怪しい気配と言うのがなんとなく気になっちまう
模擬戦は、俺が思っていた以上に長時間続いていた。
それはもう、アルカの体力が底尽きるまで。
休憩なく、ずっと動き続けていた。
「やっば……」
「覗き見は楽しかったか?」
「あ、あぁ。ものすごく、楽しかったぞ」
「今度は、お前の模擬戦をしてやろうか」
「遠慮して置く」
さすがのソフィアと、少しだけ息を切らせいている。
汗を拭っているソフィアも珍しいけど、アルカの姿の方が珍しいな。
「声すら出ないくらいに疲れているアルカって、今まで見た事がないかもね」
アマリアの言う通り、アルカはもう立っていられないくらいに疲れてしまったらしい。
地面に突っ伏して、息を整えている。
汗も酷そうだなぁ。
つーか、うつ伏せで倒れ込んでいるけど、大丈夫か?
それ、息できているのか?
「それで、お前らはなんでこんな所にいる? こいつに用か?」
「今回はアルカじゃなくて、アクアに用事があったんだが…………」
結局、アクアは戻ってこなかった。
模擬戦は二時間以上続いていたから、もちろん俺の魔力は洩れてアマリアにどつかれている。
今回のは、時間経過もあるだろうけど、ソフィア達の模擬戦に集中しすぎてしまった結果でもある気がする。
「銀髪野郎か。そういや、今日は戻ってきてないな」
「いつもはここにいるのか?」
「多分な」
「多分?」
なんでそんなに曖昧なんだ?
「俺も、茶髪に気を使いながら、気配を消している銀髪野郎の行動まで把握できん。あいつは気配を隠すのも得意らしいからな」
「それもそうか」
ソフィアが強いから何でもできるとは思っていたが、ここまでレベルが上がったアルカを相手にしながら、元管理者であるアクアの気配を辿るのは無理か。
てか、なんで気配を消していなくなっているんだ? アクアの目的がわからん。
「まさか、どこかで戦闘を吹っ掛けて殺してないだろうなぁ?」
「それはないよ。アクアはあくまで命令されて処罰を下していただけで、殺人兵器ではないから」
「それならいいが…………」
アマリアはそこまで慌てていないし、俺が気にし過ぎなのか?
でも、流石に無視はできないだろ。
だって、あのアクアだぞ?
何をしでかすか予想が出来ない。
「…………そんなに気になるの?」
「めんどくさいことを呼び起こさないかは本当に心配だ」
「まぁ、それもそうだけど…………」
今まで何もなかったし、大丈夫と言えば、大丈夫かぁ?
そんなことを話していると、魔力の気配を感じた。
それは、俺の後ろ。
俺以外の奴も気づいたらしく、視線を向けた。
近付いてくる気配には、悪意を感じない。
だが、油断はせず魔導書を構える。
他の奴らも、すぐに動けるようにそれぞれがそれぞれの武器を構えた。
アルカもさすがに気配を感じたのか、体にムチ打って立ちあがり、剣を構えた。
「――――おい、誰だ」
問いかけると、木々の中から現れたのは、予想外な人物。
「あ、アクア?」
現れたのは、なんでそんな姿になっているのか理解ができないほどに泥だらけな、アクアだった。
「…………おやぁ?? みんなから殺気を感じてものすごく楽しいですねぇ〜。どうしたんですかぁ? 戦ってくださるのですかぁ??」
めっちゃニコニコしながら魔力を両手に込めて近づいて来る。
怖い、殺気は感じないのに視覚情報だけで普通に怖い。
「はっ。い、今すぐ放っている殺気を押さえろ!!! めんどくさい戦闘が始まるぞ!!」
「おやぁ?? なんでそんなこと言うんですかー!! 私は戦いたいですよ~」
泣きそうな顔を浮かべるな、アクアよ。
お前と戦うのは、正直めんどくさい。
強いんだよ、お前。
俺は、片手間に相手が出来る奴としか模擬戦はしたくない。
今は、俺が強くなるためにアマリアに付き合ってもらっているけど。
付き合う側の場合は、片手間に相手が出来る奴じゃないと嫌だ。
「ところで、お前は今までどこにいたんだ? アルカの修行に付き合っているのかと思っていたが、そうでもないらしいし」
聞くと、アクアはニコニコしながら教えてくれた。
「なんかぁ~、学校の方で怪しい魔力を感じているんですよ~。本当に微弱で、感じ取りにくいので、少しだけ見てこようかなぁと」
「学校の方で、微弱な怪しい魔力の気配? 授業か何かではなくてか?」
「それとはまた別な気がするんですよ~。本当に怪しいというか、変な感じなんですよね~」
アクアの言葉は曖昧で、よくわからん。
でも、学校から怪しい魔力の気配は、少し気になるな。
リヒトは大丈夫なのか?
まぁ、あいつも頑張っているだろうし、大丈夫……か?
「…………少し、覗いてみる?」
「あぁ。さすがに少し、気になるしな」
アクアが言っているのが、また引っかかるからな。
アマリアも、なんとなく気にしているみたいだし、俺達はソフィアに一言言ってこの場を後にした。
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