
「…………魔獣って黒いから、闇に溶け込んでいて姿がわからないな……」
「近づいてみましょうか」
クインが警戒しながら近づき始める。
肝が据わっているなぁと思いながらも、アマリアもクインの後ろをついて行く。
途中、また同じ魔法を放たれるかもしれないと考えたが、意外と放たれずに姿を確認出来た。
「…………小さいワイバーンが二体ですね」
「小さいけど、魔力量が普通のワイバーンより多い。Sランクに収まってないよね、あれ」
闇に溶け込むように飛んでいるのは、黒と白の猫くらいの大きさであるワイバーン。
おそらく、このワイバーンが協力して先ほどのような攻撃を放ったんだろうと考えられる。
「まぁ、いいや。ひとまず、殺そうか」
「そうですね」
アマリアがクインより前に出て、ワイバーンへと手を伸ばした。
「すねっ――……」
アマリアが音属性の基本魔法を放とうとした瞬間、ワイバーンが口を開いた。
それでも、アマリアは先に魔法を放てばいいと思い、その場から動かず魔法を魔力を込める。
だが、それが駄目だった。
ワイバーンの攻撃はアマリアが思っているより早く、それでいて威力があった。
――――グワァァァァアアアアアアアア!!
鼓膜を破るほどの叫び声と共に、ワイバーンから音魔法が放たれた。
アマリアは急いで後ろに下がったが、遅かった。
鼓膜が破れ、耳からは血が流れ出る。
「しまった、鼓膜が……」
「アマリア様!! 早く先ほどの魔法を!」
クインが叫ぶが、鼓膜が破れてしまったアマリアには聞こえない。
耳を抑え、痛みで顔を歪ませアマリアは顔を上げる。
目の前には、黒いワイバーン。口を開き、もう一回音属性のブレス攻撃を放とうとしてきた。
「muzier!!」
咄嗟にコントロール可能の、少しだけ威力が弱い音魔法を放った。
威力が弱くても、鼓膜を破れるくらいの威力はある為、時間は稼げる。
アマリアの思った通り、ワイバーンは苦し気に鳴き、アマリアから離れた。
「はぁ、はぁ……」
何とか怒涛の攻撃は防いだが、鼓膜が破れてしまったのは痛手だった。
クインが近づき、アマリアの服を引っ張る。
顔を向けると、何やら口をパクパクしているのに気づいた。
「悪いけど、鼓膜が破れて声が聞こえない」
アマリアが言うと、クインはすぐに右手をアマリアの耳へと寄せた。
淡い光が放たれると、片耳だけは音が聞こえるようになった。
もう片方の耳も治そうとしたが、ワイバーンが待ってくれるはずはない。
今度は、白いワイバーンが動き出した。
口を開き、二人に向けて氷のブレス攻撃を放つ。
すぐにクインがシールド魔法を展開。防ぐことは出来た。
だが、壊れるまで放つ気満々なのか、止める気配はない。
「――――クインの属性って、何?」
「私は、基本魔法をすべて使えます。ですが、応用魔法が全く使えません。なので、決まった属性はないのですよ」
「…………え? まじで?」
「まじですよ」
クインの意外な返答に、アマリアはさすがに言葉を失った。
「魔法学校を束ねる理事長がこんなんで、驚きましたか?」
「うん、驚いた。まさか、応用魔法を使えないなんて……。どうやって、この魔法学校を継続させられているの?」
アマリアが聞くと、理事長は浅く息を吐き話し出した。
「基本が、魔法では重要ですよ。応用ばかり出来ても、基本が出来上がっていなければ応用も何もできません」
その言葉に、アマリアの頭に浮かんだのは阿保面を浮かべている知里の姿。
すぐにアマリアは知里の顔をかき消し、質問を続けた。
「確かにそうかもしれないけど、それでよくも生徒も教師も着いてきたね」
「恵まれてはいたかもしれません」
「恐怖心を仰いで強制的に言う事を聞かせていたんじゃないの?」
アマリアの今の言葉に、理事長は鋭い目つきを浮かべた。
「その話、この事態を何とか出来なら聞かせてください。おそらく、アマリア様は嘘を掴まされています」
理事長の言葉には、アマリアはただただ困惑するしかなかった。
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