強くなりたいけど、無茶ぶりだけは本当にやめてほしいです
「あいつの場合は、潜り抜けて来た場数が違う。ヒュドールの方が魔力が多かったとしても、強いイメージで互角まで持っていけるだろ。だが、それもさすがに限界がある。あいつはもう、持たんぞ」
「えっ」
再度エトワールさんを見ると同時に、ヒュドールが大きく左右へと広がった。
「やっばい!!!」
「早くこっちに来てください!!」
エトワールさんが必死に私達の方へと走った。
本当にギリギリ、波に巻き込まれずに済んだ。
「はぁ、はぁ。さすがに、これは強いねぇ。氷属性に有利なダンジョンに作り上げているみたい」
「確かに……。でも、氷属性なんて誰もいませんよ!!」
「そうなんだよねぇ〜。どうする?」
私に聞かれても……。
でも、ここは私にとっても成長の時。
話していると、ヒュドールが徐々に地面から浮き上がる。
見てみると、波のように私達へと襲い掛かってきた。
「巻き込まれると水の中に取り込まれるよ!!」
エトワールさんの言葉と共に、必死に全員逃走。でも、追いかけてくる!
「ちっ!! flame」
手を後ろに回し、ビジョンさんが炎の弾を出す。
けど、簡単に呑み込まれてしまった。
「相性も悪いから仕方がないねぇ」
「ちっ」
物理攻撃も効かないと思うから、鎖は絶対に無理。
他に私が出せるのは、同じ属性の水魔法だけ。
「――――――――私の中には、色んな属性が混じっているってアマリア様が言っていた」
でも、どうやって出せばいいの?
出し方は? イメージは?
こんな、切羽詰まった状態で試していいの?
失敗したら? みんなが危ないかもしれない。
でも、もし私の中に有利な氷属性が隠れていたら、この場は簡単にくぐり抜けられる。
だから、やりたい。
チャレンジ、してみたい。
「リヒトちゃん」
「っ、エトワールさん?」
逃げながら、エトワールさんが私に近付いて来ていた。
「いいんだよ」
「え?」
「戦いは、自由なの。やりたいと思ったら、やればいい。出来るか出来ないかじゃなくて、やるかやらないか、でしょ?」
エトワールさんの笑顔と言葉で、肩に入っていた力がすぅーと抜けた気がした。
もしかしたら、私は誰かからの許可が欲しかったのかもしれない。
やってもいいよって。
失敗してもいいよって。
その言葉で、安心したかったのかもしれない。
「ありがとうございます!!」
「頑張って、ヒュドールを倒してね♡」
「…………努力はします」
なんでそこで、そんなハードルを上げるんですか。
「ふぅー……」
覚悟を決めて、集中力を高める。
大丈夫、氷魔法は近くで何度か見た。
それを強くイメージすれば、出来る!!
足を止めて、振り返る。
すると、波はまだ迫ってきていた。
「イメージ!! frost!!」
杖を前に出し、グレールさんの魔法をイメージした。
けど――……
「っ!! やっぱり私には無理ですーー!!! ――わっ!!」
迫りくる波が私に到着する一歩手前で、キロンニス先生が私を抱えて波の進行方向から逸れてくれた。
「あ、ありがとうございます……」
「あいつが『無理だと思うから助けてあげて』と言っていただけだ」
「あはは……。エトワールさん!! 出来ないと最初から分かっていましたね!?」
エトワールさんを見ると、余裕そうに笑っている。
なんでそんなに余裕でいられるのか。
しかも、一歩間違えれば私、死ぬところだったんですけど!?
「今、氷魔法の基本攻撃魔法を出そうとしたのか?」
「は、はい」
「出し方は属性それぞれ違うから、今まで通りに出そうとしても難しいぞ」
や、やっぱり、そうなんだ。
私は今、水魔法しか出したことがない。
鎖魔法と回復魔法はまた別だけど……。
「教えている時間はないんだよなぁ」
「えっ? キャァァァァアアア!!!」
後ろを見ると、また波がお襲い掛かってくる!!
やばいやばいやばい!!
「~~~~~~~~~~lehrd!!」
壁を作るイメージで咄嗟にシールド魔法を出した。
すると、水を塞き止められた。
「すっげ」
「咄嗟です。咄嗟の馬鹿力です」
まじで、怖い!!
波は本当に怖い!!
「リヒトちゃんは追い込めば追い込むほどに力を発揮するタイプなんだよね」
「怖いこと言わないでください」
「でも、私はそう思っているの。だから、強くなりたいならこの試練、頑張って」
エトワールさんって、本当は私が嫌いなんじゃないかなぁ。
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