嫌な予感がして仕方がない
ずっと、安めの宿に世話になっていたからツムリア帝国に行くのは久しぶりだ。
中に入ると、今日も今日とて人が多い。
今まで静かな所にいたからなのか、大勢の人の声で耳が痛い。
耳を塞いでいると、隣にいたアマリアが「大丈夫?」と聞いて来た。
「大丈夫ではないが、大丈夫だ」
「…………君の大丈夫はあまり信用できないけど、この状況なら大丈夫か」
「なんでだよ」
アマリアって、変なところで過保護だよね。
めんどくさいけど、悪い気がしないのがなんとなく腹立つ。
学校に向かっていると、アマリアが途中で足を止めた。
「? どうした?」
「…………怪しい気配。なんとなく、学校と言うより……」
アマリアは何かを察したのか、学校から視線を外した。
「どうしたんだ?」
「魔力を探ってみて。アクアの言う通り、怪しい気配を感じるよ」
言われた通り目を閉じて、魔力を感じとる。
沢山の魔力が周りから感じてしまって、気が散るなぁ。
怪しい気配って、魔力から感じられるのか?
どんな気配なんだ? 感覚的に感じられるのか?
そんな疑心暗鬼状態のまま魔力を感じ取っていると、なんとなく違和感を感じた。
「ん? なんだ、この気配。魔力、なのか?」
「魔力ではあると思うよ。しかも、二つ感じるよね」
「たしかに。でも、ただの魔力ではないよな? もっと、どす黒くて体を押しつぶそうとするような気配だ」
でも、流石に遠いから体に影響はない。
なんとなく、そんな感じがするってだけだ。
「でも、近づきすぎると理事長に気づかれるよね」
「そうなんだよなぁ。ちなみに、あの怪しい気配を感じる方向にあるのって……?」
「おそらく、寮だよ。学園に通っている生徒達の」
寮、か。
まさか、この気配は生徒の誰かが出している可能性があるのか?
「リヒトからの報告を待つのも一つの手、だね」
「だが、最近頼りは届かないぞ。何かあったのか?」
「それは、僕に聞いてもわからないよ」
それもそうか。
まぁ、今は突撃する訳にもいかないし、何か被害が出ている訳じゃない。
被害が出てからでは遅いけど、急ぎ過ぎてもこちらの動きが制限されてしまうかもしれない。
「怪しい気配は感じた。もう少し調べてから動き出そうか」
「それもそうだな」
今すぐは、動かない。
リヒトだけなら不安だが、エトワールがいるしな。
解決は難しいかもしれないけど、時間稼ぎはしてくれるだろうし、連絡もくれるはず。
それを期待して待っていようかなぁ。
「チサト様?」
「あ、あれ? グレール? と、ロゼ姫じゃないか。なんか、久しぶりな気がするな。どうしたんだ?」
グレールとロゼ姫とは、ずっと別行動をしていた。
魔法道具はいつ見ても、何を見ても楽しいらしく、時間がいくらあっても足りないらしい。
「魔法道具を見て回っていると、久しぶりにチサトさんを見つけたので」
「なるほど。まだ魔法道具を見ていたのか」
「えぇ。一週間に一度は品揃えが変わるのです。なので、本当に飽きませんよ」
クスクスとロゼ姫が笑っている。
本当に楽しいんだな。
グレールも、ロゼ姫と一緒にいられるからなのか、表情が柔らかい。
「ところで、チサト様達はなぜここに? 何かご用事があったのですか?」
そう言えば、グレール達は安い宿じゃなくて、こっちの高い宿に泊まっているんだったな。
それだったら、怪しい気配に気づいているかもしれないし、聞いてみるか。
「なぁ、学園から怪しい魔力の気配を感じないか?」
聞くと、二人は顔を見合わせて、首を傾げた。
「いえ、私達は特に感じません。何かあったのですか? もしかして、リヒトさんに何か!?」
「お、落ち着け、ロゼ姫。そこまでわかったわけじゃない。なんとなく、怪しい気配を感じたから見に来ただけだ」
興奮して来たロゼ姫をなだめて伝えると、グレールが顎に手を当て考え始めた。
「…………少し探ってみますね」
「任せてもいいのか?」
「さすがにリヒト様の危機かもしれませんので、動きますよ」
グレールの感覚は鋭い。
期待は出来る――――と思ったが、今の段階で気づいていないんだよな?
なんか、嫌な予感がする。
なにか、大きな出来事が起こるような、そんな気がする。
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