何でそうなるんですか!!
次から次へと、魔獣を倒していった。
エトワールさんが場所を掴み、私が鎖魔法で動きを封じる。
すかさずビジョンさんが炎魔法で燃やし終了。
残り一体まで減らせて嬉しいはずなのに、なんだか胸騒ぎがする。
本当に、このまま何事もなく進むのか、わからない。
廊下を走っている今も、不安が胸を占める。
いや、大丈夫。大丈夫だよ。
だって、ビジョンさんも強いし、エトワールさんもいる。
私が弱くても、大丈夫。
だって、二人は強い。だから、大丈夫。
「リヒトちゃん」
「っ。は、はい」
「何か思っていることがあるみたいだけど、どうしたの?」
前を走るエトワールさんが、肩越しに私へと問いかけて来る。
「い、いえ。なんでもないですよ」
「そう? 何かあればすぐに言ってね。女の勘というものは、意外と当たるんなんだから。リヒトちゃんみたいな、余計な知識がない純粋な子の勘は、特にね」
目を細めて、エトワールさんがそんなことを言った。
私みたいな、余計な知識を持っていない人ほど??
「…………本当に勘で、なんにもないんですけど。なんか、不安があるんです。このままスムーズに終わるのか、わからなくて……」
素直に言うと、ビジョンさんも私を肩越しに見た。
エトワールさんは私の言葉を聞いて、足を止めた。
「なるほどねぇ~」
「あ、あの。でも、確証はないんです。本当に、なんとなくですよ」
慌てて言うけど、エトワールさんの耳にはもう私の声が届いていないみたい。
瞬間、地響きのような大きな音が学校全体に鳴り響いた。
「な、なに!?」
地震ではない。
それにしてはおかしい揺れ方だ。
立っているのが難しく、壁に手をついてなんとか踏ん張る。
「これは、最後の一体が暴れているのかもしれないわね」
「暴れている!? なんで!?」
「魔獣を解き放った人が、何かしたのかもしれないわねぇ~。まぁ、どっちにしろ、気配は強くなって見つけやすくなった。行きましょう」
エトワールさんが先に走り出し、慌てて追いかける。
ビジョンさんも、何が何やらわからないと言うような顔を浮かべているけど、付いて来てくれた。
「この気配って、体育館??」
「みたいだね。その辺に解き放っていないということは、どでかいのかな? それか、数が多いのかな? わからないけど、頑張ろー!!」
やっぱり、エトワールさん、この状況楽しんでる……。
※
体育館に走っていると、徐々に気配が濃くなってきた。
体に圧がかかり始め、足が重たい。
これは、大きいのが一体、かな。
多分、数が多いだけだったらここまで強い圧は感じないはず。
足音や鳴き声も聞こえない。
「ちょっと、やばいかもしれないね」
「絶対に殺される…………」
エトワールさんとビジョンさんも圧を感じている。
怖いとは思う。けど、倒せる。
絶対に、倒せる。大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら走っていると、体育館にたどり着いた。
扉の前で息を整えていると、後ろから声が聞こえた。
「おい! お前ら! 何をしてんだ!」
「キロンニス先生!!」
そこには、一切息を切らしていないキロンニス先生が慌てた様子で走ってきていた。
「お前ら、教室で待機してんじゃなかったのかよ」
「気配を感じたので、つい体が動いてしまいましたー」
「犯人はお前か、詐欺魔法使い」
「詐欺魔法使いは笑います」
エトワールさん、笑っている状況ではありません。
怒られる。なんて言われてしまうんだろう。
いや、まず学校に残れるのかも不安になってきた。
それはビジョンさんも同じらしく、さっきより顔が青い。
「ひとまず、お前らはここにいろ。この中にいる奴は俺が殺す」
「いやいや、待ってくださいよ。ここはリヒトちゃん達がやりますよ」
「え? なんで私なんですか!?」
普通、そこは何か言うにしろ、「私達がやります」とかじゃないの?
なんでそこで、私の名前が出るんですか!!
思わず突っ込むと、エトワールさんが笑顔を私に向けた。
「だって、私は危険な時しか手を出さない予定だもん。ここは、二人にお願いしようと思っていたから」
エトワールさんの言葉に私とビジョンさんの視線が重なった。
「「はぁぁぁぁぁああああ!?!?」」
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