属性が不利なのに、なんでそんなにも冷静でいられるの?
避ける場所もない、呑み込まれてしまえば終わり。
それでも、何故か頭は冷静で、氷魔法を発動していた。
「す、すっげ……」
「綺麗ねぇ~」
目の前には、凍り付いたヒュドールが私に襲いかかる形で氷っていた。
私が、凍らせた……。
「はぁ、はぁ…………」
まさか、本当に氷魔法を発動できるとは思っていなかったから、正直めっちゃ驚いた。
でも、なんだか、カタカタと音を鳴らしているから長くはもたないかも。
ビジョンさんはどうだろうか、本体は見つけられたのかな。
「ビジョンさん!」
「あぁ、見つけたぞ、本体」
ビジョンさんが、いつの間にか臨戦態勢を整えていた。
手には炎を灯し、カツン、カツンと音を鳴らし歩く。
私が凍らせたヒュドールの横を通り抜けて、最初に滝が流れていた洞窟の奥まで移動した。
今は私がヒュドールを凍らせているから、奥は空。
なにも流れていなくて、濡れた痕跡が残っているだけ。
ビジョンさんがそんな壁に手を伸ばし、何かを探している。
私の隣では、エトワールさんが楽しそうにニヤニヤしていた。
まるで、これから何が起きるのかを予想しているみたい。
「――――flame!!」
なにかを見つけたビジョンさんが手に灯していた炎を、壁に向けて放った。
瞬間、けたたましい鳴き声が洞窟内に響き渡る。
耳を塞ぎ何とか耐えるけど、それでも痛い!! 耳が、脳が破裂しそうだ!!
「ビジョン!! 早く離れて!!」
「わかったよ!!」
すぐにビジョンさんが駆け出し離れると、炎で壊れたであろう壁が爆発を起こした。
離れていなければ、ビジョンさんがどうなっていたかわからない。
爆風が私達を包み、視界が遮られる。
「な、なにが――……」
何が起きたのかわからない。
そんな時、エトワールさんが急に焦ったように駆け出し、私の前に移動して来た。
「えとわっ―――」
――――――――ザシュッ!!
「────えっ?」
目の前に、鮮血??
赤い。視界が、赤く染まる。
「エトワール!!!」
ビジョンさんの声と同時に、私の目の前に移動したエトワールさんが地面に倒れ込んでしまった。
腹部からは、大量の血。
地面が、赤く染まる。
キロンニス先生が慌てて自身の服を破り、エトワールさんの腹部に押し当て止血を始めた。
何が、起きたの?
なんで、エトワールさんが倒れているの?
「おいおい、ふざけるなよ?」
ビジョンさんの、恐怖の混じった声が聞こえ、思わず顔を上げた。
すると、そこに広がっている光景に思わず絶句してしまう。
「…………なっ。あれが、本体?」
目の前には、まるでカガミヤさんと共に居る精霊のような、可愛い小さな水の女の子が杖を持ち、私達を見据えていた。
「ど、どういうこと? もしかして、ここって中ボスは、精霊だったの? ヒュドールは?」
「いや、あれがヒュドールだろ。精霊がこんな所にいる訳がない」
ビジョンさんの言う通り、精霊がこんな所にいるわけがない。
こんな扱い方をされる訳がない。
それなら、あれがヒュドールの本体。
さっきのビジョンさんのflameでは倒しきれなかったんだ。
しかも、無傷に見えるけど、マジで?
結構な威力を放っていたように見えたけど、それでも無傷なの?
属性的に不利な部分はあったけど、それでも無傷はさすがに酷い……。
「あんな小さな精霊のようなモンスターが、今回の相手か。当てるのすら難しそうなのに、さっきのフレイムで無傷はかなり精神的にきついよ~」
つい弱気になってしまう。
ビジョンさんの攻撃魔法しか、私達は今、攻める術がない。
それなのに、その攻撃魔法が全く効果がない。
「おい、お前。確か、回復魔法を持っていたよな」
「は、はい」
「さすがにこの状況は放置できないから、俺が時間を稼ぐ。お前は、早くエトワールをどうにかしろ」
「わ、わかりました」
とは、言ったものの、キロンニス先生はどうするつもりなんだろう。
エトワールさんをビジョンさんが抱え、後ろに下がる。
そんな私達を目で追っていたであろうヒュドールが動き出した。
手に持っていた杖を頭の上まで上げると、凍りついていた水がガタガタと大きく動き出した。
私の慣れていない氷魔法が、簡単に崩れてしまった。
っ! 私達の後ろ!! やばい、もう一回凍らせないと!!
「おいおい、俺を無視してんじゃねぇよ!! birdoflame」
キロンニス先生の魔法だ。
って、炎の、鳥??
「まさか、キロンニス先生の属性も炎!?」
「相性最悪だなぁ~」
マイペースに言っているけど、そんなこと言っている場合ですか!?
「行ってこい」
炎の鳥がキロンニス先生の合図で動き出した。
勢い良く動き出した炎の鳥は、私達に襲い掛かる波に突っ込んだ。
「大丈夫なの!?」
──って、大丈夫、そう?
というか、波の方が霧散した??
「おいおい、早くそいつを回復してやれ。死ぬぞ」
「は、はい」
壁側まで離れて、ビジョンさんがエトワールさんを優しく地面に下ろした。
そんな私達を見ていたキロンニス先生が、楽しげな声を上げた。
「さて、倒しはしないが、時間は稼がせてもらうぞ」
ここまで読んで下さりありがとうございます!
出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!
出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ




