それぞれの授業態度
「魔力の操作は、基本体中に巡っている魔力を探知してから始まるのですが、皆さまはその基礎は出来ていますよね? なら、次に気を付ける事は意識です」
リヒトは、しっかりとノートを取り、教師の言葉に耳を傾ける。
「頭の中で、厳密に何がしたいかを想像するのですよ。炎を出したい、こんな感じで出したい。それを、頭の中でイメージするのです。このようにね」
教師が右手を上げ、炎魔法を灯した。
それは、まるで犬のように見える。
リヒトは目を輝かせ「すごい」と頬を緩ませる。けれど、それを口にしてはいけないという空気が教室を占めているため、伸びた背をすぐに縮こませる。
「このように、私は今、頭の中で犬を浮かべながら炎魔法を出しました。そして、この魔法を消さないで猫にも変えられます。これも、イメージですね」
「イメージ」と、リヒトは呟く。
ふと、周りに目を向けた。
机は、一人分間が空いている為、わからないことがあったとしても、隣の人に聞けない。
無駄な話をさせないための仕様だというのはわかるが、なんとなく寂しい気がしていた。
「そして、イメージを強くすればするほど、魔力を多く使います。そして、その魔力には限界がある。それは人それぞれ異なりますね」
黒板に魔法で文字を書きながら、教師が授業を続ける。
リヒトは、周りに向けていた視線をノートに戻し、再度黒板の文字をノートに移し始めた。
「それで、その限界を引き上げる事が出来ます。それは、筋力」
教師が笑顔で言うと、生徒の数人からどよめきが聞こえた。
これは、アマリア様から教えてもらったなぁとリヒトは、過去のアマリアから受けた修行内容を思い出し、顔を青くした。
すぐにかぶりを振り、授業に意識を戻す。
「筋力が上がれば、魔力も多少は上がります。さすがに生まれ持った才能なため、筋力を上げれば魔力も膨大になるとは限りませんが、確実に今日の自分よりは魔力が上がります。なので、日々の筋トレは欠かさないでくださいね」
笑顔で言い切った直後に、授業を終らせる鐘がなった。
教師は「今日はここまで」と、授業が切り上げられる。
リヒトは「ん--!!」と伸びをし、休憩しようと立ち上がろうとした。
だが、ふと、周りの空気に違和感を感じ止まる。
周りを見ると、皆、授業をしていた姿勢から動こうとしない。
ノートを取り、復習をし、魔力をコントロールをして先ほど教師が行っていた魔法を試している人ばかり。
今は、休憩の時間。しかも、休憩はたった五分。
授業は一気に一時間半行う為、体や頭を休憩させた方がいい。
そう思うのに、何故か皆、休もうとしない。
立ちあがったリヒトだけが、この場で浮いている。
困惑していると、後ろから咳払いが聞こえた。
振り向くと、不機嫌そうに顔をゆがめている生徒と目が合う。
まるで、リヒトを邪魔者のように扱うその瞳に負け、一度立ちあがったがすぐに座り直す。
周りから感じる圧、重たい空気に、リヒトの身体は震えた。
授業は普通であった。
為にもなるし、なるほどとなる事も沢山あって、楽しかった。
だが、気持ちは休まらない。
唯一、休めるであろう休憩時間でこれだ。
リヒトは、休憩の五分間、ただ怯えて終わってしまった。
※
違う教室で、リヒトと同じことを思っていたエトワールは、優雅に机で寝ていた。
周りの人達は、何故寝ているのかわからないエトワールを横目で見る。
声をかけたいが、それは学校のルールで禁止されている為、聞くに聞けない。
そんな周りからの視線を感じているにもかかわらず、エトワールは眠り続けた。
五分はすぐに経過する。
次の教師が教室に入ると、どよめいていた生徒が静かになり、前を見た。
寝ていたエトワールはすぐに反応が出来ず、寝続ける。
それに気づいた教師が、眉を歪めエトワールを呼んだ。
「エトワールさん。もう、授業が始まりますよ」
教師の声でやっと目が覚めたエトワールは、「ふわぁ」と、抜けた返事をし、欠伸を零しながら伸びをした。
「まったく、だらしないですよ。時間はしっかりと守ってください」
「授業は一時間半もあるのに、休憩が五分はさすがに短くありませんか?」
エトワールが言い返してしまった。
他の生徒はエトワールの言葉に驚く。視線がエトワールに刺さる中、教師は冷静に答えた。
「これが、この学校のルールです。もし、嫌なのであれば退学にしてもかまいませんよ」
「わぁお、教師が生徒に言う言葉ではありませんねぇ~」
「何か、言いましたか?」
「なんでもありませーん」
エトワールは、やっとノートを取りだし、授業を受ける体勢を作った。
教師は、最初こそ不機嫌であったが、すぐに気持ちを切り替え授業へと入る。
生徒も、すぐに前を向き直す。
視線が外れたことで、エトワールは深い溜息を吐いた。
「つまらないわね、本当に」
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