笑っている人って、なんでこんなにも怖いんだろう
朝飯を食べ、朝の修行中。
ベッドの上で目を閉じ、魔力を完全に抑え込む。
集中力を切らさずに、冷たい感覚を保ち続ける。
もう、二時間は経っただろうか。
三時間が当面の、俺の目標だ。
三時間は完全に押さえ込む。
息を吐き、肩の力を抜きながら魔力を――……
「はい、魔力が微かに洩れた。今回は今までで一番長いけど、三時間までは一歩届かなかったね」
「…………くっそが」
また、魔力が微かに洩れたらしい。
本当に、自分じゃわかんねぇな。
息を思いっきり吐く。
あーあ、三時間行かなかったかぁ。
「あと十分だったよ。もう少しだけ粘れたら目標達成だったね」
「つーか、何で三時間なんだ? 俺も二時間行けたんなら三時間も行きてぇなとか思っていたが、そこまでこだわらないといけないのか?」
飛んでいるアマリアに聞いてみると、小さく頷かれた。
必要なのかぁ……。
「三時間が達成できれば。ひとまずは管理者に近付けるよ」
「三時間もかけて近付くことがあるのか?」
「クロヌを倒したいのなら、あるかもしれない。あの人は魔力に敏感なんだ。察知できる範囲も広いし、どんなに小さな魔力でも感じ取られてしまう」
ふーん。
まぁ、俺からしたらラスボスだもんな。
こんだけの冒険をさせておいて、あっという間に倒せたら、俺の今までの冒険は何だったんだよってなる。
「それでも二時間あればできるとは思うけど、三時間あった方が安心かなって思うんだよね」
「余裕をもって修行してんのか」
「必ず勝ってほしいから」
「ん?」
アマリアの声が一瞬、沈んだ気がした。
視線を向けてみるけど、今はいつもの無表情に戻っていた。
「それじゃ、今日は模擬戦もしてみようか」
「わかった。今日も相手はアマリアか?」
「そうだね。本当は違う人を持ってこようと思ったけど、今はそれどころではないと思うから」
声が沈んだかと思えば、次は遠い目を浮かべている。
なにかを諭しているような目だけど、何があったんだ?
「それじゃ、行こうか」
「お、おう」
なんか、深く追求してはいけない気がするから、辞めておこう。
俺の相手になる予定だった奴が、今は危険な目に合っている。
…………アルカかな?
※
宿から外に出て、森の開けた場所に移動した。
「それじゃ、僕は魔力を借りることになるけど、そのは勘弁してね」
「おうよ」
それに関してはもう慣れたわ。
「それじゃ、開始」
いつもの、やる気のない号令。
開始と言われても、互いにすぐには動かない。
お互いに見合い、タイミングを計る。
「…………」
「…………」
魔力を完全に抑え込む。
すると、気配までもが消えるらしいから、タイミングを計っている人からしたら察知が遅れるらしい。
――――っ!!
魔導書を開き、抑え込めていた魔力を大量に右手へと集めた。
その時間、コンマ数秒。
「flame!」
進化版のflameを出す。
アマリアは瞬時に体を捻り、flameを避けた。
一瞬だけ、視線が外れる。
その隙に膝を折り、アマリアの視界から完全に外れた。
アマリアへと走り、低姿勢のまま上に突きあげるように弓を構える動きをとる。
「flamaArrow」
炎の弓をアマリアに下から放つ。
「vibration」
flameに気を取られていたはずのアマリアは、全体方向への音魔法を放った。
耳が痛む!!
すぐに離れ距離を取ったが、アマリアは体勢を整わせる時間を与えず、一瞬のうちに俺の前まで移動して来た。
「sunet」
「ぐっ!!」
sunetは、そこまで遠くの人物までは届かないし、範囲も狭いとアマリア自身が言っていた。
だから使いづらく、あまり使わないらしい。
俺は、アマリアの右手から逸れるように体を捻る。
耳を掠り痛みを感じたが、何とか避けきれた。
すぐに後ろに跳び、アマリアと距離を取る。
「――――動き出しや魔法を放つスピードが格段に速くなったね。その調子だよ」
「あんがとよ」
笑っているアマリア程怖い物って、怒っているリヒトくらいなんじゃないかと思い始めた。
だって、笑った時のアマリアって、次は何を仕掛けるのかを考えてワクワクしている時なんだもん。
今迄の模擬戦でアマリアの動きや考えは読めるようになってきたけど、楽しんでいる時のあいつはマジで無鉄砲な時があるから怖い。
「それじゃ、行くよ」
「はーい」
そんな事も言ってられないし、模擬戦、頑張ります。
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