なんだか、変な人だっけど安心してしまうのはなんでだろう
エトワールさんの傷は、結構酷い。
致命傷は避けているみたいだけど、血が大量に流れている。
「治せるか?」
「わからない。けど、やってみる」
ここまでの酷い傷を完治は、さすがに難しい。
それと、時間がかかってしまう。
それに…………。
「キロンニス先生、大丈夫かな」
「問題なさそうだぞ」
ビジョンさんがキロンニス先生を見ながら教えてくれた。
私も、傷口に手を添えながらキロンニス先生をちらりと見てみた。
「…………すごっ」
「理事長が送り込んだだけの実力ってことだな」
言いながらビジョンさんの目が輝いている。
それも、そのはず。
属性の相性は最悪なはずなのに、キロンニス先生の炎の鳥がヒュドールの水攻撃を蒸発させていた。
「魔力は、キロンニス先生の方が低いはずなのに、なんで蒸発できているの?」
「おそらく、今までキロンニス先生は浮遊魔法しか使ってこなかった。ヒュドールは、さっきから俺達と戦うために魔力を使ってきた」
「つまり、魔力が減っているから今では、キロンニス先生の方が魔力が上回ったってこと??」
「その可能性が高い」
それなら、安心だ。
キロンニス先生も余裕そうだし、私は今、エトワールさんを治すことに集中しよう。
手に魔力を集中させて、怪我を治す。
貫通まではしていないみたいだけど、それでも深い。
エトワールさんは意識も失っているし、早く治さないと本当に命が危ないかも。
「……すげぇ」
「え?」
こっちの心情など全く気にしていないビジョンさんが、笑みを浮かべながら感激していた。
咄嗟に顔を上げると、私は感激と言うより唖然としてしまった。
「あれは、炎の海?」
ヒュドールのいる地面が、赤く燃え上がっていた。
な、なに、あれ。
「まだ、何かあるぞ」
ビジョンさんの言う通り、キロンニス先生がポケットに入れていた手を出し、上にあげた。
連動するように地面を這っていた炎が波のように盛り上がる。
怯えているように見えるヒュドールが地面に水を作り、中に逃げようとした。
「逃がすかよ」
キロンニス先生がそれを先読みしており、すぐに地面は赤く染まる。
逃げ道を失ったヒュドールは、大量の波を操りキロンニス先生に襲わせた。
けど、血迷ったような攻撃で隙だらけ。
それをキロンニス先生が見逃すわけがない。
「――――birdoflame!
は、はやい!!
すぐさま炎の波を消して、炎の鳥へと魔法を切り替えた。
炎の鳥は光の速さでヒュドールを貫通。
小さな体は霧散し、水となり地面へと落ちた。
次が、来る?
数秒間身構えるけど、何もない。
「魔力が消えた、よな」
「た、たぶん」
唖然としていると、キロンニス先生が頭をガシガシと掻きながら私達へと戻って来た。
「そいつの傷はどうだ」
「は、はい。少しずつ治してはいますが、まだ目を覚ましてはいなくて…………」
「それはないんじゃないか? もう、目を覚ましているように見えるぞ?」
「え?」
みんなでエトワールさんを覗くと、徐々に肩が震え始めた。
「…………エトワールさん!?」
「あははははっ!! みんな無事でよかったね!!」
エトワールさんは我慢できなかったというように笑い声を上げながら立ち上がった。
な、何が起きたの? 私、まだそこまで傷を治しきれてないのに。
茫然とエトワールさんを見ていると、私の肩に手をポンッと置いた。
「助かったよ、リヒトちゃん。本当に、助かったよ」
「で、でも、私そんなに治せていないはずですよ? なのに、なんで」
エトワールさんのお腹を触ってみるけど、服が破れているだけで、傷は本当に塞がっているみたい。
あんなに大きな傷を、私が完全に治せるわけがない。
エトワールさんが自分で自分を治したんじゃ??
「リヒトちゃんの魔力が高まっているんだよ」
「高まっている?」
そんなことないと思うけど。
実感無いし……。
「最初の頃より、集中力が高まりやすくなっているの。だから、魔法も強くなり威力が上がり、回復魔法も精度が上がったんじゃないかな」
「あ、あの、確認なのですが、私の機嫌をよくするためにわざとそんなことを言っているのではないですか?? エトワールさんが自分で治した傷を、私が治したと言っていませんか?」
「疑いすぎじゃない?」
でも、そうとしか考えられなくて……。
「安心してよ、私は嘘は言っていない。それに、もしリヒトちゃんが最初に会った時と変わっていなければ、私は自分が危険な目に遭うような助け方はしないよ」
その言い方、まるでそんな大きな傷を負わなくても大丈夫だったような言い方ではありませんか?
「私は、自然とリヒトちゃんの力は上がっていると感じている。今までの冒険者としての経験も培われているんだよ!」
そんな、プラスに考えてもいいのかな。
私、本当に成長しているのかな。
わからない、本当に実感がない。
「それに、今回は氷魔法も取得した。絶対に成長しているよ、だから安心して」
エトワールさんに頭を撫でられた。
エトワールさんが死んでしまうかもと思っていたのに、こんなに余裕そうにしている。
本当に、この人は変だ。
でも、安心できる。
「────ありがとうございます」
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