命を懸けなければ
アマリアは一人、宿から出て森の中を飛んでいた。
誰かを探しているように視線を至る所に向けている。
「…………」
アマリアが探している人物を見つけたのは、森の中をさまよい続け一時間経った頃だった。
「──いた」
アマリアの視線の先には、森の中で野宿をしているソフィアとアンキの姿があった。
二人は、木に背中を預け、寝ていた。
いつでも動けるように座って寝ているのかなと思いながら、アマリアはソフィア達に近づいていく。
開けた場所に着いた瞬間、ソフィアは急に目を開き姿を消した。
次の瞬間、後ろから気配を感じた。
振り向く時間すら与えずに、ソフィアは銃口をアマリアの頭に向けていた。
「…………流石、ソフィアだね。一応、気配は消したいたんだけど」
「そんなのは無駄だ。すぐに分かる」
「寝ていたんじゃないの?」
「寝ていたぞ。だが、気配はいつでも感じられるようにしている。いつ、殺されてもおかしくないからな」
ソフィアは元殺し屋なため、野良のモンスターや盗賊だけでなく、元同種である殺し屋にもターゲットになっている。
だから、ソフィアは深く眠ることはない。
アマリアが両手を上げ殺意がないことを示すと、ソフィアはまだ疑いながらも拳銃を下ろした。
「よかった。身動きが出来なくて、生きた心地がしなかったよ」
「嘘を言うな。俺が後ろに回った時は微かに驚いたらしいが、すぐに平静に戻っただろう」
「まぁ、脅され慣れているし、殺されても別にいいし」
アマリアが当たり前のように言い切ると、ソフィアは眉間を一瞬だけ顰めた。
「お前、なぜ殺される恐怖を感じない?」
「え? そりゃ、まぁ。生きていても、死んでも特に変わらないから……かな」
アマリアの言葉に、ソフィアは意味が分からず頭を抱えた。
何とか理解しようと頭の中で情報を整理しようとしたが、やっぱり無理。
「…………そうか。だが、その気持ちは捨てた方がいいぞ」
「え、なんで? 恐怖がないのはいい事でしょ。さっきみたいな状況になったとしても、すぐに平静に戻れるわけだし」
今度は、ソフィアの言葉にアマリアが首を傾げる番だった。
「恐怖を感じないというのは、成長できないのと同じだぞ」
「なんで?」
「目的がなくなるからだ」
「目的……」
目的と言われると、アマリアは顎に手を当て考え込む。
「…………恐怖心が、目的と合致しているの? どこが?」
「恐怖心は、ここから逃げたいという気持ちだ。逃げたいという強い気持ちがそいつの隠されている力を最大限に出す…………時がある」
ソフィアの最後の言葉に、アマリアは表情は変えないものの、彼を何か言いたげに見つめる。
その視線に気づいているにも関わらず、ソフィアは気にせず目を逸らした。
「まぁ、感情はない方が有利な場合もあるしな。結論、どっちでもいい」
「そう」
「それで、何か用か?」
話を強引に切り替えたソフィアに、アマリアはハッとなり視線をソフィアに向けた。
「アルカの調子はどうかなっていう確認。成長はした?」
「センスは悪くねぇ。今は、それしか言えん」
「あまり成長していないの?」
不安そうに問いかけると、ソフィアは首を横に振った。
「そういう訳ではない。成長はしているだろう。だが、まだあいつの持っている力を引き出せていない。さすがに時間もないしな、次はもっと強引な手を使う予定だ」
「強引な手?? どんな感じ?」
「命を懸けた修行だ」
元殺し屋であるソフィアの、命を懸けた修行と言う言葉にアマリアは不安しかない。
「…………殺さないでね?」
「さぁな。本当に死ぬかもしれないと思わない限り、あいつは成長しないかもしれないしな。そこは、あいつ次第だ」
ソフィアの言葉が本当なのか冗談なのか察知できないアマリアは、眉を顰めるしか出来ない。
そんな、アマリアの心境など無視し、ソフィアは顔を逸らした。
「用が済んだのなら、もう戻れ。俺は寝る」
「わかった。起こしてごめんね」
その言葉に、返答はない。
ソフィアは、元々寝ていた場所まで戻り目を閉じた。
寝ているように見えるソフィアだが、隙は全くない。
また、アマリアが近づけば、先ほど寸止めだった拳銃に硝煙が上がるかもしれない。
余計なことはしないと近い、アマリアは来た道を静かに戻って行った。
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